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三章『ゾンビな日常回』3-2


「二ノ宮さん……って誰?」


 唯一、話に付いていけていない白華はっかが問うた。ま、そりゃそうか。


「駄犬丸。お前が説明しろ。全部な」

「はいはい。分かりましたよ」


 ということで、俺は今朝(というか、もう昨日のことだが)の一部始終を白華に説明した。言っていいものかと悩みもしたが、音黒せんせーが止めなかったので、そのまますべてを説明したのだった。

 その説明が終わる頃には音黒せんせーの丼も空になっており、追加でビールも注文しやがった。


「――というのが現状だ」

「ふーん。一斗が死んだのって、昨日の話だったんだ。もっとゾンビマスターなのかと思ってた」


 俺は蘇生効果を持った下級モンスターではない。


「じゃあ今も、その加子って子は、話を聞いてるの?」

【うん。聞いてますよー!】

「だそうだ」

「いや、私は聞こえないし……」


 苦笑いを浮かべる白華。そりゃそうか。


「やっと、話の本筋に入れるな。まず、駄犬のペンダントの件だが、そいつにはタイムリミットがある」

【え?】

「タイムリミット、ですか?」


 俺が言うと、音黒せんせーは真剣そうな表情で言葉を続ける。酔って顔は赤かったが。


「今はペンダントが不足していて、二人分の魂を無理矢理一つに突っ込んでる状況だ。しかし、魂がペンダントに馴染み、癒着したら離れなくなっちまう。つまり、お前らは早急に差額九〇〇〇万を稼ぐ必要があるわけだ。まあ、私の分のペンダント費用は後回しでいいから、今は二ノ宮の分を急ぐんだな」

「ま、待ってくださいよ! 今日だって一〇〇〇万円しか稼げてないんですよ? このペースで、すぐに九〇〇〇万とか無理ですって!」

「んなこと分かってんだよ。だから、今日の一〇〇〇万円は、次の種銭。つまり、高レートデスゲームの参加費用に充てるんだよ。これなら、試行回数はたったの二回で済む」


 音黒せんせーが酔った顔で不敵に笑う。

 マジか。簡単に言ってくれるな。高レートってことは、それだけ厳しい戦いになるってことだろ……

 不意に。

 バンッとテーブルを叩く音が隣から響いてきた。


「そ、それって! 私も参加、出来ますか……?」


 と、切羽詰まったような険しい表情の白華が問うた。事情を聞き出す気など無いが、白華にも色々とあるんだろう。


「当然だ。『迷宮』と関りのある私の伝手があれば、三國も参加できる。そもそも、これを聞かせる為に連れてきたわけだしな」

「じゃ、じゃあ……」

「ただし、条件だ。また駄犬丸と協力しろ。それが飲めるのなら、三國に高レートデスゲームの紹介をしてやる」

「分かりました! また一斗と協力します!」


 カウンターに身を乗り出し、即答するのだった。


「本当に良いんだな? 協力と称した犬丸のエロい命令にも逆らえないんだぞ?」

「お、おい……」

「はい! 喜んでやります!」

「ええッ!?」

「良かったな、駄犬。私のお陰で性奴隷が手に入ったぞ。感謝しろ」


 いやぁー、マジか。いや、冗談なんだろうけど。

 それに、無理矢理というのは俺の主義に反する。可愛そうなのはあれって、某猫も言ってた。俺も同じだ。


【うへへへへへへ】


 こいつは違うみたいだが。純粋なやつだな。(性欲に)


「とにかく、今後の方針は決まったな。手に入れた一〇〇〇万円を種銭にして、高レートデスゲームに参加し、駄犬と三國が二人で協力して賞金を攫う。と、そういうことだ」

「分かりました。頑張ろうね、一斗」


 白華がグーにした拳を突き出す。


「おう、そうだな」


 俺もその拳にグーをぶつけて返した。ギャルとグータッチしちゃったぜ。嬉しい。


【あ、そういえば、うちに連絡入れないと、両親が心配するかもです。どうしよう】


 思い出したように言う加子。

 そうか。俺は一人暮らしだったから、考えもしなかったな。

 音黒せんせーに相談するか。


「あの、音黒せんせー。加子が家に連絡を入れないと、心配されるって言ってるんですけど」

「ああ、その件か。今日のところは大丈夫だ。私物を漁って、私が二ノ宮家に連絡しておいた。某SNSから、今日は友達の家に泊まると説明してある」

「そうっすか。でも、スマホのロックは……」

「ゾンビを作り出すよりは簡単だったな」

「そうっすか……」


 あまり深く聞かないでおこう。この人、色々と黒いことをやってやがるみたいだ。

 まあ、マッドサイエンティストだしな……


【でも、私たちって暫くこのままなんですよね? 明日も帰らないと、さすがにマズいんじゃ……】


 ま、それもそうだな。


「音黒せんせー、明日以降はどうするんですか? ずっと不在にするのもマズいと思いますけど……」

「その辺は考えてある。三國にも協力してもらうがな」

「私も、ですか……?」

「ああ。実は、そのペンダントには、まだ秘密があってな――」


 くくく、と音黒せんせーは悪そうな笑みを携えて言ったのだった。


   ◇


 翌日の土曜日。という表現は正しくないか。

 あのラーメン屋へ行った数時間後の朝。

 俺と音黒せんせーは大学の地下研究室に戻って来ていた。

 ちなみに、三國は疲れているだろうから、先に家へと帰らせた。また後で会う予定だ。

 疲れ知らずのゾンビは、こうして音黒せんせーのお供である。


【うわあああ!? なんか居ますよ!?】


 と、加子が声を上げる。目の前には二メートルを越える人型の化け物。

 怪物太郎だった。音黒せんせーのペットの。


【ペット? これが?】

 疑う気持ちは分るが、本当のことだ。残念ながら。


「おい駄犬、こっちへ来い」

「はいはい」


 言われるがまま、俺は音黒せんせーの呼ぶ方へ。ったく、ゾンビ使いが荒いな。


「さて、これが二ノ宮加子のゾンビなわけだが……」


 と言って、その顔に掛かった白い布を持ち上げる音黒せんせー。

 ベッドに横たわっているのは、患者衣を身に纏った女の子……のゾンビ。

 見た目は普通の可愛らしい女の子だ。

 赤毛のセミロングに優しそうな顔つき。身長は同年代女子の平均くらいだろうか。しかし、胸のサイズは平均よりも大きめのDカップ。まあ、白華ほどではないが大きい部類だ。


【私を見る目がいやらしいです。乙女が汚れるので見ないでください】


 うるせえな。乙女だろうと既にゾンビだろうが。

 しかし、こうしてみると華奢な身体だな。女の子らしい身体つきって感じだ。


「よし。あとは、ラーメン屋で説明した通りだ。駄犬はそっちのベッドに横になれ」

「あ、はい」


 俺は言われるがまま、ゾンビとして初めて目が覚めたベッドで横になる。

 そして、そのまま目を瞑る。


「あとは、こっちでやってやる。駄犬は何も考えるな。無心になってろ」


 何も考えない、か。そう言われると難しいな。

 無心、無心……

 無、無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心無心。


【一斗くん、うるさいです】


 おかしいな。無心になったつもりなのだが。まあいいか。


「さてと」


 耳元で音黒せんせーの声が聞こえた。

 俺の記憶は、一旦そこで途絶えたのだった。


   ◇



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