ダンジョン資源に潜む罠
ヴァリタスから告げられたダンジョンの真実に三人は衝撃を受ける。
「つまり、ダンジョンは元々君達みたいなのが住んでたのが、取り立て屋みたいな『対価と代償』の権能に取り立てられる感じに奪われた世界の一部なんだね」
「・・・・・・燐さん、他人事みたいに言ってますが他人事じゃなさそうですよ」
ヴァリタスの説明を受けて冷静な燐とその問題が地球に迫っている事を理解した須藤は『魔鉱洞窟』だけではなく世界のダンジョンにも似たような事が起きてることを知ってるためただ事ではない。
「・・・・・・やり方がエグ過ぎるって」
奏は途中まで話しを理解できていなかったが、燐の説明でなんとかできた。
「いや、ダンジョンコアの魔力は膨大なだけで限界が存在する事はダンジョン研究所が出していた見解だ。ただ、限界を超過しても絞り出せるから無限だと思ってたがその超過分が『対価と代償』の権能の力によって補填されてたという絡繰だ」
燐は『バルムンク』の抱える問題を知ってるので、頭を抱えるしかない。
「つまり、あの『魔鉱洞窟』の状況はいわゆる代償という奴だね。おそらく、その代償ですら支払えなくなった時に現れるのが『対価と代償』の代行者という存在なのだろう」
燐はその『対価と代償』の代行者が現れる条件を考え出す。
「その代行者をなんとか出来ないんですか?」
「それは我の予想になるが、他の代行者のように力を枯渇させて倒せるものだとしても、その力が『対価と代償』に関係してるなら、その力は超過した分に等しい、その莫大な力で世界諸共滅ぼせるという訳だ。そもそも、勝負にすらならんな」
ヴァリタスはそもそも、戦ったところで世界を滅ぼされて終わりだと考えている。
「我達を含む六種族の共通の伝承では、アレを止めるには『無限と永遠』もしくはその代行者じゃないと無理だな。アレは超過分の魔力を補填できれば存在出来ないんだ。他の代行者と違い、そういうルールに縛られてる存在だからな。だから、『無限と永遠』の正に無限に等しい魔力があれば、その超過した魔力は補填出来る。それを求め、我々の同胞達は断片世界を利用して、その『無限と永遠』が封印された場所を求め終わりなき旅に出た者もいた」
「『無限と永遠』だと・・・・・・」
当然、それに反応したのはその『無限と永遠』に囚われた承だった。
「・・・・・・知ってるのか」
「知ってはいる。俺と俺の妹はその『無限と永遠』が支配するダンジョンに囚われていたからな。何とか出られはしたが・・・・・・」
承はヴァリタスに自分達の身に起きたことを話す。
「・・・・・・伝承では、その地に向かった者は誰一人戻って来なかったと聞いているが?」
「ああ、たぶんあの永遠の空間で永遠に争い続けてるだろうな。あの滅びの時を何度も何度もループする世界の断片で・・・・・・」
承はようやくあの六種族が争っていたか、合点がいった。
「『無限と永遠』を求め争っていたんだな」
「・・・・・・我としてはどうやって、出て来れたかの方が疑問なんだが」
「『無限と永遠』を殴りつけたら奴の姿が消えて、ここに戻って来ていた」
承はヴァリタスに何があったか話した。
「・・・・・・アレを殴っただと?」
「手応えはあったが、俺もアレを倒せるとは思っていない。どういう気まぐれか知らんが俺達はあの空間から出されたわけだ」
承にとっても『無限と永遠』を倒せると思っていない。
「・・・・・・それは運がいいと言えるか分からんが良かったな」
ヴァリタスにとってそれは運が良いの一言で語れることではなかった。
「これは同じ轍を踏まないようにするためには重要な情報です。帰ってから報告しなければ・・・・・・」
「報告したところで改善は、難しいんじゃないかな」
「え?どうしてですか?」
「資源が多いダンジョンは国の大きな利権が関わってるからね。そんな簡単なことじゃないのさ」
それは、『魔鉱洞窟』という厄介なダンジョンを抱えてる『バルムンク』のサブマスターだからこそ分かることだった。
「日本って資源が多いダンジョンって他国と比べると少ないんだよね。山形の『魔鉱洞窟』と北海道にある『魔晶氷窟』、奈良にある『魔晶樹の森』だけど、この二つのダンジョンってB級指定なのと同時にあの二つで取れる魔結晶の採掘は容易じゃないからね」
燐は仕事でその二つのダンジョンには潜った事がある為、その辺の事情には詳しかった。
「どういう事?」
奏は当然、その辺の事情には疎い。
「魔結晶は純粋な魔力の塊なんだけど、片方は氷と一体化してるのともう片方は樹木と一体化してしまってるから、純粋な魔結晶の採掘が欲しいとなると困難を極めるんだよね。だから、国もそこまで執着はしてないんだ」
「そもそも、『魔晶樹の森』は『ゴールドタイガー』が勝手に縄張りにしてるダンジョンなので国のお偉方は頭を抱えてるんですけどね」
関西は『ゴールドタイガー』の影響力が強いため、レアを多くドロップするダンジョンや希少資源が出るダンジョンを『ゴールドタイガー』が勝手に縄張りにしており、管理局と揉める事など日常茶飯事であった。
「だから、日本だけダンジョン資源の過剰採取をやめたところで他の国がやめると思うかい?それに、ダンジョン資源が豊富なダンジョンが多くダンジョン大国に台頭して来ているお隣の国がそれに納得するとでも言うのかい?」
日本の隣りの国である韓国は、世界で四番目に資源が豊富なダンジョンがある国であり、台頭して来てるのである。
中国とロシアも豊富なダンジョン資源がある国だが、この二カ国は国境にある起源ダンジョンの所有国を巡り常に争いあっているため、それどころではなかったりする。
そして皮肉なことにそこは『安寧と平穏』の権能が支配する起源ダンジョンなのだ。
「利権の問題もあるし、日本だけではどうしようもない問題がある。このことを知っててもどうしようもないんだよね」
燐はダンジョン資源の過剰採取をやめようと呼びかけても、誰も賛同しないのは目に見えているのだ。
今やダンジョン資源は石油や石炭に代わる燃料になっており、原子力のようなリスクも確認されてないこともあり、今更やめたとして代案が存在しないのである。
「でも、ダンジョンで発生している問題の方をつつけばもしかすると過剰採取を問題視して反対する国は出て来るかもね。はっきり言って代行者の方は信じてもらえるかすら怪しいんだ」
燐はそれが一番の対応だと思っている。
「・・・・・・ああ、そうか、それでそいつらはどうしたんだ?」
承はスマホに来た電話に対応していた。
「・・・・・・そうか、尋問中か・・・・・・あまり、情報を吐かないとは思うが・・・・・・」
承は管理局の管理官に『濃霧水源』のダンジョンコアについての返答を聞いていた。
「師匠、どうしたの?」
「ああ、悪い。『濃霧水源』に魔結晶を運んでいた怪しい潜行者達を捕えたらしい」
「え?何でそんなことしてんの?」
奏は事情が飲み込めない奏は意味が分からなかった。
「ここのダンジョンで出ていたオーバーフロウの兆候はヴァリタスの話しだと、『濃霧水源』のダンジョンが影響していたらしい。その確認を管理局に頼んだらダンジョン内の少し進んだ所に魔結晶が積み上げられていたらしく、その魔結晶の影にどこのギルドにも所属しない野良の潜行者が三名が隠れていたから、事情を聞くために捕えられ、魔結晶もこれから回収される。それと同時に『浅草雷門組』がダンジョン内の魔力を安定させるために出て来るらしい」
「ちょっと、何言ってるか分からないんだけど・・・・・・」
承は奏に説明するが奏はあまり理解していない。
「つまり、意図的にオーバーフロウを発生させようとしてた奴らがいたという話だ」
「・・・・・・それってヤバいじゃん!」
奏は少し間を置いたが、少しだけ理解した。
「でも、止めたんだろう?『浅草雷門組』が出張って来るのは気に入らないけど、東京はある意味奴等の管轄だから仕方ないか」
燐からしたら最強ギルドの一角である『浅草雷門組』が出て来るのは、最強ギルドを目指す『バルムンク』のサブマスターとしては手柄を与えるみたいで気に食わなかった。
「意図的にオーバーフロウって起こせるものなのですか?」
「ダンジョン内の魔力量を増やしてダンジョンコアが活性化を起こせば、オーバーフロウは発生させる事は可能だ。発生のタイミングまでは調整出来ないことを除けばな」
「でも、なんでそんな事をしたの?」
奏は意味が分からなかった。
「それを調べるために今、管理局で取り調べが行われているんだ」
承も何故そんなリスクを負ってまでそんな事をするのか分からなかった。




