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クソガキダンジョン奔走記  作者: 酒粕小僧
チームD-アニマルズ結成

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異次元からやって来る者

 デュラハンが持つ剣に纏っていた青い炎は、奏の除去魔法【リムーバー】によって除去され、今はただの剣となったデュラハンがそこにいる。


「奏ちゃん、僕は君への評価を改めなければならない、今の君は正にB級に相応しい実力を持っているよ」


「当たり前じゃない。師匠に恥はかかせられないもの!」


「二人共、油断しないでください」


 青い炎がなくなり、調子に乗る二人を須藤が注意する。


「それは分かってるよ。でも、炎が消えたおかげでだいぶ楽になったのは事実だ」


 燐の一方的な攻撃にデュラハンは防戦一方になっている。


「なら、僕も見せようか。とっておきという奴を」


 燐は【分身】を失って代わり得たスキル【残像撃】を使う。


「【螺旋穿突・砕】」


 一本の剣に螺旋に回転する闘気を纏わせデュラハン目掛け突き刺す。


 デュラハンはその突きを剣の腹で受け止めるが、その突きは複数の突きが、同時に放たれた衝撃が剣に伝わり剣がそのまま折れるとその先のデュラハンの鎧を貫く。


「【斬鉄・無双連斬】」


 燐はデュラハンに二刀流の連続斬りを行うがその一撃が残像として残ってるかのように複数回斬られるがその回数は毎回ランダムである。


 その【残像撃】は凄まじい能力を持つが、燐の剣の刃が欠けるどころかひび割れていた。


「このスキル、僕の火力をかなり上げてくれるんだけど使うと武器がもたないんだよね。でも、もう終わりかな」


 そう、燐が告げるとデュラハンの上半身はバラバラになりその場に倒れる。


「何、今の?」


「【分身】が変化したのは聞いてましたが、まさか今のが」


 奏は燐が何をしたのか分からず、須藤は話を燐から聞かされていたが詳細は聞かされていなかったので、初めて見たのである。


「うーん、【残像撃】ってスキルでね。説明が難しいんだけど一撃が複数回残るんだよね。回数が完全にランダムなのと武器の消耗がヤバくてね。この通り、一般に売られてる程度の剣じゃ、一回の戦いでほぼ使いものにならなくなるんだ。普段使いよくないから使わないんだけど、ここが使い所だと思ったからさ」


 燐は【残像撃】を使い、ボロボロになった剣を二人に見せる。


「でも、これで心置きなく獣人に挑めるね」


「それじゃあ、ダンジョンから出ましょうか」


「やっと、奏達リベンジできるんだね」


 三人はデュラハンがドロップした素材を拾いダンジョンから脱出すると何故か宿泊施設前に到着している。


「あれ?ここダンジョンの外じゃないじゃん」


「こんな事出来るのは僕の知る限り一人しかいないんだけどね」


「師匠!!」


 燐達が勝つ事を承は信じ、ダンジョンの出口と宿泊施設の前の空間を繋げていた。


「やっと、戻ったか」


 三人が戻って来た事に気付いた承はやって来る。


「想像以上にまずい状況だ。戻って来て早々で悪いが、すぐ話し合いをしたい」


「君の事だ中の様子も見て来たんだろう」


 燐は承がダンジョン内の様子を見て来たことは分かっていた。


「その通りだが、とりあえず部屋は借りた。そこで今の状況と作戦会議を開始したい」


 承は三人をに応接室のような場所に案内する。


 それぞれが席に着くと会議が開始される。


「それで、どういう状況なんだい?」


 燐は単刀直入に承に質問する。


「まず先に行っておく、あのダンジョンは意図的に獣人がこの世界に仕掛けたダンジョンである可能性が大きい」


 承の発言は誰も予想してなかったもので当然驚く。


「それがどうして分かったんだい?」


「俺達が知らないだけかもしれないが、ダンジョンコアは人の手ではコントロール出来ないんだ。俺達に出来るのは精々、オーバーフロウが起きないように怪物を倒し資源を確保してダンジョンコアの活性化を防ぐくらいだ」


 承は誰もが知ってる基本的な事を言う。


「だが、アソコのダンジョンは怪物が存在せず獣人しかいない。まぁ、その辺は後々分かるがな。そして、ダンジョン内を見て見つけて来たこれが、その証拠になっている」


 承は先遣隊が使っていたと思われる壊れた装置を取り出す。


「これ、ダンジョン内のダンジョンコアが保有する魔力を調べる装置じゃないか」


 燐は両親が先遣隊の仕事もやっていたのでその装置は一目見て分かった。


「その通りだ。壊されてはいたが、奇跡的に内部のデータは生きていた」


 承は簡単な解析を済ませており、今は詳細な解析を進めている。


「これは出来たばかりのダンジョンだとしたらおかしな数値らしい」


 承は研究課の局員に教えてもらったが、各地点で観測される魔力の数値が低過ぎるという話しだった。


「出来たばかりのダンジョンはオブジェクトや資源、怪物の生成、配置に多くの魔力を消費するから少なくなる事はおかしな事ではない。だが、このダンジョンは減ってる魔力の量に対して資源が見当たらないと先遣隊が消息を立つ前に報告を受けてたらしい」


 承にとっても前代未聞の出来事だったが、その話しを聞いて一つ疑問だった事に納得できた。


 それはあの獣人がどこから来たという疑問だったのである。


「アイツらは、自分達の世界にあるダンジョンを利用し他の次元を移動している。だから、その次元を跨ぐ時に大量の魔力を消費したというのが俺の考えだ。」


 承はあの囚われた世界で何度も世界の終わりを見てきた。


 その度に最初に戻される。


 そして、承はアレが何か分かった気がした。


 六種族は一つの世界を取り合っていたのだ。


 それが意味する事は、六種族とはダンジョンを利用し次元間を移動する侵略者という事なのである。


 承と真那華が見た世界は、既に六種族に滅ぼされた後の世界だったのである。


 その世界と『無限と永遠』の権能がどう関わってるか分からないが、承と真那華にとってあそこであった事は現実であった。


 そして、一つ分かる事が承にはあった。


 あの場所は、当時の六種族を封印し世界を留める正に無限と永遠の牢獄だという事である。


 そして、今まさにその脅威が地球に迫っているのであった。


「話しが飛躍し過ぎていまいち信憑性に欠けるがそう思う根拠があるんだね」


「根拠という根拠はないな。強いていうなら、俺と真那華が経験したダンジョンが答えとしか言いようがない。それにあのダンジョンのダンジョンコアを調べれば分かる事だ」


 承は根拠はあるが根拠を示す証拠がないためこう答えるしか無かった。


「それに俺達のやる事は変わらない、ダンジョンを攻略してオーバーフロウを阻止する」


 承は根本的にやる事は変わらない事を説明する。


「それもそうだ。それで君の事だから時間稼ぎの細工はして来たんだろう?」


「流石に分かってるな。破壊可能のオブジェクトを片っ端から壊して来た。それだけでも、ダンジョンコアの魔力は消費されるから活性化する時間は稼げるが内部の獣人達はさぞ警戒してるだろうな」


 承はダンジョン内部を見て少ない資源を回収するより片っ端から破壊可能オブジェクトを破壊した方が早いと思ったが、それに獣人が数体巻き込まれているため、警戒されてる可能性があった。


「え?その警戒されてる中を奏達が攻略するの?」


「そこまで、やるのは想定外だったよ」


 奏と燐はまさかそんな状況の中で攻略する事になるとは思わなかった。


「それとこれを用意した」


 承は黄色い膨脹した缶詰を取り出す。


「シュールストレミング?」


「奏知ってるよ。昔の配信者がネタで使ってた世界一臭い缶詰だよね」


「承さん、それで何をするつもりですか?」


 承の出したシュールストレミングで何をするつもりなのか三人は分からなかった。


「それがなんの役に立つんだい?ただ臭いだけだろう?」


「そう、だがあいつらは人間よりも数十倍も鋭い嗅覚を持つ」


「まさか、それで獣人の嗅覚を撹乱するつもりですか、しかしダンジョン外のものは・・・・・・」


 ダンジョン内の怪物はダンジョン外の武器や道具は通用しないのは一般常識である。


「実はそこにはいくつか例外が存在する。その一つが臭いだ。臭いは魔力の影響は受けないから実は有効だったりする」


 結局のところダンジョン内と外の違いは魔力の有無でそれが働くか働かないかでダンジョン内の怪物でもダンジョン外のものが有効な例外が存在する。


 その一つが臭いであるのだ。


 シュールストレミングだけでは獣人を倒せないのは承も百も承知である。


 ただ、獣人自慢の嗅覚を封じると同時に撹乱できると承は考えていた。


 これは当然、真那華のアイデアであり、獣人は臭いを覚え追跡できるが周囲からこれの臭いしかしなければ、臭いによる追尾を撹乱する事ができるという事である。


「あとこれだ」


 そこに置かれたのは、電子ホイッスルであった。


「これは最大125dBが出る電子ホイッスルだ」


「これをどうする気だい?」


「アイツらの聴覚は人間の数倍はある。125dBは人間が聞いても耳が痛くなるほどのうるささだ。これをアイツらの至近距離で放ったらどうなると思う?」


 承は三人に尋ねる。


「まさか、それも例外なんですか?」


「そうだ、音も臭いと同じで例外だ」


「そんなの人間の数倍の聴覚を持ってる奴等がくらったら・・・・・・」


「下手したら鼓膜破れるねー」


 承は獣人にとってのアドバンテージである嗅覚と聴覚を奪う事で戦いを有利に進めようていた。


「やり過ぎだと思うだろう?」


「確かにそうだね」


 燐も流石にやり過ぎだと思っている。


「【感知】を使い熟せるようになって、更にこれをやって、やっと戦えるわけだ」


 承からしてみれば、ここまでやらないと対等だとは思っておらず、これに【感知】を使い熟せればやっと戦えるのである。


 承は獣人を特訓相手にはしてたが、油断していい相手ではなく万全の準備が必要な相手だと思っている。


「あいつらは【隠密】と姿を消すのが厄介だが、普通に戦っても強いんだ。呼ばれたらかなり厄介な相手だからな。なるべく合流させない事が獣人攻略の鍵だ。このホイッスルは集まって来た時の逃走用だからな。一気に相手の耳を潰せる」


 承は獣人との戦い方を熟知してる為、どうやれば安定して戦えるか知っている。


「耳を潰すと同時に奏はあいつらに仲間達の姿が外敵に見える幻術を短い時間でもいいからかけてくれ。それで一網打尽に出来ればいいと思ってるが、そうそう上手くいかない場合はその都度、燐さんに相談するから燐さんの指示に従ってくれ」


 承は獣人の攻略法を知ってるので作戦を立てるが最終的な決定はリーダーである燐が下すべきだと思っている。


「まったく、ずるいね君は・・・・・・分かったよ」


 燐はリーダーとして当然の務めを果たす為同意する。


「それじゃあ、作戦は承の作戦で行くよ。なんらかのイレギュラーが出た場合は承と相談した後、指示を出すからみんな宜しく。以上・・・それじゃあ出発しようか!」


「リベンジ果たすよー」


「奏さん、無茶しないで下さいよ」


 そして、四人は再び獣人達が徘徊するダンジョンに挑もうとしていた。

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