魔法剣士は流行らない
宗像真那華、彼女は見た目はやや薄い金髪を後ろで束ねポニーテールをした童顔、そして身長は147cmの低身長の小柄な為、昔はよくいじられていた。
これでも16歳であるがクソガキムーブが余計に幼く見えるが、腹立つ事に彼女の実力は本物で疑う事は愚かの極みなのはこの兄は知っている。
真那華は【武術】、【剣術】、【四属性魔術】【光魔術】、【錬金術】、【回復魔術】、【闘気】、【感知】、【高速演算】、【技能研究】のスキルを持ち今では【剣術】、【四属性魔術】、【光魔術】の統合スキル【光魔剣術】に変化し【技能研究】で創作スキル【従魔剣】、【戦乙女魔装】を創作した。
魔剣士という万能型で囚われたダンジョンで闘っており、その末に統合スキルを手にし、そのスキルを解析し、それを元に【従魔剣】と【闘気】と【錬金術】を対価に【戦乙女魔装】を生み出した。
「へぇ、このカメラがウチらを撮っているんだね。ふっしぎー」
「このカメラに映した映像が管理局にいる北条さんの所のモニターに映るらしい」
兄は自身に追従して浮いているカメラの説明を思い出しながら話す。
「今はこのカメラで動画配信するのが大流行してるらしい」
兄は自身で集めた情報を真那華に話す。
「へぇ、楽しそうじゃん。ねぇねぇ、兄ぃもしウチがやりたいと言ったら?」
「ハイハイ、まずは目の前の目標を達成してから今後の事を話そうか」
緊張感のない二人の会話であるが、目の前に苔の生えた猪の怪物『モスボア』の群れが突っ込んで来る。
当然、二人はその群れが来ている事に気付いている。
「ジビエ料理かな?」
その瞬間、真那華の周りに四本の朱色の剣が舞うと突っ込んでくる『モスボア』を焼くと同時に斬り刻む。
「兄ぃ、これなら食事には一生困らなさそうだよ。ハハハハハどう調理しようかなー」
真那華は『モスボア』を容赦なく遠隔で斬り刻んでどんな料理にするかで悩んでいる。
当然、その様子は管理局の北条の所にも映っている。
「・・・・・・俺は悪い夢でも見ているのか?アレってたくさんの犠牲者を出した『モスボア』の群れだよな」
『モスボア』の群れは見かけたら過ぎ去るまで待機するか回避する事が推奨されている。
その理由は『モスボア』はただでさえ耐久力の高い怪物で『深淵の樹海』の権能の影響で高い耐久力が更に高くなり、群れの相手は強いタンクをどれだけ連れてくれば止められるか分からないレベルである。
「いえ、どうやら夢ではないみたいです。そもそも彼女の扱うスキルは見た事ないスキルです。おそらく固有スキルかと」
固有スキルとはその個人が持つ特別なスキルで所有者自体少ないスキルを指す。
「それは言われなくても分かる。まったく固有スキルの持ち主はどうしてどいつもこいつも」
「それ私にも言ってます?」
北条が曲者だらけなんだと言おうとした時、隣の須藤の鋭い睨みに言い淀む。
「でも、群れの恐ろしさはこれではないの分かってますよね」
「分かってる。殿にいる巨大な『モスボア』俺たちは『ビッグモス』と呼んでいるがアレの突進は・・・・・・」
その時だった。
「へぇ、弱々のジビエ料理の中にも面白そうなのがいるじゃん⭐︎ちょっとは歯応えありそうだけど何人前のジビエ料理が作れるかなぁ。兄ぃ、剣お願い」
「ハイハイ」
兄は虚空から真那華の身長を遥かに越える大剣を取り出す。
「ジビエの丸焼きいっちょ上がりー【劫火斬】」
その一振りは直線上を焦土に変え『ビッグモス』を一刀両断した。
「やっぱり、弱々だったかー、直線しか走れないもんね。弱々雑魚雑魚ー」
「怪物を煽るな」
倒した怪物の死体を蹴るように煽る真那華を兄が止める。
「でもでも、兄ぃウチらがいるのに突っ込んで来るコイツらが悪いよね。ジビエの分際で突っ込んできたら料理されても仕方ないと思わない?」
「まぁ、そうだな」
兄は妹には甘かった。
「一刀両断だと!?」
「あの威力は今のトップクラスでも出せるのはごく少数でしょうね」
動揺している北条を余所に須藤は冷静に分析しているが、真那華はこれで手加減だという事は知らない。
その斬撃はダンジョンを覆う樹々すら焼き払い奥へ進む道を生み出した。
「ジビエ♪ジビエ♪」
真那華が喜んでいる傍ら、兄は亜空間に倒した『モスボア』と『ビッグモス』がしまわれていく。
その頃、管理局では北条が動揺していた。
「これピクニックだったっけ?」
「北条さん落ち着いて下さい」
あまり緊張感のない映像に北条は動揺し混乱しているのを須藤は冷静に分析している。
確かに妹の真那華が異常なのは確かだが、兄の亜空間も異常なのだ。
空間を操る能力の所有者は少ないが存在している。
しかし、何か違和感のようなものを感じるのだ。
「道が開けたよ。兄ぃ、ウチらがいた所より怪物は弱々だねぇ」
「確かに弱いが油断は禁物だ」
超余裕で調子に乗ってる妹と反対に兄は慎重かつ冷静である。
「兄ぃが言っても説得力がゼロなの分かってる?兄ぃはただただ理不尽なだけなの分かってる?強いとか弱いの概念じゃ表せないの!ただただ理不尽それだけなんだから!」
「でも、俺の試験でもあるんだが」
「兄ぃはボスまで我慢、今はウチが目立つんだから♪」
「それは構わん。少し疑問なんだが、ここの怪物は耐久力が他のダンジョンより強いという話だったよな」
兄は北条の話では、耐久力が更に高くなっているという話ではあるが真那華が余裕で倒したのでその実感がない。
「それは弱点の属性を使ってるのもあるかもね。ウチの【従魔剣】は特別な属性を除いて闇属性以外なら自由自在だよ。ウチって最強だけじゃなく天才だから」
その時、カマキリを巨大化したような怪物『キラーマンティス』が上から奇襲をかけて来た。
「まったく、舐められたもんだよね。兄ぃもそう思うでしょ」
奇襲をかけた『キラーマンティス』の鎌を従魔剣一本で防ぎ他三本で串刺しにし斬り裂き瞬殺してしまう。
「兄ぃ程ではないにしろ。ウチもそれなりに【感知】は極めてるからね。その程度の【隠密】で来るなんて本当弱過ぎて草」
「煽るな。煽るな」
兄は冷静に妹の煽りを止める。
「何でしょう。無性に腹が立って来ました。このモニターを破壊していいですか?」
「やめろー、安くないんだぞ!」
真那華の態度に須藤は腹が立ってきており椅子を持ち上げるのを北条は止めている。
「分かってはいます。あのスキルの発動速度と【感知】の精度、相当な修羅場を潜り抜けていると見て分かる・・・・・・分かるんですが、彼女はかなり目に余る!!」
須藤からすると真那華の態度が気に入らなかった。
「彼女は疑いようがない本物の実力者だ。だが、兄は怪物の素材を亜空間に送ってる所しか見てないが」
北条は真那華の試験の合格は確定したが、未だに実力を見せていない兄には合格を出せずにいた。
「兄ぃ、本当にここって多くの犠牲者を出した危険なダンジョンなの?まだ、危険な怪物は出て来ないの?」
真那華にすると拍子抜けもいい所のダンジョンでいつ強敵が出て来るか楽しみでもあった。
「俺に言われてもなぁ。アレなんかどうだ?」
兄が指差すのは巨大な巻き角と硬そうな甲殻に身を包んだバッファローのような怪物『シェルダーブル』だった。
その怪物は基本的に眠っており、縄張りに入らなければ比較的安全な数少ない怪物である。
その代わり、その戦闘力は一層のボスと同等かそれ以上と言われている。
「兄ぃ、直剣出して」
「分かった」
兄は妹の言う通り直剣を取り出して渡す。
この剣の数々は囚われたダンジョンの怪物が使っていた武器であり、戦利品であるのだ。
「少し遊んだっていいよね。だってこんなに弱いんだもの」
真那華は【従魔剣】を使わない、その代わり使うのは【戦乙女魔装】の一部である白銀のガントレットである。
真那華は『シェルダーブル』の縄張りに入ると『シェルダーブル』はゆっくりと立ち上がり雄叫びを上げ威嚇する。
「ハハッ、可愛い。愛玩動物かな?」
真那華は当然、威嚇など意に介さず向かっていく。
「流石にまずい、アレは触れなくても攻略は出来る。アレは戦ってはいけない本当に死ぬぞ」
北条はその怪物が一層にそぐわない力を持っている事を知っている。
甲殻による防御力と耐久性とタフネス、そしてこの怪物の装甲は魔法に対して高い耐性を持っていると同時に強靭な角による高い攻撃力も持っている。
先に動いたのは『シェルダーブル』、その突進は『モスボア』以上に鋭く速い。
「なんだ、速いだけかー」
真那華にとってはそれだけの退屈な攻撃だった。
「それと、力が強いだけじゃん【廻転方力】」
真那華は『シェルダーブル』の巻き角に剣の先を引っ掛け、『シェルダーブル』の力を受け流し投げ飛ばす。
「ブモッ!」
怪物は地面に叩きつけられるがそのタフネスで起き上がる。
「元気一杯でウチ嬉しいよ。今ので倒れたら拍子抜けもいいところだから。せいぜい楽しませて欲しいなー⭐︎」
怪物側からしたらどちらが怪物か分かったもんじゃなかった。
「アレ間違いなく【剣術】も達人クラスですよ。でもあの浮いてる剣は魔法なんですよね。魔法剣士なんて型は成り立たない事は証明されてもう廃れたと思っていましたよ」
『潜行者』にはそれぞれのスキルにあった戦いの型がある。
代表的なのは、剣士タイプと魔法使いタイプ、重騎士タイプ、僧侶タイプである。
少数ではあるが確かに剣士タイプのスキルと魔術師タイプのスキルを同時に持つ者もいるが、それを同時に極めるとなると一つのスキルを極めるのと違い倍の時間がかかり、現実的ではない為どちらかに振り切る方が効率的であり現実的であると言われている。
その両方を極めるという事はどちらも中途半端になってしまい、特化してる型よりも劣ってしまうという事で魔法剣士という型は一気に廃れていった。
だが、この真那華という魔法剣士はそんな問題点を解決した上で使いこなしているのだ。
「これで何回目だっけ?いい加減飽きたから終わらせようかなー」
「ブモォッ!」
真那華が真上に投げ飛ばすと同時に『シェルダーブル』の角が根本から折れる。
「真下にはこの剣が待ってるよ。どうする?どうする?避けられないねー♪」
真那華は当然のように『シェルダーブル』を煽る。
『シェルダーブル』は自由落下から真那華の剣の串刺しになりしばらくもがいた後息絶えた。
「うん、やっぱりウチって強過ぎー。それともーここの怪物が弱々なだけなのかなぁ」
真那華は明らかにカメラに向かって煽っている。
「北条さん、許可を出撃の許可を!!アレは野放しにしてはいけない怪物です!!」
須藤は既に真那華の態度に対して堪忍袋の尾が切れていた。
「落ち着けぇ!気持ちは分かるが落ち着けぇ!!」
北条は必死に暴れる須藤を止めている。
北条は何となく気付いていた。
真那華はここに来るまでずっと怪物と同時にカメラに向かって煽っていたのだ。
それはまるで「こんな雑魚を倒せないなんて、貴女達弱くなーい。ざーこざーこ」と煽られている気持ちになるのだ。
しかし、最強は別として彼女が強い事には疑いようのない事実なのだ。




