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第033話 初依頼

 

 それからの日々も優里さんは訓練を続けた。

 一時(いっとき)も無駄にしないよう、道端を歩きながら石を収納したり、道端の石や木々や草木に対して記憶を遠隔発動したり、常にスキルを発動し続けてたし。

 今は恐ろしいほどレベルも上がってることだろう。

 怖くて聞けないんだが……もう充分なんじゃないか?

 そろそろ地球にも一旦戻ったほうがいいだろうし。


 朝食の後、優里さんに言った。


「優里さん、そろそろ三ヶ月になるね。ここらで一つ簡単な依頼でも受けてギルドカードの更新をしておこう。で、一旦地球へ戻らないかい?」

「あ、そうですね。上司に報告もしないといけませんし。それに私も個人的な用事が……」

「そうか。じゃ、ひとまず今日はギルドに行こう。」


 早速、二人で冒険者ギルドへ向かった。


 ーーーー


 ギルドに到着すると、壁の依頼票をさっそく確認してみる。

 優里さんの冒険者ランクはFだから、EとF用の依頼が受けられる。が、見てみると、そもそも簡単な依頼しか今は無いようだ。


「えーと、子守り……溝掃除……雨漏り修繕……あ、これにしましょう!」

「何だい? あ、薬草採取か。いいね。」


 優里は、壁から依頼票を取り、カウンターでギルドカードと一緒に受付係の紳士に渡した。


「薬草採取の依頼受託ですね? かしこまりました。薬草の種類はわかりますか?」

「一応教えていただけますか?」

「はい、では、この資料をお持ちください。初心者向けの薬草図鑑です。」


 受付係から薄い冊子を渡された。

 中をパラパラと見ると様々な薬草の絵、名前と特徴などが簡単に記されていた。


「ありがとうございます。」

「薬草採取に関しては、数量のノルマや依頼未達成のペナルティはありませんので簡単な部類の依頼ではあります。ただ、ここ数年は魔王の動きが不明で、魔物たちが無秩序に出現してますから、くれぐれも森の中では充分警戒しながら採取してください。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。じゃ、行ってきます!」

「いってらっしゃいませ。」


 ーーーー


 二人は街を出て森に向かっている。


「グレイザさん。魔王不在だと魔物が無秩序に出るんですか?」

「ああ、強力な魔物はそもそも魔王の支配下にあったからね。今は魔王不在で統率されていないのだろう。」

「なるほど。そういうことですか。じゃ、警戒しながら進まないとイケナイですね。」


 優里さんはニコニコ歩きながらそう言った。


「ところで、今、レベルはどのくらい?」

「えー……光が421、収納が425、記憶が412、遠隔が477です。」

「え? もうそんなに? 前回聞いてからまだ数日しか経ってないよね。」

「はい、ずっと遠隔で石ころ拾いながら記憶で鑑定してますから!」

「え? でも全部400越えって……このところの訓練でそんなに伸びるような魔法使ってたっけ?」

「実は……ほら……」


 優里さんは指で太陽を指さした。


「え? 何?…… あ……」


 空をよく見ると、太陽の周りを小さな光が周回していた。


「え? あれ、優里さん出してんの?」

「えへへ……ただの『ライト』ですよ〜」

「いや、ただのライトって……あれ、太陽の周り回ってるでしょ?」

「遠隔って結構遠くまで使えるんですね。やってみたら出来ちゃいました。」

「な……出来ちゃいましたって……いやいやいや……」

「あと、ほら……」


 優里さんは空の別の方角を指差した。

 そこには惑星ペンゴアの環を構成している月の欠片(かけら)が漂っている。

 よく見ると、一部の欠片(かけら)がチカチカと点滅しているように見える。


「わかります? あの石ころを収納して取出して鑑定してるんです。」

「……」


 私は絶句した。

 いやいやいや、あれは石ころって大きさじゃないだろう……

 それにペンゴアの太陽までいったいどれくらいの距離があると思ってるのか……

『遠隔』という距離ではないし、それにあの『ライト』を出したまま環の欠片に対して収納や記憶を同時に発動し続けるなんて……

 いや、もしかして……


「もしかして……それをやりつつ、いつもの魔法訓練をしていたとか?」

「えへへ……最近はそうですね。当たりでーす!」


 ……もう、何も言うことはないです。優里さん。


「そんなことしてたとは……優里さん、君って……」

「はやくレベル上げたかったですし。それに道端の石ころはさすがに飽きましたし。あ、ところで、グレイザさんの光魔法のレベルってどれくらいなんですか?」

「え? 急に何?」

「だってグレイザさんの力になりたいですから。そう口にしてしまいましたから。出来るだけレベル近づきたいんですよ〜」

「それは有り難いんだけど……」

「レベルはいくつです?」

「…………」

「もったいぶらないで教えてくださいよ〜」

「……(ボソッ)」

「え? 聞こえませんよ。はっきり教えてくださいってば!」

「……26万9878だよ。」

「…………」


 急に優里さんは黙り込んでしまった。


「あの〜……優里さん?」

「ズルいですよ……」

「いや、あのね。これはルート様が50年かけて到達したレベルで……」

「絶対追い付けないじゃないですか! そんなの。レベルって999が上限じゃないんですか? 26万って何ですか!?」

「いやぁ……そう言われても……」

「『もしかして私ってスゴイ?』って一瞬思っちゃったじゃないですか。 ああ恥ずかしい!」

「いや、この短期間でそれだけ伸びたのは本当に驚異的なんだよ。普通は無理だから。ルート様だってそんなに早くはレベル上げられなかったんだよ? 誇っていいと思うよ!」

「ん〜、それでも〜……やっぱりズルいですよ。もういいです……」


 優里さんは頬を膨らませて不服そうだった。


 ーーーー


「あ、この辺ですね。じゃ、早速探しますね。」


 優里さんは、薬草が生えているエリアにつくとすぐに辺り一面に対して鑑定を多重起動した。


「ありました! うわ〜たくさん! じゃ、収納します!」


 ザザッ!


 一瞬で見える範囲、ざっと5km半径の草が音を立てた。


「はい。終了ですね。」

「え? ああ……うん。じゃ、帰ろうか。」

「はい。」


 うん。もう驚かない。

 優里さんだし。

 よく考えたら、私も同じこと出来る訳だし。


 優里さんの初依頼は、一瞬で終わった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

明日からしばらく不定期投稿になります。

出来るだけ毎日投稿出来るように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。

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