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周泰  作者: 涼風隼人


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19/19

第19回 周泰、黄祖討伐戦に参戦する

 三年が経過した。

 

 幸い大きな戦や反乱も起こることなく、孫権は張昭を中心とした文官たちに内政の充実を図らせ、国力の増強につとめてきた。

 

 一方、軍の方も周瑜による厳しい調練が行われ、かつてないほど精強な水軍ができあがりつつあった。

 

 孫権は思った。

 「機は熟した。」

 

 孫策の後を継いだ時に、目標としていた、孫家の仇敵、江夏の黄祖の討伐である。孫権は周瑜に聞く。

 「公瑾よ、私は黄祖討伐の気は熟したと考えるがどうか。」


 「はい。水軍の調練も繰り返し行い、兵糧も軍資金もこの三年間で十分に蓄えることが出来ました。私も頃合いかと考えます。」

 

 孫権は、張昭にも聞いた。

 「子布よ、内政の責任者であるお前の目から見てどうだ?」


 「三年前から比べて、国庫は充実致しました。もう一年、と言いたいところですが、あとは孫権様と軍師殿にお任せ致します。」

 

 孫権が言う。

 「公瑾よ。早速、軍の編成に入ってくれ。」


 こうして、周瑜は水軍の編成を行った。

 

 ここには、周泰の親友である蒋欽の姿もあった。

 

 総兵力は八千程である。

 

 孫権が怪訝な顔をして聞く。

 「公瑾よ。私は、黄祖の兵力は三万程と聞いている。我が軍はその三分の一以下であるが、問題ないのか。」

 

 「全く問題ございません。我が軍は精鋭、黄祖は兵力͡こそ多いですが、その質は非常に低く、士気も全く奮いません。そこで、我が軍は少数精鋭で斬り込み、一気に勝負をつけようと考えております。」

 

 「わかった。私が君主になってから、初めての戦いといえる。公瑾、止めたとしても私も出陣するぞ。」

 

 「・・・。わかりました。その様な陣形に致します。」

 

 こうして、孫権を総大将として、孫権軍八千は、黄祖の待ち受ける「夏口」で激突することになった。

 

 黄祖は全軍で出動し、大型船なども多数有していた。

 

 黄祖は部下に言う。

 「なんだ、孫権の親征と聞いてこちらも最大限に準備したのに、敵はあれだけか?しかも、先鋒は小型船ばかりではないか。」

 

 側近の一人が答える。

 「寡兵なれど、孫権軍で実質指揮を採るのは、あの天才軍師として有名な周瑜です。油断は大敵でございます。」

 

 「そんなことはわかっておる!いちいち細かいことを言うではない!」

 

 側近は下をむいて黙ってしまった。

 

 決戦の火ぶたが切って落とされた。

 

 呉軍の先鋒は、水軍きっての名将と言われる「凌操」である。小型船団の速さを活かして、黄祖軍の大船団に猛烈な勢いで突撃をした。

 

 黄祖軍は慌てふためくだけで、反撃もしてこない。それどころか、既に総大将の黄祖自身が先ほどの勢いはどこに行ったのか、既に逃げ腰になっており、兵士たちもそれに釣られて退却の準備をしている。

 

 まさに狩場であった。凌操は縦横無尽に動き回り、敵兵を切り倒していく。蒋欽も凌操に続いて突撃しており、獅子奮迅の活躍を見せている。

 

 孫権は自軍の勇ましい戦いぶりに満足気であった。

 

 周瑜が言う。

 「黄祖の船が完全に退却を始めました。追撃致します。

 

 とても、八千対三万の戦いではなく、黄祖軍は無残な姿で退却していく。その時である。

 

 先鋒で勇躍していた凌操めがけて、一本の強弓が放たれた。凌操の肩口に突き刺さる。凌操の動きが鈍ると見るや否や、二本目が放たれた。その矢は、凌操の首を突き抜けた。凌操は絶命した。それを確認したかのように、一人の漢が大声で叫ぶ。

 

 「我が名は甘寧!黄祖軍一の武を誇る者だ!この名前と顔をよく覚えておくがよいぞ!」

 

 甘寧はそう毒づくと、一仕事を終えた海賊の様に、素早くその姿を隠した。

 

 「凌操死す」の一報は孫権にも周瑜にも衝撃であったが、蒋欽が凌操軍を自分の指揮下に取り込み、追撃態勢を維持していた。そのため、戦況は相変わらず孫権軍優位の状況が続いた。凌操の敵討ちという目的も加わり、士気は最高潮に達していた。

 

 「このまま江夏城が取れる」と孫権が思うくらい、孫権軍は押しに押したのである。

 

 その時、急報が入った。

 「山越、各地で蜂起」

というものであった。ここ数年おとなしくしていた山越が、今回の出陣を見て、その隙をついて反乱を起こしたという。

 

 広範囲に及んでいるとのことで、孫権はここでこの戦を諦めざるを得なかった。凌操を失ったとはいえ、黄祖軍は壊滅的な打撃を受けており、孫権軍の勝利といえた。

 

 山越軍の反乱は、幸い、孫権が軍を引いて戻ってくるとすぐに終息した。

 

 周泰はこの戦を孫権の親衛隊長として、その側でずっと見ていた。周瑜の厳しい調練を受けている水軍は本当に精強で、蒋欽も凌操の兵を糾合して追撃を継続するなど、大活躍を見せていた。

 

 「俺も戦いたい」という気持ちになったが、自分の役割は孫権の「盾」になることだと改めて思いなおす周泰なのであった。

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