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1_08_(後編)周りの人間みんなキャラ濃ゆい主人公

 「今から特務部のメンバーと各部の部門長を発表する。特務部のメンバーは3名。一人目はサイラス」


 20代後半で元騎士のサイラスは、その高い戦闘力と訓練課程全分野での優秀な成績から特務部に任命した。


 頭は特徴的なスキンヘッドで体格は引き締まっており、鋭いまなざしはどこか獲物を狙うかのような冷静さと自信を感じる。


 精悍で無駄のない男らしさを体現するかのような外見だ。


 「二人目はエレナ」


 20代前半のライトブラウンの髪色が印象的な美女だ。


 彼女は元詐欺師という中々の経歴で、俺が直々にスカウトした一人だ。


 訓練課程では戦闘技術こそ平均以下だったものの、その他を卒なくこなした。が、彼女の真価はそこではない。


 エレナは貴族の令嬢から物乞いの老婆まで、あらゆる人間に完璧になりすます変装術と演技力、ターゲットの心を巧みに誘導し、情報を抜き取る話術と心理操作に圧倒的に長けていた。


 最初は化粧を活かした変装術と演技力を見込んでスカウトをしたが、話術と心理操作の才能があったことに驚いた。


 「三人目はウィンストン、部門長だ」


 ウィンストンは最年長の50代だ。白髪の混じったグレーの短髪と白い口髭を持ち、引き締まった身体と老紳士ながらも鋭いまなざしは鷹を彷彿とさせる。


 そして実は、父の推薦でスカウトした我がエディンバラ家の筆頭執事である。


 ウィンストンは昔裏社会で暗殺者をやっていたらしく、紆余曲折経て父に忠誠を誓ったらしい。


 父とウィンストンはそろそろ執事も引退時だったから丁度いいとか話していたが。


 ちょうどいいとは!?


 とか思っていると、さすが元暗殺者だった。


 隠密術や毒物の扱いもさることながら、今でも衰えていない暗殺術を持っていた。


 真正面の戦闘力ではサイラスに劣るものの、こと暗殺、敵に気づかれずに脅威を排除するという一点において、彼の右に出るものはいない。


 「次に情報分析部の部門長はイヴ」


 鮮やかな青緑色の髪を肩にかかる程度のボブカットに整えている彼女は史上最年少の17才という若さで国王補佐団に入った天才令嬢だ。


 何故そんな彼女がうちに来てくれたかと言うと、変わった人間という事もあるが、幼少期から付き合いがある俺を弟のように可愛がってくれているからだ。


 基本的に感情をあまり表に出さないタイプだが、スカウトに行ったときに「情報機関?ルー君がいるなら行く」と無表情で即答した時はさすがにマジ?と聞いてしまった。


 もともと国王補佐団も俺が勧めたので、誘ったら来てくれるかもしれないとは思っていたが、まさか即答とは思わなかった。


 「最後に諜報部だが、諜報員30名は全員国内外に配置するので部門長は私が兼任する。通達は以上だ、解散」


 局員たちがぞろぞろと部屋を後にする。


 「特務部とイヴは30分後に会議室に来るように」

 


 

 俺とシャーロットは一足先に会議室に来て休憩していた。


 「やっとここまで来られたわね」


 ワインレッドの髪を耳にかけ、紅茶を飲みながらそう言うシャーロット。


 「ああ、忙しすぎたな」


 俺がそう答えると、会議室の扉がノックされた。


 入室を許可すると、ウィンストンを先頭に呼んでいたメンバーが入ってくる。


 「お待たせしました長官、副長官」


 「時間通りだ」


 俺はソファから立ち上がり、部屋の中央に置かれた円卓を囲むように促す。


 ウィンストンが自然な動作で紅茶を人数分用意しだす。


 ……紅茶淹れるまでがスムーズ過ぎる。


 俺とシャーロットも円卓に移り、席に着く。


 シャーロットが全員腰を下ろしたのを確認して口を開く。

 

 「今回皆さんに集まってもらったのは、情報局の中核メンバーとしての顔合わせのようなものです。なので緊張せずリラックスしてくださいね、サイラスさん、エレナさん」


 強張った顔で背筋をピンと伸ばし、明らかに緊張しているサイラスとエレナ。


 まあ、無理もない。


 元騎士と元詐欺師がいきなり王女殿下や公爵家、伯爵家の人間と円卓を囲んでいるのだ。


 あ、因みにイヴの名前はイヴ・グレイ。グレイ伯爵家の長女だ。


 グレイ伯爵家は、広大なエディンバラ公爵領の4割を治めるうちの封臣である。だから幼少期から付き合いがあるのだ。


 「は、はっ!ありがとうございます、長官!」


 サイラスは感激したように声を張るが、緊張は微塵も解けていない。


 「ありがとうございましゅ!……ます!」


 エレナもその言葉に続くように慌てて同意を示した。


 だが、噛んで動揺したのか、勢いよく頷いた拍子に紅茶カップに肘が当たった。


 「あ……!」

 

 ガシャンという音と共にカップが倒れ、円卓に紅茶が広がる。


 「ひゃっ!ご、ごめんなさい!わ、わざとじゃ……!あわわわ……!」


 ウィンストンが何処からともなく布を出して、素早く拭き始める。


 エレナも慌てて自分のハンカチで拭おうとするが、かえって汚れを広げている。


 「……ポンコツ美女」


 ここまで黙って様子を見ていたイヴが淡々と告げた。


 「ポンコツ!?」


 エレナは心外です!みたいな顔をしているが、俺も同じ評価だ。すまんエレナ。


 スカウトの時から思っていたが、役に入っている時以外は基本ドジっ子なんだよなぁ。


 「ルー君、ポンコツ美女はやめておいた方が良い。私みたいな天才お姉さんにしておくべき」


 「なんの話だよ、イヴ姉さん」


 真顔で意味の分からないことを言うので困る。


 「将来の話」


 「はいはい。あ、ウィンストン、サイラス片付けご苦労」


 どうやら話している間にサイラスとウィンストンが机を拭いてくれてたようだ。


 「いえ、副長官!この程度些事であります!」


 「そ、そうか」


 キラキラした目でこちらを見るスキンヘッド。


 自分で言うのも何だがサイラスは少し、いや、かなり俺に心酔している節がある。


 彼は若くして優秀すぎた故に、騎士団の上官から嫉妬で不当な扱いを受けていた。それを俺がスカウトし、更に訓練課程を経た結果、こうなってしまった。


 今まで認められなかった反動だろうか。


 「イヴ様!訂正を求めます!」


 「?……じゃあドジっ子」


 「ほとんど一緒ですよ!」


 こっちはまだやってたのか……。


 俺が一人で呆れていると、それまで黙って見ていたシャーロットがくすくすと笑いだした。


 「ふ、ふふっ……!ごめんなさい。……いいチームになれそうね、ルーク」


 「え?」


 その笑顔は、王女でも長官でもない、心から楽しそうな友人の笑みだった。


 「そうだな」

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