第1話 ゴブリンに転生した俺
まだ指スマをするシーンはありません。
異世界にて無事ゴブリン転生を果たした俺。
ゴブリンに転生したことを無事と言っていいのか問題はさておき、前世の記憶がある状態で新しく生き直せることにはちょっとだけワクワクしている。
なんだか強くてニューゲームみたいじゃないか。
ゴブリンってあんまり強くない魔物なんじゃないか問題はさておき。
「オマエ、モウ、タテル、シャベレル。キョウダイ、マダ。オマエ、テンサイ」
ゴブリンのかーちゃんが言う通り、俺と同じ日に生まれた兄弟ゴブリン達はまだよだれを垂らしながらはいはいをしている。
「アー…アー…」
「ヴー…ヴー…」
緑色をしたゴブリンの赤ちゃんが何体もはいはいしている光景に、不気味さを覚えないと言えば嘘にはなる。めちゃくちゃ不気味ではある。
けれど今の俺もまたゴブリンであり、この子達は俺の兄弟だ。
なんだか全員弟妹のように思えて、自分がお兄ちゃんにでもなったかのような気持ちになる。
同じ日に生まれた五つ子なのにな。
いや、五つ子ってすごいよな。
ゴブリンは一度にこのくらい子供を産むのが普通なのかな?
なんにせよかーちゃんには感謝しかない。
…人間だった時のかーちゃん、とーちゃん、ごめんな。
そろそろ有給とって墓参りに行こうと思ってたんだけど、もう行けなくなっちゃった。
「……?ゲンキ、ナイ。ハラ、ヘッタ?メシ、クウ?」
「ア…アリガトウ、カーチャン。ナンデモナイヨ。シンパイ、シナイデ」
喋ろうとするとどうにも滑舌がゴブリンになってしまう。まぁまだ赤ちゃんだし、焦らずいこう。
「ナン、デモ……シンパ……?オマエ、テンサイ。オマエ、コトバ、ムズカシイ」
しまった、あまり人間みたいな調子で話しすぎてもゴブリンを困らせちゃうのか。
なかなか塩梅が難しい。
「ゴ、ゴメン、ゴメン。エーット、ハラ!ハラ、ヘッタ。メシホシー!」
「メシ!メシ!」
かーちゃんはメシという単語に反応して立ち上がり、メシの準備をしてくれる。
大きな葉っぱの上にヤバイ色をしたキノコやら紫色の蠢く芋虫やらなんかの目玉やらを手掴みで山盛り乗せ、自分の分と俺達子供の分を運んできた。
グ、グロぉ…
思わず顔が引きつる。
記憶が戻るまでは普通にぱくぱく食べていた気がするんだけど、なんというかそれはこれ以外の食事を生まれてこのかた知らなかったからで…
「クエ」
かーちゃんは自分の分をつまみ始めながら俺達にもその''メシ''を差し出してくる。
そりゃそうだ。俺が腹減ったって言ったから用意してくれたんだ。
他の兄弟達は床に食事が置かれるやいなや、喜んで食べ始める。
ハグッ!ハグッ!
モチャッ!モチャッ!
ガツガツと犬食いする子とお尻をついてちゃんと座ってから手掴みで食べる子、ちょうど半々に食べ方が分かれていておもしろい。
皆赤子だというのにかなりしっかりと歯が生え揃っており、固形物もなんのそのだ。
そういえばお乳を飲んだ記憶がないな。
最初からこんな風に何かを咀嚼して食べていたように思う。
生まれた時点で俺達こと赤ちゃんゴブリンにはもう歯があったのか?魔物ってワイルドだな…
みんなたくさん食べて大きくなれ。
…………って、俺も食べなきゃ。
「イ……イタダキマス」
「マタ、ワカラナイ、コトバ。オマエ、テンサイスギ」
母の愛を無下にしてはならない。
それは異世界でも同じはずだ。
気合い入れて食え…俺。
まずはひとくち。
もちょ…
「ング…ッ…」
全てがネチョネチョぶにょぶにょしている…生臭さと苦味しか感じられない。キツイ。
……が、食えなくもない。
人間だったら絶対に拒否反応が出て吐き出しているレベルだが、ゴブリンである今の俺の喉には普通に通る。
味のキツさよりも腹が満たされることに体が喜んでいるのを感じる。
ゴブリンの体ってたくましいや。
俺はこれからもこの体で、ゴブリンとして生きていかなければならない。
正直ゴブリンって冒険者とか強い魔物とかにサクッと狩られちゃう魔物では?とか、人間と戦うことになったらどうしようとか、ずっと生臭いもの食ってくのかなとか不安はたくさんあるけど……
生まれちゃったからにはとりあえず生きてみないとな!
「カーチャン、オカワリ!」
「オカ…ワリ……?」
「メ、メシ!メシ、モットクレ!」
「メシ!メシ!イッパイクエ!オマエ、ツヨイ!テンサイ!」
興奮した様子でメシを取りに行ってくれるかーちゃん。
いい人の元に生まれることができてよかった。
それによくよく考えたら魔物の体で知能が人間っていうのはちょっとしたチートと言えるかもしれない。
ひょっとするとゴブリン界で無双できるかも!
……ゴブリン界で無双してなんになるのか問題はさておき、だ。




