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タダ乗り


 俺達は、ダンジョンの内部へと潜入するとしばらくはアマタ達にタダ乗りさせて貰うべく義賊のスキル『潜入』で隠れていた。

 海底ダンジョンには、どうやらモンスターの数が少ない分海底の過酷な環境に耐えるべく、進化したモンスターが少数存在すると

いう変わったものであった。

 それに気をつけなければならないのは、剣撃等のモンスターのみを対象とする攻撃は行っても大丈夫なのだが、魔法による

広範囲攻撃、特に爆発を含むようなものはNGだということだ。

 なぜならば、もしこの海底ダンジョンが崩壊し水が流れこんできたらどうなるのか想像すればわかるだろう。

 あっという間に全員が溺死。最悪の場合は、水圧でペシャンコという可能性すらありえる。

 なのでチマチマと一体、一体モンスターを倒さなければならずダンジョン攻略に彼らは手こずっているようであった。

 こんなことを言うのも正直言って憚られると思うのだが、これは俺達にとってラッキーな出来事であった。

 彼らが手こずれば手こずるほど、俺達の体力を温存して守護者に挑むことができる。

 つまりはもっと疲弊してくれるのが、俺達にとって一番ラッキーな出来事なのだ。

 そんな邪な思いを抱きつつ、彼らが一通りモンスターを片付け終えるとレイがボソリと言った。

「ねえもしかしてこれって不味いんじゃないの?」

「え? どうしてだ?」

 俺は頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになりそうであったが、必死に堪えレイに尋ねる。

 俺達は体力を温存できる、彼らは増々体力を消耗する。

 性格の悪いことを言えば、万々歳な理想的な展開なのではないか? そう俺は考えていた。

 しかし、どうやらレイはその一歩先のことを考えていたようであった。

「例えばだけれど、彼らは最初のモンスターを倒すのにかなり苦労していた。けれど、最後の方になれば回復魔法一つ

使わずに楽々と倒していたわ」

「つまりはどういうことだ?」

「私達もここでの戦闘に慣れていないと、守護者との戦いで苦労するんじゃないかってことよ」

 俺はそれを聞いたとき、あっ! っと自分に欠けていた視点を見せられしまったと感じた。

 確かに俺達は体力を温存できるかもしれないが、彼らはそれと引き換えに戦闘での経験値というものを得ている。

 その差が、強力であろう守護者との戦いで大きく影響してくることはゆうに想像できた。


 俺は一瞬どうしよう、とんでもないミスをしてしまったと感じた。

 しかしだからといって、今『潜入』をとくと俺達の存在が彼らに知られてしまう。

 そうなれば、一悶着あることは必至だ。

 それに仮に何もなかったとしても、俺達はまだここに来てから一度も戦闘を行っていない。

 そうなると、経験値分の差が出て彼らに先を越されてしまうことは必至だろう。

 俺はあえてここは保留という決断を下した。

 しかし、これは何も弱きな選択からの保留というわけではない。

 ある根拠に基づいての、保留であった。

 それは、ダンジョンの内部には必ずどこかで別れ道やギミックが存在するということである。

 もしそこでアマタが、別れ道で左に進もうとするならば俺達は右に進む。

 ギミックに悩んでいるようならば、即断即決でアマタよりも先に動く。

 そんな逆張り戦法をとることで俺達は生き残ろうと考えたのだ。

 正直言ってこれはちょっとした賭けだ。

 ──しかし、楽をしようと俺達はこうして策を弄したにも関わらず、それが逆に仇となるとは。

 人生なにが起こるかわからないものである。

 やはり信じることのできるものは、自分自身が培ってきた経験であって小手先の手段が通用するものではない。

 そんなことを痛感させられた教訓となる出来事であった。

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