ソフトボール
「かっとばせー!」
体育の時間。
体育は他の科と合同で2つのコースから選べる。今日は電気科と合同だ。
1つは水泳の授業があり、もう1つはラケット競技中心。クラスの半分の10人ずつに分かれる。
人数超過した場合、話し合いと抽選。特にトラブルもなく、話し合いだけで分かれることができたのだった。
私が選んだのはラケット競技中心のほう。
そして今月の体育の時間はソフトボール。
もちろん、この学校にはソフトボール部があり、ガチな人たちも含まれる。
『キィン』
球が飛ぶ。
打ったのはウチのクラスの長田。
「佳子も打つねぇ。さすがエース」
そういってバッターボックスに入るのは橋本。
相手のウインドミルでの投球を1球ボールで見送り、
『キィン』
次の球をヒッティング。
打球は内野の頭上を越え、長田は3塁へ。
最終的に2点を取って、守備に換わった。
私たちは女子高生。男子ならともかく、キャッチボールの経験値があまりにも少なかった。
経験者の話し合いを経て、そうして、守備のシフトが決まっていた。
(・・・・・・前が見にくい)
私のポジションはキャッチャー。
理由は1名を除いて、一番球を投げられなかったからだ。
本来、他の塁へと投げることもあるのだが、その場合はいったんピッチャーを中継して投げる手筈になっている。
顔の前につけたマスクが重く、防具も付けているせいで動きも鈍重。
『サイン出し、とかは無理だよね・・・・・・とにかく取れるように投げるから、こぼさないように気を付けて』
だそうだ。
唯一私の長所と思われるところは、キャッチ力。
投げるのは壊滅的だが、受けるのはそこそこ。
ちなみに、どちらも壊滅的だった上田は外野に入っている。
その場所に打球がいかないように祈るという具合だ。
「ストライク! バッターアウト!」
先生による球審で3振がとられる。
次は私たちの攻撃だ。
ちなみに、ソフトボールの本来のルールだと7回まで攻守があるが、授業ではキャッチボールや準備運動をするため、5回までとなっている。
7番。私の打席。
バットを肩に置く形で構えて、真横に振り出すだけ。そう教わった。
これが意外にうまくいかない。
2ストライクに追い込まれたので、自分流の構えへ変える。
昔やったテニスのフォアで打つように。
(・・・・・・今だ!)
『キィン』
ボールは前に飛んだ。
しかし、その先には遊撃手が守っており、塁へ向かうまでもなくアウトが見えていた。
「走るのをあきらめなーい!!」
私のあきらめた走りに先生から檄が入る。
次の打席、8番上田。
上田の振るバットはヘロヘロで、悲しいことにボールにかすりもしていない。
当たらない人用の最後の手段であるバントも、走者もいない、そして上田の足が遅いので使えなかった。
そうなると最後の手段。
「・・・・・・」
上田は最後の切り札を使った!
それはバットを振らないことだ。
相手の制球ミスでフォアボール狙い。
「ボールフォア」
「出るには出たけど・・・・・・どうする?」
ソフトボール部の人たちで会議が始まる。
おそらく上田の走力では下手に内野に飛ばすとダブルプレーが確定するだろう。
打順は9番の森田、運動神経は相当のもので、中学高校とバレーボールをやっているそうだ。
去年は人数不足で同好会扱いのような部活も多く、バレー部もその扱いだったらしいのだが、新入生が入ったことにより多くの部活が活動するようになっていた。
「え~と、内野の頭を超すように打てばいいんだよね?」
『キィン』
金属バットの高らかな音と共に、森田は初球を完璧なバッティングで、内野の頭上を越した安打を打つ。
しかし、それでも上田の2塁到達はギリギリだった。
1番の長田、2番の橋本、この二人はソフトボール部なので当然のように両者ヒット。上田が帰還し1点を得た。
そのあとは誰も塁に出ることはなく、3アウトになって攻守交替。
結局、電気科との対戦は8対3で機械科チームの勝利。
ちなみに10人いるのでみんな交代交代で入れ替わっていた。
「いやあ授業でやるソフトボールも楽しいなぁ」
ソフトボール大好きな橋本は今月の毎週2回の体育の授業が楽しみのようだった。
(疲れた。午後の授業眠くなりそ~)
思った通り、午後の授業は寝ないで聞いているのが精いっぱい。
今季はテストの成績が良くなさそうだ。




