第四十八話 王子様の黒い笑み
『やったね、蜜柑ちゃん!』
偽王子君は、大喜びして異空間をぐるんぐるんさせている。
「あっ、そうか……! 翻訳しないと読めないんだった……!」
私はすぐに、異空間の画面を『いつもの所』に転移させた。
相変わらず、『この部屋』は静かで落ち着いている。
しかし、それに気づいた偽王子君が、大慌てしたように異空間を震わせている。
『ちょ、ちょっと……! 蜜柑ちゃん……!』
「なにかな、偽王子君? 翻訳お願いします!」
『そ、そうだけど、この部屋って!』
「アレクシス様のお部屋だよ。見られる心配のない部屋はここぐらいしか……」
『ちょっと待ってよ、蜜柑ちゃん!』
鈍い私には、偽王子君が大慌てしている理由がさっぱり分からない。
「偽王子君、どうしたの?」
『アレクシス様の秘密をどうしてアレクシス様のお部屋で読むの!?』
「あ、そ、そうか! バレるとマズいんだった……!」
その時、スッと日記が上に取り上げられた。
「あっ!?」
私は驚いて、半トリップした。
「バレるとマズいとはなにがだ?」
アレクシス王子の声が聞こえてきた次の瞬間。アレクシス王子の手の中に王妃様の日記があった。日記は見事に没収された格好となっていた。
「あああああああ、アレクシス様!?」
噂をすれば影だ。いや、ここはアレクシス王子が居る部屋なので王子様が居て当然なのだ。
アレクシス王子の瞳が、悪戯っぽく閃いた。
「ほう? 蜜柑は、日記なんてつけているのか?」
王子様は、日記の表紙をまじまじと見ている。
表紙には、宝玉語で『日記その一』とだけ書かれてある。先ほど、翻訳されたときに、表紙だけを読んだのだ。
今は、異空間の画面を通して見てないので、宝玉語にしか見えてないが。
『蜜柑ちゃんって、前々から思っていたけどかな~り抜けているよね!』
偽王子君は呆れかえっている。
「あ、あはは……!」
実は、両親や姉からも『馬鹿な子ほど滅茶苦茶可愛い』と絶賛されている。
性格を直そうにも、一向に直らない。三つ子の魂百までなのかもしれない。
「アレクシス様、返していただけませんか? 見られると恥ずかしいので」
『そ、そうそう! 蜜柑ちゃんの秘密なんて読んだって……』
この際、私の日記ということにしよう。
そして、アレクシス王子の良心にゆだねるしかない。
「そうですよ、私の日常なんてつまらないですから……!」
「フ……」
しかし、アレクシス王子は勝ち誇ったように笑った。
な、なんだ!? アレクシス王子のその黒い笑みは……!
「嫌よ嫌よも好きのうちと言うではないか」
「なんだそれはー!」
私は取り返そうと、アレクシス王子の傍に回った。
しかし、アレクシス王子はこちらにくるりと背を向けた。
そして、王妃様の日記を捲り始めた。
「えっ……!」
アレクシス王子が、日記を読んで顔を上げた。
顔色なしになって、こちらを戸惑ったように見ている。
「蜜柑、これはどういうことだ……?」
げっ! ま、マズい~……!




