第十九話 更に怪しい人物……?
私の報告に、アレクシス王子は「ふぅむ……」と、顎を手にやって考え始めた。彼の視線が、窓に注がれる。しかし、窓はすりガラスになっているので、外は窺い知れない。
「確かに、第二王妃や第三王妃の方が怪しいかもしれんな。第三王妃に至っては、私の異母兄弟のギルバートの母だ。私を亡き者にすれば、次期国王候補はギルバートだけになるからな」
「な、なるほど~! では、それを参考に捜査してみます! では!」
私は、半トリップを止めて、姉の部屋に戻ってきた。
「そういうわけなんだよ、偽王子君」
しっかりと聴いていたと思われる偽王子君に簡潔に説明した。
『そうだね。結構犯人が分かってきたんじゃないかな?』
早速、異空間に念を送って、宝玉城の取調室に移動した。
すると、取調室の様子が異空間に鏡のように映った。
そこでは、尋問官と白いドレスを着た者が睨み合っていた。
『メープル様、おかけください』
会話の内容から察するに、取調室にはメープル第二王妃が呼ばれているようだ。柳眉を逆立てているが、花で例えるとカスミソウのように儚げで線の細い御方だった。メープル第二王妃は嘆息してそっと腰かけた。
『どうして、私がアレクシス王子を亡き者にせねばならないのですか? 私は、絶対にそのようなことはしません! 神に誓ってそんなことはしませんわ!』
とんでもない勢いで、メープル第二王妃は捲し立てた。線の細い美人が泣きそうな顔でまくしたてる姿は、胸に迫るものがある。
『なんとなく、犯人ではなさそうな感じがするね』
「う、うん。メープル様が犯人だったら、名演技だと絶賛するね」
次には、取調室にローズ第三王妃が呼ばれた。
ローズ第三王妃もオルタンシア第四王妃と同じで気の強そうな御方だった。
『ほう? 私を犯人だというのか? 確かに、私は一番怪しいだろう。アレクシス王子がいなければ、私の息子のギルバート王子と次期国王の座を争う者はいないのだからな』
「おおお!」
私と偽王子君はそろって声を上げた。
『アレクシス様が睨んだ通りだね、蜜柑ちゃん』
「本当にローズ様が犯人なのかもね!」
異空間の中では、尋問官の上官が机の上に身を乗り出した。
『自白なさるのですね?』
『私が犯人ではないのに、なぜ自白しなければならない?』
あと、もうひと押しだ。
その時、尋問官がドアを開けて駆け込んできた。
『上官! 第二王妃様と第三王妃様のお部屋からは、証拠となる物が何一つ見つかりませんでした!』
『ほら見なさい。私は無実だ!』
ローズ第三王妃は、勝ち誇ったような顔で口元を釣り上げた。
「それは、本当なのか!? 本当の本当の本当なのか!?」
この尋問官が、簡単に容疑者に毒を飲ませてしまったところを考えると、ローズ第三王妃の部屋の証拠も見逃しているのでは……と、勘繰ってしまう。彼は、ローズ様の手先じゃないのか。
『お、落ち着いて、蜜柑ちゃん!』
「く、くそぅ。絶対、ローズ様だと思ったのに……!」
私は悔し紛れに膝を叩いた。
「よし、ローズ様のお部屋を捜査だ!」
『そうだね! 何かあるかもしれないからね!』
私と偽王子君は、ローズ第三王妃の部屋を異空間から見下ろしていた。そこには、第三王妃とメイドたちが見える。第三王妃は、部屋の中を右往左往していた。
『このままだと、濡れ衣を着せられてしまう! そうなれば、私の野望もすべて水の泡だ!』
『ああ、ローズ様、しっかりなさってください!』
眩暈で倒れそうになったローズ第三王妃を、メイドたちが慌てた様子で支えている。
私は、「んん?」と、眉をひそめた。
「なんだろう? 野望って?」
『さあ? でも、これで、ローズ様は犯人じゃないってことがはっきり分かったね、蜜柑ちゃん』
「う、うん……」
ローズ第三王妃が犯人ではないとなると、一体誰が犯人だというのか。ローズ様以外は、動機がはっきりしない。
「第四王妃様も違うし、ローズ様も犯人じゃない……」
じゃあ、誰が……? 私は、城中を見て回っていた。
『そろそろ、アレクシス様のお食事の時間だよ?』
偽王子君の声に、私は現在の時刻を気付かされた。
「そ、そうだね。厨房に戻ろう!」




