第十五話 メイドのニコラ
相変わらず、アレクシス王子のお食事には毒が混入されているようだ。
アレクシス王子は被害を被らなかったが、水槽の毒見の魚が反応を示しているのだ。
料理長の手によって、フェリックスに罪がなすり付けられそうになった。しかし、私がアレクシス王子に進言して否定した。すると、アレクシス王子はこう言ってとどめた。
『犯人は別にいる! すぐに真犯人は捕まることになるだろう!』
王子様の凛とした物言いに、家来たちは従う他なかったようだ。
しかし、アレクシス王子は元気を無くした。
厨房で作られたお食事はおろか、私が城下町で買ってきたお料理にもあまり手を付けなくなった。
「アレクシス様、元気を出してください!」
「私は、このまま死んでいく運命にあるのだ……遅いか早いかの違いだ……」
アレクシス王子は、天蓋付きベッドのカーテンをすべて閉じてしまった。私は異空間からそちらへ半トリップしたまま、天蓋付きのベッドの中に移動した。薄暗いベッドの中で、王子様はごろんと不貞寝している。不貞寝の王子様を観察していても仕方ないので、異空間の外に引っ込んだ。
「仕方ない。厨房に行って犯人を捜してみるか」
『そうだね。蜜柑ちゃん』
厨房に行くと、料理長と料理人フェリックスが話していた。
『フェリックス、良かったな。アレクシス殿下がお前の事を庇っておられた』
『ほ、本当ですか……? もしかして、俺はお咎めがないんですか?』
『そうだ。アレクシス殿下に感謝しろ』
『は、はい……! 本当に、俺、間違ってた! アレクシス殿下に一生ついて行こう!』
どうやら、料理人フェリックスのアレクシス王子への好感度が上がったらしい。
料理人フェリックスは忠誠心のある良い料理人だった。
「おや? あのメイド……」
『本当だね。面白くなさそうな顔でこの話を聞いているみたいだね』
偽王子君の言うとおりだ。
そのメイドは、料理長と料理人フェリックスが話している方を睨んでいた。
「どことなく面白くなさそうだなぁ……?」
『うん……。これは怪しいね』
しばらく様子を見ていると、メイドの連れがやってきて肩を叩いた。肩を叩かれたメイドは驚いて飛び上がっていた。
『どうしたの、ニコラ? アレクシス殿下のお部屋に行くわよ?』
『う、うん、行こう!』
「メイドはニコラというのか」
『後をつけよう!』と、偽王子君。
そうして、メイドたちの後を付けていると、運んでいる途中にアレクシス王子のお食事に、メイドのニコラが毒を入れているところを目撃してしまった。
なので、先回りしてアレクシス王子に報告した。そうして、メイドのニコラを捕まえたのだった。
犯人が分かったお蔭で、アレクシス王子は生まれ変わったように生き生きしていた。
「これで一安心だ。蜜柑、心より礼を言うぞ」
「はい、これで安心ですね!」
しかし、ぬか喜びも良いところで、なんとメイドのニコラは翌日殺害されてしまったのだ。




