第十四話 毒見の魚
異空間をくぐって、アレクシス王子の部屋に半トリップした。
私の物音が聞こえたのだろう。
天蓋付きのカーテンを引いて、王子様がベッドの方から出てきた。
やはり、私が異世界側にいる時は、偽王子君の声は聞こえないようだ。
「アレクシス様、お聴きください――」
報告しようとした私を、アレクシス王子は手で制止した。
水槽の魚は水面で腹を上にして揺らめいている。
犯人は見つからなかったものの、嫌な予感がした。水槽に料理の欠片を入れて見たら、案の定だった。
「毒見の魚を使ったのだな。この毒見の魚は私が密かに異国から取り寄せたものだ。皆はこの魚は観賞用と思っているだろう。これは、少しの毒でも毒を発見できるという魚だ。この魚は毒に強い。一時は毒のせいで気絶するが、またしばらくすると復活する。毒を調べる上では便利な魚だよ」
説明通りに毒見の魚が復活した。何事もなかったかのように、水槽の中で悠々と尾びれを振って泳いでいる。けれど、アレクシス王子は真剣な顔になった。
「また、私は殺されるところだったということか」
結局、黒幕が用意した結末は同じものだったようだ。
アレクシス王子の元気が無くなった。
私は、元気付けようと明るい声を努めた。
「アレクシス様、お喜びください。パトリック執事はアレクシス様の事を第一に考えておられました。パトリック執事の日記には、アレクシス様を心配して祈ることばかりが書かれていたのです」
急にアレクシス王子の顔が、パッと華やいだ。本当に嬉しそうだ。王子様は本心からパトリック執事のことを慕っていたようだ。
「そうか、ありがとう、蜜柑」
彼のやさぐれた顔から険が取れた。宝石のような青い瞳が眩しく光る。
「な、何?」
「蜜柑は、本当に妖精なんだな……」
「……え?」
異世界では、そういうことになっているけど……。
妖精というなら、私よりもアレクシス王子の方が美しいのに。
それにしても、黒幕が捕まらない事にはどうにもならない。
毒炭が無くなったあの日。私は、パトリック執事の後をつけていた。あのとき、すれ違ったメイドがどうも引っかかる。
もう少し厨房を調べてみようと思った。




