第十三話 フェリックスの料理
そして、フェリックスが納得しないうちに料理人たちの調理が始まった。
材料は、白身魚・小麦粉・じゃがいも・バター。白ワインに、マッシュルーム・ベーコン。
『この中だと、白ワインと小麦粉が怪しいような……』と、偽王子君。
「確かに……入っていても分からないね」
フェリックスは小麦粉をバターでいためて、ホワイトソースの元を作っている。段々と作業が進んで行き、最後に白身魚のクリーム煮が出来上がった。
「フェリックスが毒を入れているはずがないけど、材料に毒が入っているということも……あっ!?」
死刑になるぐらいならと、フェリックスは考えたのか。
フェリックスは、スプーンでホワイトソースを掬って毒見していた。
『よし、大丈夫だ』と、フェリックスが頷いた。
「そ、そうか。大丈夫なのか」
私はほっと息を吐く。
私は席を立ち、台所からスプーンを持ってきた。フェリックスが目を離したときに異空間の中に手を伸ばし、ホワイトソースをスプーンですくって姉の部屋に持ってきた。
「私も、毒見でもしてみるか!」
『ええっ? 毒見するの? 危険じゃないかな……!』
偽王子君は戸惑っているようだ。でも、私の気は大きくなっていた。
「大丈夫大丈夫! フェリックスがすでに毒見したからね!」
ホワイトソースに息を吹きかけて冷ますと、そのまま自分の口に運んだ。
「う、うおっ!? 滅茶苦茶美味しい! やっぱり、材料に毒なんて入ってなかった!」
『そ、そう? それは良かった。でも、蜜柑ちゃんって勇者で吃驚するよ……』
偽王子君は驚いているが、私はお構いなしだ。
コンビニのおにぎりのラップを剥がすと、再びフェリックスの隙を見て、異空間から手を伸ばした。そして、おにぎりにホワイトソースをつけて、自宅に持ってきた。
「美味しい! コンビニのおにぎりがワンランクアップ!」
『蜜柑ちゃん、なんか檸檬さんと似てる……』
「姉妹だからね~!」
一宿はないけど、一飯の恩義。絶対にフェリックスの代わりに犯人を突き止めてあげるべきだ。
フェリックスは泣きそうな顔で料理を注ぐと、皿をテーブルの上に並べた。その他にも、ふかふかのブレッド・美味しそうな卵料理・サラダ等。朝からバリエーションに富んで美味しそうな食事だ。
暫くすると、紺のメイド服に白いエプロンをしたメイドたちがにぎやかに入ってきた。
『毒見はされましたか?』
『ああ、フェリックスがチェック済みだ』
メイドの問いに、料理長が答えた。
何故、料理長が毒見をしないのか。毒が入っていたときの責任逃れなのか。
『これが、アレクシス殿下のお料理ですね。持って行きますね~!』
『行こう』
『うん!』
メイドたちは三人だ。昨日見たメイドはいない。
しかも、残念なことに、怪しい動きをする者は見極められなかったのだ。




