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うちのハムスターが引きこもってばっかりだと思ったら、急に擬人化してきたんですけど!?  作者: 櫻木サヱ
ハムスター、外に出る

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8/11

全落ちちくわと、飼い主のため息

ちくわの面接チャレンジは、その後も続いた。

近くのスーパー、カフェ、町工場、なぜかペットショップ――どこに行っても結果は同じ。


「またの機会に…」

「今回はご縁がなく…」

「ごめん、うちは人間経験一年以上じゃないと…」


最後のは完全に条件が無理だ。


帰り道、ちくわは足取りも重く、スーツの肩がしょんぼり落ちている。

朝はあんなに胸を張っていたのに。


「わたし……働けない」

声が小さい。

ハムスターの時は鳴かなかったくせに、いまは妙に感情豊かだ。


「いや、そもそも人間じゃなかった時期が長すぎるんだって。職歴ゼロじゃなくて、種族ゼロなんだよ、ちくわ」

慰めたつもりが、余計に落ち込ませたかもしれない。


家に戻る途中、コンビニの前のガラスに自分の姿が映る。

人間の姿だけど、動きや表情がちくわのままだから、どうしても「人っぽい何か」みたいに見える。

本人も気にしているらしく、じっと鏡を見つめていた。


「わたし、変じゃない?」

「変だよ」

「……だよねぇ」


泣きそうなちくわの顔を見て、胸が少し痛くなる。


家に着くと、ちくわはケージを眺めて小さくつぶやいた。

「ここ、狭いって思ったけど……いまは、落ち着く」


その言い方は、今にも戻りそうで少し焦る。

それでも、ちくわは扉に手をかけることなく、ソファに座った。


「わたし、もう一回だけ挑戦したい」

「うん。いいよ。付き合うよ」


ちくわは鼻をすすりながら、うん、と頷いた。

涙でまつげが濡れている。

人間になったせいで、泣くのもすごく人間くさい。


その夜、私はため息をつきながらネットで求人を探した。

――頼むから、どこか一つくらい拾ってくれ。


このときの私は、まだ知らなかった。

翌日、とんでもないスカウトがちくわに来ることを。

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