おまけ短編⑧ うさことくまおと甘い朝
早朝なんとなく目が覚めたので、ミアはそっとベッドから抜け出て窓に寄り、カーテンを少しだけ開けた。カーテンの隙間から朝焼けの色が見えたからだ。
「わー……きれい」
寝室の窓から見える塔のむこうに、見事な朝焼けが広がっていた。淡い紅色に染まった雲の隙間から初夏の朝日が差し込み、塔の側面を明るく輝やかせている。
見て見てと新婚の夫に言いたかったが、まだ眠っているのでやめておく。外はだいぶ明るいものの、時間はまだ早い。もっと寝かせてあげたかった。
ミアはカーテン越しの薄明りの中、窓辺から夫の寝顔を見た。
ぬいぐるみのくまおに顔を半分うずめ、穏やかな顔ですやすや眠っている。
新婚なのだが、ミアはいまだにうさことくまおと一緒に眠っている。
王都に来た初日から一緒に眠っているのだ。夫のほうがベッドの新参者なのである。夫――第一王子ディートハルトは最初のうちぶうぶう文句を言っていたが、一週間もしたら慣れたようだ。うさことくまおを物扱いしたらミアが怒るのはわかっているので、移動させるときは声を掛けて丁重に扱ってくれる。冷静に考えたら次期国王に何をやらせているのだと思うが、まあ、それはそれ。
(ふふふ。かわいい)
ミアは窓辺の椅子に腰かけた。頬杖をついてディートハルトの寝顔を眺める。朝焼けもいいが、こっちのほうがずっと見ていたくなるし、いくらでも見ていられる。
新鮮な朝の光の中、うさことくまおに挟まれて眠るディー。
なんてしあわせな光景だろう。
「んー……ミア……」
ディーがむにゃむにゃ言いながらくまおを抱き寄せた。
(わたしだと思ってるのかな)
ちょっと恥ずかしい。
照れつつディーを観察していたら、さすがに触り心地がおかしいと気付いたようだ。ディーはぱちっと目を開け、自分が抱きしめているのがくまおであると気づくと、すぐに反対側を向いた。反対側にいるのはうさこである。
ディーはがばっと身を起こした。
「ミア……!」
「ここ、ここ」
窓辺の椅子から声を掛ける。
「……よかった。いた」
安堵したようにディーが言う。
「そりゃいるってば」
「ミアと結婚したのが夢だったのかと思ってあせった」
「夢ならうさことくまおもいないと思うけど」
「なんでそんなところにいるんだ」
「朝焼け見てたの。来て来て。きれいだよ」
ミアが誘うと、ディーがもそもそとベッドから降りて来た。立ち上がったミアを後ろから抱き込むようにして、ディーも窓の外を見る。
「魔物討伐の旅を思い出すなあ」
「そうだね。よく朝焼け見たね」
「俺はミアを見てたけどな」
「ディーってわりとそういう照れること言うよね……」
そういう自分も朝焼けそっちのけでディーの寝顔を見ていたわけだが。
照れているミアの頬に口づけを落とし、ディーはベッドに戻った。
寝直すのかなと思って目で追ったら、ディーは「ちょっとごめんな」と言いながら、うさことくまおをベッドの端に移動させ、壁のほうを向かせて並べた。
これは、ミアが「うさことくまおが見てたら恥ずかしい」といつも言うため、この一ヶ月で習慣化した行動なのだ。
「おいで」
ディーが上掛けを上げ、ミアをベッドに誘う。結婚して一ヶ月だ。「一緒に寝直そう」という意味ではないことくらい、もちろんわかる。
ミアは少しはにかんで、ディーのぬくもりのあるベッドにそっと滑り込んだ。
ミアとディーの物語は、おまけの後日談を含めこれにて全て終了です。
アニメのエンディング後に出てくる一枚絵のように、四姉妹の庭園お茶会イラストを今ここに貼り付けたい気持ちです。
おまけ短編を含めると42万字超え、自分でもまさかここまで長くなるとは思いませんでした。6年ほどのブランクがあったのちの復帰第一作だったので、「書きやすい話を10万字くらいでさらっと書こうっと」と思い、軽い気持ちで書き始めたお話なのです。
軽い気持ちで書くと長くなるということがわかりました。うん。
あとがきであまり語り過ぎると余韻もなにもなくなるので、活動報告のほうでキャラ語りなどしようかと思います。みてやってもいいよwという奇特な方は、後で活動報告のほうをご覧ください。そういうお寒いのはちょっと……という方は、次回作でまたお目にかかれたら幸いです。
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「姉の聖女の力を封印してしまった」をご愛読どうもありがとうございました。
たくさんの方に読んでいただき、サカエはとてもしあわせです。




