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第二章 その28 混血者同士の戦い

 混血者の持つ異能力のパターンはいくつかの種類に分類される。


 一つは身体能力型――自身の体内で生み出した能力を使用するタイプの型。

 もう一つは領域型――周囲の一定範囲内で能力により様々な事象を起こすタイプの型。

 そして最後に特殊型――超自然的な現象を起こしたり能力の発動条件が限定的すぎる能力のタイプの型。


 ジェンやリソン、リミは身体能力型。アオイやウーガンが領域型。そしてコクローは特殊型に分類される。

 厳密にはそれぞれの型の複合した能力者もいるのだが、基本的には上記の三つに分類されているのだ。


 基本的に身体能力型の混血者は近距離での戦いを得意とする。それに対し領域型の混血者はある程度の距離を取って戦う者が多い。

 故にジェンとウーガンの戦いは、近づいて攻撃したいジェンと近づかせずに攻撃できるウーガンという構図になるはずだった。


 だが現状、二人の戦いにおいて、予想された形にはなっていなかったのである。


 開戦直後、ほぼ同時に動きだした二人はお互いが前進した。

 遠距離の攻撃手段を持たないジェンが前に進むのは当然だが、距離を置きたいはずのウーガンも同様に前へ踏み込んだのだ。


 その理由は単純明快、ウーガンが剣士だからである。


 武器を持っていないジェンの間合いの外から攻撃できるのだから、ウーガンが有利なのは間違いなく、故にジェンがすぐに回避しつつのカウンター狙いに切り替えたのも当然だった。


 だがウーガンはジェンが簡単にカウンターが取れる相手ではなかったのだ。


 単純に剣の技量と速度だけでいえばケングーの居合の方が圧倒的に速い。

 しかしケングーの居合はタイミングを読み切ってしまえば、ジェンにとってはカウンターどころか相手が剣を抜く前に倒せる程度の速度だった。


 単純にタイミングを計ればよいだけのケングーと違い、ウーガンは普通に両手に剣を持って攻撃してきている。

 さらに自分の領域内では剣を自由自在に操れるのだ。そんな相手にカウンターを狙うのはさすがにジェンでも至難の業だった。


 攻撃の届かない間合いからウーガンの縦横無尽な剣の攻撃が襲い来る。


 上下、左右、前後、左右。あらゆる角度から嵐に舞う木の葉の如く、無慈悲な刃がジェンを狙い続けていた。


 普通の相手なら、もうとっくに終わっていてもおかしくない程の手数による攻撃である。これをほぼ無傷で切り抜けているジェンもまた凄まじいというしかない。


 闇雲な前進では一向に勝機が見いだせず、ジェンは仕方なく一時的に後退を選んだ。


 広い場所に浮遊する十五本の剣と両手に剣を持ったウーガンの姿を見て打開策を考える。


 正直なところ、道場の外へ出たのは失敗だった。その為に限定的だった中空に舞った後の剣の攻撃が、ジェンの周囲、全方向から狙える様になってしまったからだ。

 だからといって、あのまま道場内に留まっていれば、やがてこのウーガンという男はスミカや地下人の娘を狙っただろう。


 目の前で取られた人質ならば、その相手を脅して怯ませることは出来る。実際、さっきの道場内ではそれで窮地を凌いでいる。

 しかし同じ人質としてでも、向こうが安全な状況からこちらを狙ってくる場合は、脅しが有効ではなくなってしまう。

 それどころか逆に狙われた相手を庇って負傷する可能性もあった。いや現に地下人の娘を守ってジェンは既に怪我を負ってしまっている。


 結局のところ、どっちにしろ、道場から外へは出る必要があったのだ。まあ、向こうから誘い出された形になっているのが癪に触るところではある。


 となると、ジェンに残された方法は自身の能力を使うこと。

 そして最も大事なのは、どの能力を使用するのか、その選択を見誤らない事である。


(恐らく勝機は一瞬だな)


 能力の加減を間違えれば自滅まであり得る状況に、仮面で隠されたジェンの顔が笑みを浮かべた。

 するとそんなジェンの雰囲気を感じ取ったのか、ウーガンが突然大きな声で語り始めたのである。


「なるほど、いいねいいねー、最高じゃないのさ。俺っちの事を大したことないなんて、言うだけの事はあるってさ、そう思うぜ? それで、お前はどうよ? 俺っちの評価が改まったんじゃないのって思うんだけどさー!」

「俺の評価なんぞどうでもいいだろ。この後、アンタは死ぬんだからな」

「クックック、いいねいいねー、それじゃあさ、俺っちの事を舐めたまま……お前が死ねば良いさ!」


 先に動いたのはウーガンだった。浮遊している剣のうち数本をジェンに向けて射出する。


 ジェンはその剣を避けるべく、ウーガンを正面に見ながら左回りに動く。これまでの様な直線的な動きではなく、相手の周囲を回りながら距離を詰めていく作戦だ。


 当然、その動きは作戦があってのもの。ウーガンを確実に仕留める為には少しばかり時間が必要なのだ。

 相手の攻撃を避けながら、ジェンは集中力を高めていく。

 かつて我が身に受けた能力の残滓を拾い上げるために。そして、その能力を確実に直撃させる為に一瞬のチャンスを引き出すべく動く。


 対するウーガンも剣を操る能力に一切の陰りなく、ジェンを迎え撃つ為の最善の動きを展開する。


 浮遊する刀剣と自らの剣技という両輪の攻撃により、自分自身の絶対の勝利を疑わないウーガン。


 これまで自らの持つ無限を宿す能力と圧倒的な体術により、どんな相手だろうと圧倒してきたジェン。


 二人の混血者による戦いの決着の時が近づいていた。


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