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 不安定な天気続きで、暑さも増してきました。

 体調に気を付けてご自愛下さい。


 ……ラグドールは私の推しです。

 



 「ちょっ、ちょっと!何、この娘!前回よりパワーアップしすぎでしょっ!!」

 「っっ、ま、まだまだですっ!アリスンさん、覚悟!」


 ……本当に恐ろしい嬢ちゃんだ。

 俺は大きな溜息をついた。


 俺を最後にする為、今回はアリスンが相手となった。俺同様、主らしい主に興味津々なアリスンはちょっと遊んでみよう、くらいの気持ちだったに違いない。


 俺だって、そう思ってた。

 思ってたんだが……。


 前回の瞬殺された理由を徹底的に分析したんだろう。始まりの合図と共に張られた結界と身体強化。同時に掛けるなんて王宮魔導師でも一握りしかいないのに、あっさりやってのけるとは恐れ入る。しかも、それに加え経験不足を補う為に、持てる力を出し惜しみしない潔さは天晴としか言い様がなかった。


 自身の身体能力が低いのをしっかりと認識した上での戦略。持久力も足りないと判断した今回は全力で魔法を乱射している。手当り次第に見せてフェイクを混ぜながら追い込み、大技を繰り出す。その大技が国内、いや世界でも何人が使えるかわからない特級魔法な上、オリジナルで何か加えているらしく威力が本来のものより数段上がっている。


 そこそこ強くなると自身の力量を見誤りがちだ。プライドや傲りが眼を曇らせてしまう。弱点や欠点を的確に知り、それを補う策を講じる。これが簡単なようで難しい。だが、それが出来なければ先には進めない。己自身を把握する事が強さに繋がる。


 それをたった15、6の少女がやってのけた。

 しかも、格上の相手に、たった三日で。

 ……俺だって餓鬼の時はそんなこと出来はしなかった。


 俺は知らずに身震いをしていた。


 本当に……愉しませてくれる。


 技量で言えば、間違いなくアリスンが上だ。だが、アリスンに嬢ちゃんを傷付けるという選択肢がないとなると話は違ってくる。少なくとも嬢ちゃんの力量は俺達を除けば国内で五本の指に入るだろう。そうなれば手加減するのが難しい。だけど嬢ちゃんは全力で挑んでくるのだから、アリスンが押され気味なるのは仕方無いだろう。たった三日前にソロンに瞬殺されたのが嘘みたいだ。


 俺は口角が上がるのを止められなかった。


 こんな逸材に出会えた喜びに。


 嬢ちゃんはもっと強くなる。

 もしかしたら、俺達よりも強くなるかもしれない。


 俺の中の何かに火が付いたのを自覚する。

 出来る事なら、この嬢ちゃんを育ててみたい。


 強固に張った魔法結界が嬢ちゃんの魔法でひび割れるのを修復しながら、ソロンが微笑む。腹黒のソロンがこんなに柔らかく笑むのを久しぶりに見た。


 「私もまだまだです。上には上がいるってわかっていたつもりでしたが、いつの間にか傲ってしまっていたようです」

 「だな。俺もそう思う」

 「おや、ラグドールにしては殊勝ですね?」

 「嬢ちゃん見て、そう思えなきゃ俺は終わってるさ」

 「ふふふ、次回が楽しみで仕方無いでしょう?」

 「……さて、次回があるか?アリスンがヤバいぜ」

 「は?まさか!」

  

 俺を見て話していたソロンは戦いを見逃していた。


 「あ、あれは何なんです?!」

 「さあな。嬢ちゃんのオリジナルだろう」


 あんだけ魔力を食う魔法を乱射した後にも関わらず、恐ろしく緻密な結界でアリスン囲っていた。あれでは魔法も剣技も何の役には立たないだろう。流石のアリスンもお手上げなのか、半泣きになっている。

 

 勝負あったり。


 「嬢ちゃん、『降参』だ」


 流石にしんどいのか、肩で息をしながらこちらを向いた嬢ちゃんが喜色満面になる。


 「ほ、本当に?」

 「ああ、本当だ。おめでとうさん」

 「〜〜〜っ、やったあ!!」


 両手を天に突き上げ、喜びを噛み締める様子は年相応の少女だった。


 「ふぅ」


 少し離れた所で戦いを見ていた少年、王太子殿下が思わずといったように小さく息を吐き出す。多分気が気でなかったに違いない。

 手を出さずに見守るというのは存外辛い。

 しかも、その相手が好いた女なら尚の事だろう。血の気の多い年頃なのに、理性で感情を制御する様は懐の深さを感じさせる。嬢ちゃんも大概だが、少年も既に王者の器の片鱗を見せている。


 規格外の王妃に、懐の深い王か。

 この国は安泰だな。

 噂ほど生国に愛着がないわけではない俺は安堵する。


 俺達を上手く使ってくれよ?次期国王夫妻様?


 さあ、我が“灼熱煉獄”への依頼を承ることにしよう。


 俺は半泣きのアリスンを労る少女へと歩き出す。


 これから始まるであろう、新しい何かへの期待と興奮が俺を満たす。三十路にかかろうというのに、餓鬼みたいな自分に苦笑した。

 



 次回の投稿は7/18(日)です。

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