イキますよー!
トネリコから来た人々は1週間ほど滞在し、これからの交流や取り決めなど話し合った。
「なぁ、本当なら俺が行きたいのだが?」
「ダーメ♪国王様がいきなり行ってどうするの?」
「それなら君も王妃様だろう!」
アルフとシリカはどちらがトネリコに行くのかで揉めていた。最近は国内も安定して単純な書類整理ばかりでストレスが溜まっていたのだ。旅行気分で1度逃げ出したかったのが1番の理由である。
「これ以上は無駄だな」
「そうね。もう終わりね………」
なんと!離婚騒動にまで発展しているのか!?
「最後の手段だ!」
「望む所よ!!!」
えっ!?マジですか!
「「最初はグー!ジャンケン!ポンッ!」」
あっ、ジャンケンですか………そうですか………
「やったわ!勝ったーーー!」
「くそぅ!負けた!」
悔しそうに自分の出した手を見つめるアルフ国王に万歳しているシリカ王妃がいた。実に平和である。
「何日掛かるかわからないから、少し余裕を見て日程を組むわね」
「それなんだが、転移魔方陣を積んでいけ。帰りは一瞬で帰れるだろう?」
「おお!それがあったわね。あの様子じゃ信用出来るし大丈夫よね♪」
「そうだな。そろそろもう寝ようか」
「ええ………えっ?ちょっと何!?」
居間にいた二人だったが、アルフはシリカを担ぎ上げた。
「しばらく離ればなれになるからね。親睦を深めようじゃないか」
「あはは……もう夫婦じゃない?大丈夫よ?」
ニコッ、と微笑んで寝室へと向かう。
「浮気出来ないように今日は寝かせないぞ♪」
「………あ、明日起きれないとマズイのですがー!」
「大丈夫、大丈夫!君はチート持ちだからね♪」
「いーやー!たーすーけーてー!」
シリカ王妃の叫びは虚しくこだまし、夜はふけていきました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝─
爽やかな朝日が窓から射し込む一室に、燃え尽きた王妃様の姿がありました。そして対極的に国王様はニコニコと健やかな顔で朝食に顔を出していました。
「あら?アルフ国王様、何か良い事でもありましたか?」
「ん?いや、うちの子供達も初めての外国に行くので楽しみにしていたのでね。ご迷惑をかけるかも知れませんがよろしくお願い致します」
「いえ!こちらこそ大事なお子様をお預かりさせて頂きます!」
シルフィーはミスレイン王国について全てが劣っていると認識させられた。街の視察でも様々生活用品などレベルが高かったのだ。そして、精霊に好かれている御子息を派遣し無償で助けてくれるという国王の人柄にも負けていると感じていた。
「お父様!あれ?お母様は?」
「ああ、疲れているみたいでね。まだ寝ているよ。まぁ、出航はお昼からだから大丈夫だよ」
「お母様のお寝坊さんだー!」
「ははは、そうだねー」
こうして何気ない会話を楽しんだ後、準備に取りかかった。
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「この度はお世話になりました」
「いえいえ、これからは時々会えるようになりますので、近いうちまたお会いしましょう!」
「はいっ!よろしくお願い致します!」
船の前で別れの挨拶をする。
「お母様、大丈夫?」
「ええ……大丈夫よ?」
シリカもギリギリに船に乗った。
「アルフ国王よ。こんなに土産を貰ってかたじけない」
「いえ、気にしないで下さい!これを本国の方々に飲んでもらい、良ければ購入お願い致しますね。先行投資ってヤツですよ」
「ははは!商売がお上手だな!」
そう、お土産とは米から作った純米酒だ。ドワーフの族長が気に入ったのなら、今度から大量の発注が来るだろう。
「シオン、レオン、気を付けてな!」
「「はい!行ってきます!」」
大きく手を振りながらトネリコへ向かう船を見つめていた。
「本当に、向こうでやらかすなよ……マジで頼むからな……」
最後に小さく呟いたアルフ国王だった。