2話 変質的に歪んだ正義
前回
男子生徒が入ってきて、いじめっ子を殴った。
「て…んめぇ…何しやがる!」
五十嵐が怒り狂いながら立ち上がる。
それでも男子生徒は動じない。
それどころかまだ少し微笑んでいる。
(何だあいつ…余裕の表情だ。あいつもなんか格闘技の心得があるのか?)
すると、男子生徒が口を開いた。
「殴ったんです。」
「(…は?)」
五十嵐の言葉と俺の心の声が見事に重なった。
「てめぇなめてんのか…何で殴ったか聞いてんだよ!!」
五十嵐が男子生徒に掴みかかる。
しかし男子生徒はなおも動じない。
「あなたは楽しそうに彼を殴っていました。だからその楽しさを知ってみたくて…あなたを殴りました。あなたが他人を殴っているのだから、僕もあなたを殴っていいですよね?」
すげぇ理屈を並べてきたな…まぁ間違っちゃいない…のか?
「てめぇ…そんだけのことでっ…!」
「あ、それだけじゃないで…」
ボグゥ!
男子生徒が言い終わる前に、五十嵐が男子生徒の頬を殴った。
吹っ飛ぶ男子生徒。
(おいおい、流石になめすぎだろ…いくらなんでもあれは…)
痛いだろ…
そう思った。
いや、実際痛かったのだろう。
だが男子生徒は…
「…くふ…ありがとうございます…」
微笑みながら、感謝の言葉を述べた。
その微笑みと言葉に、俺を含め全ての生徒がゾクリとしただろう。
「なん…なんだお前…」
さすがの五十嵐も少し引いている。
すると微笑みながら男子生徒が再び口を開いた。
「『自分がされて嫌なことは人にするな』…この言葉聞いたことありますよね?そして僕はこうも聞きました。『自分がされて嬉しいことは他人にもしなさい』と…。」
(まさか…)
「あぁっ…素晴らしい痛みだ…。僕はこの痛みが愛おしい!自分がされて嬉しいこと…今まさにあなたに教えてあげたかったんです!!そこの高松くんだけでは勿体無い!その悦びを与えている五十嵐くんにもこれを知ってほしい!だからあなたを殴ったのです!これの何が悪いのでしょうかっ!!?」
(こいつ…ドMじゃねぇか!!)
その日、俺は出会ってしまった…
間宮 優太郎に…
ー終ー




