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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第三章 お別れの女体研究同好会
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告白

 お酒を飲み始めて、一時間。日は完全に沈み、部屋の中は蛍光灯が照らす明かりのみ。部屋には、空の一升瓶が転がっており、それを抱かかえるように友里が横になっていた。肩が定期的に上下し、スースーと可愛い寝息を立てていた。

 テーブルに向かい合う人影が一組。一人は気まずそうに肩を落とし、もう一人は相手を一方的に攻め立てていた。


「大体ですねぇ! 貴方が全ての原因なんですよ! 貴方の乱闘が人足を遠ざけて、最後には会長を殴って止めを刺しました! 私もあいつをぶん殴りたかったのにぃ!」


 誠はテーブルを全力で叩きつける。口にしている言葉は滅裂で、いつものような冷静な口調は失われている。それもその筈、瞳は虚ろで、顔は上気し、異常なほど酒臭い。完全に酔っ払っていた。


「ああ、分かった。先輩の言い分はよーく分かった。だから、落ち着け。そして、早いとこ眠ってくれ!」


 健吾は神に祈る気持ちで、誠を宥めるがあまり効果は無い。何故なら、酔っ払った誠はこちらの言葉を聞いていない。いや、聞いてはいるが、聞き入れてくれない。


「今! 今何といいました!」


「悪い悪い! 悪気は無いんだよ! あんまり近づくな、酒くせぇ!」


「違う! そこじゃない! その前! 私の事を何て呼んだ!」


「先輩ぃ!」


「どうしてそんな呼び方なのよっ!」


 何? 何でそんな事を今頃攻められてるの?

 でも、先輩って呼ぶのは別に間違っている訳じゃないはず。一体、何がそんなに気に入らないのか。きっと、ただの酔っ払いの戯言に違いない。適当に付き合えば向こうも飽きるだろう。


「じゃあ、何て呼べばいいんだよ」


「私の事は名前で呼びなさい」


 何で、先輩を名前で呼ばなくちゃいけないんだ。大体、どうして向こうから名前で呼べと言うのか。まさか、あまりの友達の少なさを気にして、心を病んでしまったのだろうか。


 だから、後輩に名前を呼ばせようとしているのだろうか。そう考えると、何だか可哀想になってきた。


「うん、うん。分かったよ。わかったよ、鬼瓦」


 何故だか涙が出てきた。自分も利明がいなかったら、同じような病状になっていたのかと思うと、他人とは思えない。


「違うわぁ!」


 殴られた。しかも、グーで。見た目どおり、力が無かったお陰で大して痛くなくて助

かった。それにしても、普段は暴力を振るわないキャラを通していた誠がここまで変貌するとは、酒の力とは恐ろしい。


「下の名前よ。ま・こ・と。さあ、言ってみて」


「まこと」


「そうよ! やれば出来るじゃない」


 今度は頭をなでなでされた。もう意味が分からない。酔っ払いのテンションには付いていけない。誠は普段から酒を飲んでいるから、大丈夫だと思っていたが、流石に飲みすぎたようだ。


「ねぇ、健吾、暑くない?」


「別に……、ただの酒の飲みすぎだろ?」


「私は暑いのよ!」


 誠は妙なテンションで叫び出すと、上着を脱いでいく。男が脱いだとしても、全く楽しくない。この酔っ払いは何を考えているんだか。

 上着を脱いだだけでは飽き足らず、誠は下に着ていたシャツまで脱ぎ始める。


「おい、止めろ。男の裸なんて見たくな――」


 健吾は途中で言葉を止める。シャツを脱いだ誠は胸にさらしを巻いており、胸を隠している。さらしに押し潰された胸は、ささやかではあるもののふくらみを帯びているように見える。


「お、お、お、お、お、おま……、女だったのかよっ!」


 シャツを脱いで、上半身はサラシのみ。下半身はズボンを穿いているとはいえ、臍はバッチリ見えちゃったりなんかする。


「何よ、悪い?」


 虚ろな目で誠が睨んでくる。正直な話、とても悪い。特に心臓に悪い。

 どうして、今までそんな重大な事を隠していたのだろうか。この事実を友里は知っているのだろうか。疑問が疑問を呼ぶ展開になってきた。


「私は自分が男だと言った事は、一度もありませんが?」


「じょ、冗談だよな?」


 きっと、あの胸の膨らみは脂肪。実は太っていたという結末なのだろう。その割りに、手足は痩せ過ぎにに思えるほど細いのだが。


「じゃあ、確かめてみる?」


 誠は健吾の手を取ると、自分の胸に押し付ける。さらしで押し付けられているとはいえ、そこには男性にはない柔らかさを感じ取る事ができた。健吾は慌てて手を引っ込める。


「な、な、な、何してんだよ!」


「言ったじゃない、確かめる? って」


「分かった! 女である事は認めるから、服を着てくれ!」


 いくら、局部はさらしで守られているとはいえ、そんな姿でいられるのは正直色々と不味い。特に股間辺りとか。元々女っぽい可愛らしい顔つきだったから、どうしても股間が反応してしまう。


「……何よ。そんなに私の格好が気に入らないの?」


 誠はそういうと、最後の砦であったさらしを取り払ってしまう。押さえられていた乳房が解放されて、前に飛び出してくる。お世辞にも大きいとはいえないが、女性として十分な膨らみがあった。白くきめの細かい肌は美しいとさえ思える程であった。


「な、何してやがる! オレは男なんだぞ、そんなもん滅多に見せるもんじゃない!」


 健吾は誠に背を向けて、露出した胸を見ないように心がける。男として最低限の礼儀としての行動だった。だが、それが裏目に出るとは思いもよらなかった。


「……健吾は私の裸を見たくない?」



「なっ! そういう意味じゃねー。とにかく服着ろ! 話はそれからだ!」


 健吾は背中にいるであろう誠に声をかけるが、現状がどうなっているのか分からない。とにかく、誠からの言葉を待つしかなかった。

 じっと待っていると、背中に暖かくて柔らかい二つのモノが押し付けられて、体が硬直してしまう。いくら酔っ払っているとはいえ、そういうのは、不味い。矢理乃が持って来た例の箱を使うことに? いや、それより前に、友里もいるしこんな事は……。


「そうですか。健吾は私の事が嫌いなのですね」


 そんな事は一言も言ってないが、確かに好きではない。写真を押さえられて、脅迫されて、無理矢理同好会に参加させられたのだ。好意を抱くには無理がある。


「だけどね、私は好きだよ」

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