お酒入ります
「なら、次の話題は新スク水と旧スク水に関する考察を……」
再び、女体トークが開始されて出る幕がなくなってしまった。大体、スク水に新とか旧とかあんのかよと、心の中で突っ込んでいるとまたも部屋の扉が開かれる。
「どうやら先程の一品はお気に召さなかったようだな。ここは秘蔵の品であるこれを出さざるを得ない!」
負けず嫌いの矢理乃は、由美子のアルバムが好評だったのが不満だったらしく、次の品で勝負を挑んできた。
正座の矢理乃の隣には一升瓶が置かれていた。どこかで見た事のあるラベルが、健吾の不安をさらに煽る。
「ふふふ……私が大切に取っておいたこの『美少年』を貴方達に振舞おうじゃないの!」
矢理乃は横に置いてあった、『美少年』と書かれたラベルの貼ってある一升瓶を手に取ると、正面にドンと置く。矢理乃の顔は何処と無く真剣である様子から、相当な逸品なのだろう。勝負に勝つためなら、どんな損害を被っても気にしない女、それが矢理乃である。
「それでは、ごゆっくり」
退室していく矢理乃の表情は微妙に微笑んでいて、妙に不安になる。一升瓶なんて酒か醤油ぐらいしか入っていないだろうに、どうしてそんな物を置いていったのだろうか。健吾は一升瓶に近づいて、瓶を手に取る。
「あ、健吾それ持ってきて。一緒に飲みましょう」
友里はこの一升瓶の中身が何か知っているのだろう。飲むという事は飲み物か何かなのだろう。
テーブルに一升瓶を置くと友里は早速蓋を開ける。蓋を開けた瞬間、部屋中にお酒の臭いが充満してくる。
「うおっ! 酒臭っ! 何だよ酒かよ! これじゃあ飲めねぇな」
鼻を押さえる健吾とは反対に、友里と誠は一升瓶の口に鼻を近づけて香りを楽しんでいた。
「へぇ、なかなかいい香りじゃないの。これなら、味にも期待できそうね」
「そうですね。かなり美味しそうです」
二人の反応に納得のいかない健吾は、つい反論してしまう。
「おいおい、お前等未成年だろ。お酒は二十歳になってからだぜ」
「もしかして、健吾ってお酒飲めないのかしら?」
友里は若干引き気味で健吾を見つめる。どう見ても、こいつ白けるわという視線であった。だが、自分はおかしなことは言っていない。むしろ間違っているのはあなた達の方だ。オレは悪くねぇ!
「そもそも、何でお前等は酒が飲めるんだよ! おかしいだろ!」
「別に? 高校生ならお酒を嗜むでしょ?」
「私も父の会食に付き合うと食前酒が出るから、それで結構飲んでいます」
今更お酒を飲んだことはありませんとはいい出せない健吾は、顔を引きつらせながらも友里達に対抗する。
「ま、まぁ、そうだな。酒ぐらいどうという事は無い」
若干冷や汗を流しながら、二人の意見に賛同する。どうしようかと思いながらも、友里は各々のコップに酒を注いでいく。
そして、健吾の目の前には、お酒がなみなみと注がれた紙コップが鎮座していた。
「それじゃあ、折角だしもう一回乾杯しない?」
友里の提案に誠が頷く。健吾はじっと紙コップを見守っていたが、二人の視線に気付いて顔を上げて適当に頷く。
「かんぱ~い!」
「「乾杯!」」
今度は友里が音頭を取ると二回目の乾杯を行う。そして、健吾は一気に酒を仰ぐ。だが、想像を超える臭気が鼻を突きぬけ、喉がヒリヒリとする。
「くっ!」
何とか噴出すのは堪える事は出来たが、二度と飲みたいとは思えない味だった。両親や矢理乃はこんなものを美味しそうに飲んでいたというのだ。正直、味覚がおかしいとしか思えない。
「ぷはぁっ! ん~、結構美味しい。口当たりもいいし、飲みやすい!」
「秘蔵の逸品というのは、伊達ではないですね。この風味と喉越しはかなりの美味しさです」
二人はコップに注がれてあったお酒を、全て飲み干していた。見た感じイッキで。しかも、美味しいとか、正気の沙汰とは思えない。
「あれ? もしかして、健吾ちゃんの口には合わなかったのかしら?」
友里は口元を緩ませて、ニヤニヤと笑ってくる。その表情は完全にこちらを馬鹿にしていた。酒が飲めないのは、そんなに悪い事ことなのかよ。
健吾はそっぽを向いて、絡んでくる友里を無視する。その二人を横目に、誠は一人コップにお酒を注ぐと飲み干していく。




