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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第二章 揉め事
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健吾の理由

 確かに動揺しすぎている。だからといって、ここにいてそれから立ち直れるとは思えないが、聞きたい事があるのなら留まるしかない。


「そうかよ。聞きたいことって何だ」


 健吾はテーブルの前まで戻ってくると、おもむろに腰を下ろす。そして、その正面に誠が座る。胡坐を掻いている健吾とは違い、正座で座る誠は育ちの良さが窺える。


「剣道のことです」


 健吾は顔を顰める。

 あまり触れて欲しくない部分ではあるが、全国大会に出場していた事がばれている以上、聞きたい事があるのも無理はない。適当にあしらって満足させるのが一番いいだろう。


「先輩なら大体察しているだろ? 頭の悪いオレがわざわざあの進学校に行った理由ぐらい」


 誠はゆっくりと頷く。


「剣道部が無いからでしょう。そうでなければ、この高校を選ぶ理由が分かりません。全国大会出場者なら、強豪校が放っておく事も無いでしょう」


 やはりというか、何というか、こちらの行動は大概見抜かれている。今まで理由を訊ねなかった理由は、何だったのだろう。


「あまり気は進まないが、喋って減るもんじゃねーから教えてやるよ」


 健吾は深呼吸をしてから、ゆっくりと語り出した。


「オレが剣道を始めたのは、中学からだ。姉や妹に馬鹿にされないよう、強くなる為だ。最初は、あまり強くは無かったけど、相性が良かったのか、相手から一本取った時の気持ちよさが堪らなかった。もっと一本取りたいという一心で、部活に励んだ結果学校内ではオレに勝てる奴はいなくなった」


 昔を思い出すように語る健吾を、誠はじっと見つめている。何を考えているか分からないが、随分と興味を持たれているようだ。

 健吾は続きを語る。


「二年の夏には、市大会でも優勝して向かうところ敵無しだった。県大会でもそこそこの好成績を残した。三年になる頃には、誰にも負けなくなった。剣道に対して絶対的な自信があった」


 そこで一旦言葉を切る。そして、少し間を空けて再び語り始める。


「最後の夏には、県大会に優勝し、全国大会に出場した。その頃は負ける事など考えられ

なかった。自分は剣道の才能があって、負けることなどあり得ないと思っていた。その全国大会の一回戦。初撃の面を受けて一本を取られた。相手の動きに全く反応できなかった。完璧な一本だった。弁解の余地が無い程、実力差は明らかだった」


 苦い思い出だ。自分が思い上がっていた事を思い知らされた。全国の実力を甘く見ていた。本当に情けない。


「オレの対戦相手は二回戦で、簡単に一本を取られて敗退。頂上にいる人達の実力は底が知れないと思い知らされた。井の中の蛙が大海を知った気分だったよ」


 この事を人に話したのは初めてかもしれない。別段、誰にも聞かれなかったし、特別他人に言いふらすような事でもなかった。


「それで、剣道を諦めたのですか?」


「まぁ、な。これ以上剣道をやっても、無駄だと思い知らされた。もう、強くなるという

目的は十分に果たせたし、剣道から足を洗おうと思って剣道部の無い高校に進学した」


 もう、剣道の事など忘れてしまいたい。


「そうですか。ですが、健吾には未練があるように見えます」


 否定する気はない。確かに先程も竹刀に剣道の面を持ち出すとか、未練があると思われても仕方がない。でも、それが自分でも悔しかったりするから性質が悪い。


「簡単に忘れられるモノでもないでしょう。先程の治療の時、こっそりと掌を見せてもらいました。竹刀ダコができる程、熱心にやっていたものを、簡単に捨てられるものではないと思います」


 誠には変な所ばかり見られているような気がする。これは本格的に逃げ出せなくなるフラグなのではないかと、不安になる。


「まぁ、その為に今の高校に入ったんだ、いずれ忘れるさ。それより、パソコンを見せてもらってもいいか? 先輩が何に使ってるのか興味があってな」


 健吾は話を逸らすために、パソコンに話題を振る。


「別にいいですよ」


 思っていたよりあっさりと許可が下りた。どんな壁紙を使っているのか、どんなサイトを利用しているのか、興味は尽きない。

 健吾はパソコンに近づいて、電源を入れる。低い唸りと共にディスプレイに、メーカーの名前が表示される。これを見る限り、マザーボードは交換していないようだ。自作するならケースから変えるよなぁと思いつつ、起動するのを待つ。

 XPのロゴが表示されて、OSが起動されていく。XPを使っているのは古いからか? それとも使い慣れているからか? それとも、ゲームの為か? 正直、判断に困る。


 その後、ユーザーの選択も無くデスクトップが表示される。パスワードも無しとか、本当にこれが誠の使っているパソコンかと疑いたくなってくる。壁紙はXP標準のもののまま。これは色々な意味で、予想外すぎる。

 気を取り直して、全てのプログラムを見てみる。メーカー製のパソコン特有の無駄なソフトが満載で、本当に使っているのか疑わしい。


「なあ、このパソコン本当に使っているのか?」


「はい。主にメールや、インターネットを利用するために使っています」


 学生ならそんなものか。自分の家に置いてあるパソコンと用途はほぼ同じだ。

 インターネットを繋ぐため、ブラウザを起動しようとするが、最初から備わっているブラウザしかない。あまり拘りは無いのだろうか。一応、セキュリティソフトは入っているみたいだし、問題はないだろう。と思った矢先、警告のポップアップ。セキュリティソフトの使用期限が切れていた。


「なぁ、もしかして、パソコンにあまり詳しくない?」


「え? そ、そんな事は、ありませんよ?」


 明らかに動揺している。携帯電話はそれなりに使いこなしている感があったのに、何と言うギャップだろうか。何だか、女性と話しているような気分になってきた。あいつら、パソコンに疎い割りに携帯電話の機能はフルに使いこなしてやがる。あっちの方が、手間がかかると思うんだがな。


 健吾は姉や妹の事を思い出しながら、しみじみと思う。全ての女性がそうだとは言わないが、女性はパソコンに苦手意識を持っているような気がしてならない。

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