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17_民宿グルメ



(ぶり)の照り焼き……、ですよねこれ?」


 僕らと一緒に、食卓を囲む昭義さんとその奥さんの花代(はなよ)さんが。

 僕らがすごく身の柔らかい鰤を食べて、その味の良さにビックリしていると。


「ここらはね。遠洋の漁船が港に戻ってくるから。ブリもサバも。アジやイワシなんかも、いいのが回ってくるんよ」


 といって、ニコニコ笑ってる。


「サザエの磯焼きも。そろそろ食べられるよ、若い人たち」


 サザエを七輪の上の網で炙り焼きにしていた物に、そろそろ火が通ったと、僕らの取り皿に乗せてくれる花代さん。


「うっわ! これがサザエかぁ……。うちでは、父さんが貝類食べられないから。家ではあんまり貝類食べないし、初めてかも、私!」


 妙にはしゃいでいる水樹。いや、サザエっておいしいよって。言おうかと思ったけど、それは食べてのお楽しみかなと。

 余計なことが口から出る前に、僕は自分の言葉をひっこめた。


「うぅ~ん!! ウニィ~!! うっまいわコレ!!」


 サザエに取りかかっている水樹とは違って。何やら、スプーンでウニの身を掬って食べている光海さん。この人、ぜったい。未成年だけど、バレない様にお酒飲んでいるタイプだよな、とか。そんな事を思う僕だった。


「酢加減が、いいですねコレ」


 それで、僕が今何を食べているかというと。

 タコとキュウリとワカメの酢の物だったりする。

 酢の物なんだけど、小鉢に盛ってあって。上から柚子の香りのする甘味噌がかかっている。なんというかなんというか。

 グルメの品評家じゃない僕にだってわかる。こりゃすごいぞ。この民宿、食べ物がめっちゃおいしい!!


「おいよ、浅見君に、正時君。それに水樹ちゃんと言ったかな? 飯も炊けたぞ」


 そう言って、わざわざ昭義さんが運んできてくれた鉄釜を開けると。

 うっわ、超いい匂い!!

 生姜とキノコと磯の匂いが食卓に漂って、否が応にも食欲が滾る。


「アサリとキノコの炊き込みご飯だよ。たっぷり食べな」


 花代さんがそう言って。僕らの茶碗にしゃもじでご飯を盛ってくれる。


「ほら、細長く刻んだ青じそ。それに摺りゴマと刻み海苔だよ。炊き込みご飯に好きにかけて食べなよ」


 そう言って、薬味の乗った皿を渡してくれる花代さん。

 う~ん、これはまた。都会の外食店では味わえない、質朴で素朴、だけど贅沢な味。


「あ~、美味しいわコレ。私と昭義さんが知り合った時も、花代さんがこれ出してくれたなぁ……」


 炊き込みご飯に薬味をかけて。パクパクと箸を器用に使って食べながら、光海さんが何か感慨深げに言うのだった。


「そう言えば……。光海さんと昭義さんって、何で知り合ったんですか?」


 僕も炊き込みご飯を食べながら。昭義さんに聞いてみる。


「ふむ……。実はそれだが、浅見君はな。冬のさなかに、わしの漁船で寝袋にもぐって寝ていたところを。わしが朝に漁に出る前に、見つけたんだよ。もう三年前になるかな……」


 昭義さんがそういう所を見て、光海さんは。


「昭義さん、話してもいいけど……。別に面白い話じゃないんじゃないかな?」


 って感じに、ちょっと声を鋭くした。


「いいじゃないか、浅見君。この正時君も、水樹ちゃんも実にいい子だ。君の事を理解してもらうためには、話してもいいと思うぞ」


 そう言う風に言いながら、紙巻きたばこに火をつける昭義さん。


「う~ん。まあ、いいけどさ」


 光海さんはそう言って、炊き込みご飯にだし汁をかけて。お茶づけにして食べ始めた。


「まあな。実は浅見君は、母子家庭の育ちでね。その時、三年前か。その時には、浅見君の母の明奈(あきな)さんが、厄介な病気を患ってしまっていて。浅見君は、知恵を持たない中学生で。未成年だったので、今は母親の名義のカードや口座でやっている為替や株式の取引をする知恵もなく、それをしていなかった。それでな……、金に困って。大家に家を追っ払われて、女の子の身でホームレスをやっていたんだよ」


 え? っと驚いた顔をする水樹。


「そんなこと……、本当ですか? 浅見先輩」


 なんだろう? ちょっと自嘲気味だけど、決して挫けたりいじけてはいない表情で、声を張って光海さんは答えた。


「そうよ。昭義さんは嘘を吐くような人じゃない。言っていることは全部本当の事。私は、今は。お金を持っているけれど。昔は惨めな物だったわ」


 僕が光海さんの目を覗き込むと。

 そこには、怒りなのか哀しみなのか。

 それとも、大いなる挑戦の光なのか。眩いほどの、強い意志の光が宿っていて。


 僕は少し、いや大分。

 気圧される形になったんだ。


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