クリスマスでした。
誕生日プレゼントのお返しをあげたら、桜さんに泣きそうな程喜ばれた。そんなに喜ばれるとは……こちらも嬉しくなります。しかも美少女ですからね。男ならば誰でもハッとして振り返りそうな程ですから。そして穏やかで優しいときたものです。これは嫁が完璧すぎて生きるのがつらくなるレベルですね。
翼へのお返しは顔を引き攣らせられました。まぁ、すごい分厚い資料渡しましたからね。これであなたも優秀な人間に!っていうか、翼は元から優秀ですけどね。はっ……勉強ばっかりで音楽がおろそかになってはいけませんね。これは盲点でした。今度から程ほどにしておこう。
晴翔は……なんかすごく微妙な顔をしていた。なんとも言えないような、そんな顔で。まぁ、こちらはどうでもいいですか。
「透、これ……」
生徒会室に入って早々に会長に袋を手渡される。その包装用紙は、先日遊びに行った時、雑貨屋で包んで貰った袋だった。前に突き出されて、おずおずと受け取る。
しかし、いや待て、と首を傾げる。
「えと、会長、なんですか?これ……」
「なんだ、その、問題集だけじゃ味気ないと思って、それもプレゼントしようと思ってな」
「ええっ……!?」
え!?気になる女の子へのプレゼントじゃなかったんですか!?けっこう可愛い感じの店でしたし、てっきり会長が好きだと思っている子のものだと。というか、自分宛てのモノだと気付く訳がない。すでにプレゼントも買ってもらった後だったのだから。
「いや、良いですよ!そんな気を遣わなくても」
「……俺はいらないから、貰ってくれないと捨てるが」
なんてもったいないことを!
まるでセレブみたいなこといって!
なんだったら気になる女の子にでも……いやまて、他の女の子の為に買ったものをいらないからって手渡されるのはいやですね。正直、真実を知ったら幻滅するレベルです。
なら、仕方ない、のでしょうか。
自分の手元にある可愛い包みを見て、唸る。
「う、ううん……ええと、じゃあ私も何か……」
「いや、それだとキリがないだろう。いつも世話になっている礼も含めているんだ、貰ってくれ」
「え、え、と……じゃあ、すみません。有難く頂きますね」
私がまたお返しをすると、会長ならまた返って来そうで怖い。
このイケメンは本当にやりかねない。2時間前待機とかするくらいですからね……。申し訳ない気がするけれど、貰っておきましょう。このご恩は忘れませんよ。
「開けてみても?」
「ああ」
会長にもらったのは、スノードームだった。
ラメが中に入ってて、キラキラしている。なんとも、可愛いですね。昔はこういうの持ってましたっけね。いやはや、懐かしいですね。
しかしまぁ随分と乙女チックなものを……まぁ、身に着けるものではないので、部屋に飾って置けますから良いですけど。会長が私に対してどのような印象を持っているか、若干気になってくるプレゼントです……。
テストも終わって、もうすぐ冬休みがくる。夏休みに比べると随分と短い休みですが、それでも遊びたい盛りの高校生には嬉しいものです。それに、冬休み前にクリスマスがきますものね。
恋人のいる人達はとても楽しそうに計画を立て、恋人がいない者はいないもの同士で打ち上げをするらしい。クリスマスがなんだ!聖夜がなんだ!とジュースを飲んで騒ぐみたいです。
私は呼ばれなかったんですけど、どういう事でしょう。ハブられているんでしょうか。私だって騒ぎたいです。リア充爆発しろ。
まぁ、誘われてもその日は生徒会の仕事が入っているんですけど。今年は最後まで色気がなかったですね!青春のせの字もない。ああ、何もしらぬ中学時代に戻りたい……。
まだあの時の方が青春してたよ……。
クリスマスイブの日。休日がクリスマスイブという事で、街は賑わっている。恋人たちが頬を染めて囁き合い、手を繋いでデート。
けっ。
あ、ちょっと本音が。
いーいーですよねー。私なんて、前世も含めて振られてばっかですよ。毎年毎年、この時期はちょい辛いもんがあります。しかも年々胃の痛みが増す様な気がしてました。30こえたら死にたくなってきましたっけ、ふふふ。
ですが!今の私は高校生ですからね!中身とか残念ですけど、ライバルキャラで見た目も良いですからね!……いや、見た目も残念なのか、イケメンって認識されてますもんね。どうやら、今回の人生も色々ダメだったみたいですよ……親不孝な私を許して下さい。
だいたいね、クリスマスってもっと神聖なものなんですよ。それを恋人イベントだなんだって、恥ずかしくないんですか。企業の戦略にのせられているんですよ!
悔しいから言ってる訳じゃないんですからね!勘違いしないでくださいよね!!
……あれ、なんか死にたくなってきました。
いいえ、まだあきらめちゃいけない。今どき晩婚化なんて珍しくもありませんし、30……いや、40まで諦めたりしないんですから。今度こそ……今度こそ、え、でも私ライバルキャラでしたね。いじめて転校させられて、その先の人生果たして明るいのだろうか。ああ、どうすればいいんですか。
賑わっている街を歩きながら、勝手に鬱になる。なんせ前世からずっとそういうものと縁がなかったものですからね。気分が落ち込みもします。
街には煌びやかなイルミネーションが目に優しくない。まだ今は昼だからイイですけどね。生徒会がなかったら家で引きこもっているところです。なんでこんな日に出かけにゃならんのですか。今なら会長を軽く恨めそうです。
「透?」
「……はる、と」
ドキッとして肩が跳ねた。まるで不審者に声をかけられたような反応をしてしまい、晴翔が怪訝な顔をしている。すみません、ちょっと過剰に反応してしまいました。振られてるんで、ちょっと晴翔には会いたくなかったです。でも今日は仕方ないですね、生徒会の仕事ですもの。
「どこいってるんだ?」
「どこって……学校ですよ?生徒会の仕事……って晴翔に伝えられてなかったんですか?」
会長が、後で伝えておくって言っていたのに、忘れてたんですかね。うっかりさんです。相変わらずドジっ子です。
晴翔は眉を顰めた後……ニヤリと片方の唇だけあげて笑った。実に悪そうな笑顔です。
「……いや?忘れてた。さっきまで。じゃあ行こうか」
「え、ええ……」
忘れていたんですか、ね?なんか違うような気がするんですけど。まぁ、別にどっちでも構いませんけれど。
はあ、と息を吐きだすと、白く染まる。いやぁ、寒いですね。もうすぐ年越し、そして、主人公が入学してくる年です。今からドキドキと心臓が変な音を立てている。胸に手をあてて、はああああっと深い溜息を吐きだした。
「どうした?」
振り返って心配そうに綺麗な形の眉を寄せる晴翔。彼の顔を見て、もっと溜息を吐きたくなった。ぐっと堪えて、苦笑いを浮かべておこう。
「なんでもないです」
まだ、何もないですよ。まだ、ね。
これからどうなるんでしょうね……。
「なんで火媛がここにいる」
もの凄く不機嫌そうな顔をした会長に晴翔が爽やかな笑みを向ける。
「生徒会の集まり、なんだろ?」
晴翔のその言葉に苦虫を噛み潰した顔をする会長。
この2人のやりとりはいつも通りなので、とりあえず資料を読む事にしよう。
石油ストーブで温められた室内はなんとも眠気を誘う。さっきまで寒い所にいたら、なおさら。いや、もう失態はおかしません。頑張ります。
黙々と仕事した後、顔を上げて息を吐く。
「と、ちょっと換気しましょうか」
「ん、ああ、そうだな」
こまめに換気はしないとですね。ついでにコーヒー入れて一息いれますか。窓を開けると、外の冷たい風が入り込んできて、鳥肌が。う、さむっ……でも換気はしないといけませんから、仕方ないですね。空気も十分入れ替わった所で、窓をしめる。
さて、コーヒーでも入れますか。
仕事をしていたら、少し空が暗くなってきた。
冬はやはり日の入りがはやいですよね。
「暗くなってきましたね……」
「そうだな、そろそろ切り上げるか」
「ですね」
書類を綺麗にまとめて、いつもの所へと片づける。晴翔が凝り固まった体のほぐすために伸びをしている。会長も文字を書きまくった手を揉んでいる。なんていうか、ここだけサラリーマン集めたみたいですね。もう高校生じゃないみたいです……。私とか特におばさんですし。
荷物をまとめて、下駄箱までくる。
靴を履きかえて外にでると、冷たい風にさらされた。いやぁ、寒いですね……。イルミネーションみてるともっと寒くなるような気がします。
上を向いていると、ふわりと何かが降り落ちて来た。
「雪……っ」
なんてこった!ホワイトクリスマスだとぉおおおっ!
こんなの恋人が盛り上がっちゃうじゃん!
綺麗……とかって恋人が見とれて、そんで男がお前の方が綺麗とか言うんでしょう!
ハッ、落ち着こう。冷静になるのよ。イライラしちゃいけない。この余裕のなさが恋人が出来ない理由っていってたし。余裕をもっていきましょう。まぁ、そんな事言ってのんびり構えてたらあっという間に30突破しますけどね。はは……もういいんですよ。
「綺麗だな……」
と呟いたのは会長だ。
うん、綺麗デスネ。雪が舞い散る姿を眺める彫刻のようなイケメン。貴方が最も綺麗ですよ、なんて言わないですよ。むしろセリフは逆ですし。会長、ロマンチストなんでしょうか。
「さみ……」
晴翔は寒いのが苦手なので、雪など気にせずに震えている。
さて、帰りましょうか。本降りになる前に帰らないと濡れて風邪引いちゃいます。




