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買い物にいきました。

 今日は会長と出掛ける日だ。寒くなってきているので、上から薄手のコートを羽織る。ズボンにブーツで、寒さ対策も万全。そして男装も万全だ。もう手慣れたものだ。こんな事に馴れたくはなかった。

 溜息を吐いて、待ち合わせ場所に向かう。約束1時間前に行く。いや、正確には1時間前と言って良いのだろうか?会長には私が今から行く時間より1時間遅い時間を伝えてある。

 会長、いっつも早くきてますからね……。遅く伝えないとどんどん早い時間になる恐怖。もっとまともな時間に来てくださいよ。嘘までついて遅らせないといけなくなるのは勘弁して欲しいところ。

 待ち合わせ場所には、誰も来ていなかった。あれ、珍しいですね。会長来てないんですか……なんかちょっと勝った気分です。

 空も高くなって、寒いですね。じっとしてたら流石に寒くなってきました。もうちょっと厚いコートにすればよかったでしょうかね……。そうだ、ちょっと散歩しましょう。そうしたら体もあったまりますよね。

 そう考えて、少し歩く事にした。歩いていると、やはりあったまりますね。丁度良いかんじです。人通りは、割と少ない方だ。殆どの人間に振り返られている気がするが、自意識過剰だろう。

 5分程歩いて、そろそろ戻ろうか……と思った時。女の子が男2人に絡まれているのを発見した。あれ、なんかデジャヴ……。文化祭の時もありましたねぇ……っていうか、あれ?あの女の子どこかで見たような……。どこでしたっけ……ううん……いやだめだ、思い出せない。

 しばらく悩んでいる間に、女の子の彼氏らしき男性が来て男達を追い払った。なんともホストっぽい男で、ちゃらちゃらしている。でも悔しい事に凄くイケメンだ。これはあの女の子も惚れちゃうでしょうね。

 ……あれっ?おっかしいですね。なんかあの男性も見た事ある気がする。もやもやします……疲れてるのかな。デジャヴって疲れている時に出るって言いますものね。

 それでも何となく気になってじっと2人を見つめていたら、突然視界が暗くなった。後ろから誰かに目を塞がれたみたいだ。


「!?」

「何見てるんだ?」


 痴漢か!?と思って慌てた心が急に落ち着く。その声は会長のものだったからだ。ふしくれだった手に触れて、ゆっくりとどける。後ろに振り向くと、険しく眉を寄せたお綺麗なお顔が。その視線は先程私が見ていた方向を向いている。

 どける為に持っていた手を離そうと思ったのだが、逆に握られてしまう。

 へ。なんで握られてるの。手と顔を交互に見て困惑中。会長は相変わらず例の2人組を眺めている。取りあえず握られた手は放置して、会長に声をかける。


「すみません、探させてしまったようで」

「そんなことはない。それに、時間もまだだしな」


 確かに、会長に伝えてある時間にはまだ余裕がある。

 ホスト風の男と女の子は知り合いではなかったのか、その場で解散してしまった。ホスト男はこっちの方に向かって来て、通り過ぎる際、会長がガン見していた。

 ちゃらいホスト男と会長を同時に視界に収めることで、乙女ゲームのパッケージを思い出す。

 そうだ!あの人、攻略対象者じゃないですか?緑色の髪で、ホストの人。確か先生の攻略対象者ですよね。ホストっぽいのに性格はかなり真面目な方なんですよね。そういえばまだ学校にいないんですね。あれ、じゃあ来年に主人公と同じように入学してくるんでしょうか。


「透」

「あ、はい」


 攻略対象者の背中をずっと眺めてぼうっとしていたら、僅かにいらだったような

会長の声で呼び戻される。


「すみません、ぼんやりしてしまって」

「……いや」


 ゆるく首を振って、眉を下げている。

 その間、ずっと手は握られっぱなしだ。

 申し訳ないですがそろそろ離して頂きたい。


「あの、会長、手を」

「……え?あ、うわっ!す、すまない」


 無意識に持っていたようで、慌てて手を離す。赤くなってしまった顔を手で半分おおって隠している。相変わらず照れ屋さんで。こっちまで照れてしまうじゃないですか。

 そんな行動ばかりしてると意中の相手も勘違いしますよ?まぁ今は完全に男になり切り中ですから良い……いや、より変な誤解を招かないか?え、えーと、、まぁきっと誰にも見られてないでしょう!うん。


「え、と。それじゃあ、行きましょうか」

「ああ……」


 いつまでも突っ立っていても埒が明かないので、場所を移動しましょう。

 はぁ、まさかこんな所で攻略対象者に会えるとは。偶然って凄いですね。緑色の髪の毛だから、木のつく攻略対象者だったかな?たしか、ええと、普通っぽい名前の、高木でしたっけ。あれ?木村だったかな?ううん、名前までは覚えてないな。そこまで好きなキャラでもありませんでしたし。


「プレゼントは何が良い?」


 会長に声をかけられて顔を上げる。相変わらずお綺麗な顔ですね。心臓に悪いので、真っ直ぐにみるのはやめておこう。僅かに視線をそらしつつ、頷く。


「ええ、問題集でも買って貰おうと思ってます」

「もん、だい、しゅう、か……そんなので、いいのか?」


「ええ、結構な値段ですし、覚悟しておいてくださいね?ふふ」

「……まぁ、ああ、うん……それがいいならいいが……」


 会長はなんとも歯切れが悪い。もしや、なにかすでに買っているのだろうか。だとしたら、それを頂くという形でもいいのですけど。


「ええと、不都合があるならやめますが」

「いや、大丈夫だ。それでいこう」


 目が泳いでいるが、大丈夫だろうか。心配で、少しだけ俯いてしまった顔を覗き込む。綺麗な月色の瞳がこちらを向いて、笑む。


「大丈夫だ」

「えと……そう、ですか」


 その表情があまりに煌びやかだったので、言葉に詰まりつつ、目を逸らす。ああ、こわい。なんでそんな美しいんでしょうね。さっきの木のつく攻略対象者もそうですけど、むやみに恰好良過ぎなんですよ。ドキッとしますよね。芸能人に会ったら同じような気持ちになるんだろうな。でも、前世の時よりは落ち着いて対応出来るだろうな。毎日のように会っていますから、会長の顔は随分と慣れてきましたし。晴翔に告白する前は晴翔というイケメンと幼馴染なんてやってましたからね。イケメン耐性なら、ありますよ!


「そうだ。会長は何がいいですか?……と、そうだ。それ以前に会長の誕生日をお聞きしてもよろしいですか?」

「6月22日だ」


 ああ……もう随分と前の話じゃないですか。しかし、まぁその時は誕生日なんて考え付きもしませんでしたが。こんなに仲良くさせて頂くなんて思ってもみませんでしたからね。


「それと、俺も参考書でいい」

「え?でも……別に私と同じようなものでなくても良いんですよ?」


「いいんだ、それと、何度も言うが名前で呼べ」

「あ、すみません。蓮先輩」


 ああ、いっつも忘れますね。すみません。


 結局、会長も問題集を買う事に。

 2人で本屋さんに寄るだけだったので、さほど時間はかかっていない。


「このあとどうする?」

「えっと、はやいですが解散でも良いですか?」


「何か用事でもあるのか?」

「用事というか、誕生日にプレゼントを沢山いただいたので、そのお返しを買いに行こうかと思っているんです」


「それなら、俺もついていく」

「え?ですが、完全に私用なんですけど、大丈夫ですか?」


「ああ、かまわない」


 なんだか嬉しそうにしてますけど、何も楽しい事はないですよ?本当にプレゼント選ぶだけなんですから。男性って普通、女性のショッピングに付き合うとか嫌がると思ってたんですけど。……会長は私が女だって分かっているんでしょうか。

 そういえば、会長の好きな人はどうなってるんでしょうね。女と出掛けてて、もし目撃されて勘違いでもされたら……。そこまで考えて、自分の今の恰好を思い出す。

 うん、大丈夫ですね!

 ……うん。


 可愛い感じの服屋さんや雑貨屋を見て回る事にした。もう冬なので、小物も暖かそうなものが置いてあったりする。マフラーとか、手袋とか。そういうものにしましょうかね。白とか、薄い茶色、あとは薄いピンクも似合いそうですね。ふわっとした生地がなんか桜さんに似合いそう。ぬいぐるみは流石に子供っぽすぎますしね。なんか、落ち着いた方ですからね。文房具貰ったんですから、文房具を選んでも良いですね。ううん、でも……桜さんはすでに可愛いシャーペン持ってましたしね。

 私が悩んでいる間、会長はずっと私の後ろをついてきている。女性客が多い雑貨屋だから落ち着かないのか。いや?でも前カフェ行った時は落ち着いてたのにな。

 ううん、嫌ならば帰ってもいいんですけどね……。

 しばらく悩んだあと、手袋を購入した。桜さんと同じ髪色のふあっふあした手袋だ。会長も何か購入したらしい。ものっすごく注目されてましたけどね。でも仕方ないですものね。会長、あの店に似合わないですもん。まぁ、私も男装してるからすっごくみられてましたけどね!!凄い注目されてましたよ、ええ。

 あと、お菓子を翼に買ってあげましょうか。それとプリントをたくさん作りましょう。翼がしょんぼりして尻尾が下がるのが今から想像に容易い。いや待て、彼に尻尾はない。幻覚だ、しっかりするんだ。



 お昼になったので、ファミリーレストランに入る。並んでいる人がいたので、名前を書いて立って待つことにした。日曜のお昼なんてどこも満席ですしね。

 それにしても、やっぱり子供づれの家族が多いですね。乙女ゲームの世界でも同じなのか。

 ぼうっと店内を眺めていると、足に軽い衝撃がはしる。


「いたっ……!ふえ……」


 後ろで声のした足元の方に視線を向けると、小学校低学年くらいの女の子が地面にお尻をついていた。どうやら前を見ずに走っていたらしく、私にぶつかって転んでしまったらしい。

 転んだ時の痛みで今にも泣いてしまいそうだ。私はしゃがみこんで、女の子の顔を覗き込む。


「ごめんね、痛かった?大丈夫?」

「うぇっ…………っ!?」


 ぎょっとしたように私の顔を見て石のように固まっている。じっと私の顔を見つめて、泣く事も忘れてしまったようだ。


「え、と……だ、大丈夫。なのかな?」

「もー!どこ走ってるの!……すみません、ぶつかったみたいで…………っ!?」


 流石親子というべきなのか、女の子と同じリアクションをしている女性。似ているので、もしかいなくても親子だろう。

 私は訳が分からず親娘を交互に見つめる。


「あの、すみません。ぶつかっちゃったみたいで、その」

「「なんてイケメン!」」


 親娘の声が被る。

 両者の頬が赤く染まって、母親の方はやたらわたわたしている。


「えー!いえいえー!いいんですよー!うちのバカがぶつかってっちゃったみたいですからっ!ね?けがもしてないですしっ」

「いたっ!ままいたいっ!もうっ!」


 バシッバシッと娘の背中を叩きながら私に話しかける。


「……大丈夫か?」


 会長が隣にいるのをすっかり忘れてました。声をかけられてようやく思い出せましたよ。

 親娘もその時ようやく会長の存在に気付いたようだ。会長の顔を見た瞬間、また時がとまったように動かなくなった。まったく同じ表情をするものですから、思わず笑ってしまいそうになる。分かります分かります、びっくりしますよね。すごく綺麗ですものね。

 気持ちが物凄く分かるので、頷く。最近は雰囲気が和らいできているし、眩しさに拍車をかけてますから。


「「……いけめん」」


 親娘共に私達2人の顔を見て何かを悟ったようだ。2人顔を見合わせて頷いた。


「いや、おじゃましてしまってすいませーん。怪我してないのでもう大丈夫です!失礼しましたっ」

「失礼しましたっ」


「あ、えっと……あ……」


 ええと……大丈夫なのでしょうか?まるで逃げるように立ち去られる。


「なんだったんだ……?」

「えと、さぁ……?」


 怪我がなければいいんですけど……。ううん、ですが元気に走っていましたし、大丈夫でしょう、たぶん。頭も打ってませんでしたし、私は動いてませんでしたからね。

 しばらく待っていると、「月島様」と名前を呼ばれて席へと案内される。店員さんガン見です。まぁ、いつもの事です。可愛らしいカフェの時よりはマシなので、全然気にならないです。さも男同士の恋人を見る目でしたからね、あの時は。今回はイケメンの友達が2人で食事に来てるって目ですよ、やりましたね。……うん。

 ドリンクバーを2つ注文して、会長はチーズ入りハンバーグ、私はさばの味噌煮を注文した。それと、食後にパンケーキと抹茶パフェ。もちろんいつものように2人で分け合います。

 食事が来るまでの間、生徒会の仕事の話をする。相変わらず色気のないはなしだ。まぁいいんですけどね。

 注文した食事が届いて、黙々と食べる。

 ハンバーグからチーズがとろっとでてきて、とても美味しそうだ。

 私が見ている事に気付いた会長が、実に眩しい笑顔を向けてきた。


「いるか?」

「ええ……すこしだけ」


 いや、お恥ずかしいです。全部とかは食べきれないけれど、ちょこっとだけシェアしたくなるんですよね。しかもいつも会長とは分け合ってますからね。癖になってくてるんでしょうか。


「ん」


 フォークにハンバーグのせて、差し出してくる。勿論そのフォークは会長のもので、所謂あーんというヤツだ。会長の顔を見ると、どこかからかい交じりに笑んでいる。が、やはり恥ずかしいのか、僅かに目元が赤くなっていた。

何が会長を駆り立てるのだろう。いつも思いますけど、はずかしいならやらなければいいのに。

 落ちないよう手を下に添えつつ、パクリとハンバーグを口にする。一瞬、会長の手がビクッと震えた気がした。

 口の中にジューシーな肉の味とチーズの濃厚な味が広がる。うん、やっぱりおいしいですね。

 私は少しだけさばを箸で切り分けて、会長に差し出す。


「蓮先輩もいかがですか?なかなかおいしいですよ」

「え、あ……」


 先程とは比べ物にならない程に顔が真っ赤になっている。どうですか、あーんは。はずかしいでしょう、ふふふ。仕返ししてやりました。勝った!


 ガタッ!


 誰かが勢いよく立ち上がる音が聞こえて、驚いてそちらに目を向ける。すると、帽子を目深に被った青年がこっちを見……ってあれ晴翔じゃないですか。なんでここに。

 立ち上がった晴翔を抑え込もうとしているのは翼だ。猫の耳つきのフードとかなにそれあざといんですけど。2人ともイケメンオーラはんぱないな。凄く注目を浴びている。いや、まぁ大きな音をたてて立ち上がったんですから、誰でも見ますよね。


「はぁ……あいつ、ついてきてたのか……」

「……いや、偶然かもしれませんよ?」


「それはないだろ、だってあいつ……いや、なんでもない」

「……?」


 知り合いを見つけたので、何となく同席する事になった。私の隣には翼、前には会長、会長の隣が晴翔だ。


「初めまして、会長さん!俺、金城翼っていいます。晴翔と透の友達なんです!会長さんは有名だから自己紹介とか大丈夫ですよ。知ってますし」

「そうか……あ、いや。俺も君の事は知っている。有名なバンドしているそうじゃないか。若いのに、とても人気があるそうで、感心していたんだ」


 会長って翼の事知ってたんですねぇ……って会長、なんかその言い方じじいくさいです。私も人の事言えませんが。

 翼も予想外だったみたいで、目を丸くしている。そして、ふにゃって感じに笑顔を作る。全力で「嬉しい」って顔をしていて、めっちゃ撫でたい。


「え、うわ、へへ……なんか照れますね!知ってたとか、そんな有名でもないんですけど、有難うございます!」

「あ、ああ……」


 会長が机の下で手を押さえている。会長も撫でたいんだな、分かります。そういう会話をしていたら、食後のデザートが運ばれて来た。

 なので、私が先に半分パフェを、会長はパンケーキを食べる。半分するのはもういつものことだ。


「すげー負けてる……うっ!?」


 何か小さく呟いた翼が脇腹を押さえて呻いている。


「どうかされたんですか」

「い、いや、なんでもないよ……もうちょっと手加減しろって」

「うるさい」


 後半は晴翔と翼で仲良く小声でしゃべっているので、聞こえなかった。この2人は本当に仲が良いですね。会長と晴翔とはまた違った仲良しというか。休日も2人で遊んでるんですね。ゲーセンとか行ってるんでしょうか。

 デザートも食べ終わったところで、お茶を飲みながら一服する。


「この後はどうしましょうか」


 特に予定も決めてない訳ですけど。あ、翼に誕生日プレゼントのお返ししましょうかね。手荷物が減る。とても良い事です。と、そこで思い出した。晴翔にネックレスプレゼントされてた事を。素で忘れてしまっていた。あれは本当になんなのでしょう。どう反応して、どんなモノを返せばいいのでしょう。何も買ってない今の状態で翼だけ返すのも気が引けますね……あとでにしましょう。


「どうせあったんだから!4人で回らない?」


 と提案したのは翼だ。


「……透はどうする?」


 自分の意見は述べず、私へと話を振る会長。

 晴翔は涼しい顔でコーラを飲んでいる。何考えてんでしょうね。


「ううん……特に予定がある訳じゃないので……会長が嫌なら別行動でもいいんですけど」

「それはもちろん嫌、ごほん……いいぞ。金城ともう少し話がしたいしな」


 翼と……あ、そうか。忘れ去っていたが、会長と話せる人間というのは少ないんでしたね。やはり攻略対象者だからなのか、翼も普通に話せるみたい。それが嬉しいのだろう。なるほど……。


「じゃあ4人で少しぶらつきますか」



 ということで、少し気まずいメンツとぶらつく事になった。翼が積極的に会長に声をかけて、楽しそうにしている。そんな2人の会話を後ろでそっと見守る。

 晴翔が隣でむすっとしたまま、黙ってついていっている。帽子から燃えるような赤い髪がちらりとこぼれていて、なんともいろっぽい。道を歩いているだけなのに、注目度がひどい。全員眩しいイケメンですもんね……。私も含まれてますけど。


「あーっと!会長さん!ちょっとちょっと来て!」


 と、何やらわざとらしく大声をだして会長の腕を掴んでを引っ張る翼。まるで「あっUFO」的なノリを感じた。


「あの、翼?」

「あ、2人はここでちょっと待ってて!すぐ戻って来るし!」


 あっというまに会長を連れて歩き去ってしまう翼。

 気まずい代表・晴翔と2人きりにされる。なんだか急に心細くなる。置いて行かないでくださいよ……。

 とりあえず、突っ立っているのもあれなので、ベンチへと座る事にした。その間ずっと黙っている……き、気まずい。すごく気まずいので、生徒会の仕事についての話をふる。あとは、翼と休日でも遊んでるんですね、とか、なんとか。すぐに沈黙が落ちますけど。

 妙に緊張しますね……。

 ……ええい!この際聞いてみますよ。もう思い出してからずっと気になっているんです。


「あの……晴翔?」

「な、なん……だ?」


 晴翔の方も強張った顔をしている。すごく緊張した空気が。


「あれ、なんでしょうか」

「あれ……?」


 私の言葉に首を傾げる。

 こほんと咳払いして、口を開く。


「あの、ネックレス、です。なんで、あれなんですか?なぜあれを」

「何故って……似合いそう、だったから」


 ……今までそんなもの送ったことないくせに。あんなの貰っても、私は使いたくないんですけど。振られた相手にプレゼントされたモノを身に着けるほど吹っ切れたわけでもないんですよ。心狭いのですか?私が変なのですか?


「ただいまっ」

「あ……おかえりなさい」


 満足げな顔をした翼と、少し顔を赤らめた会長が帰って来た。親し気にしているので、随分と仲良くなったようですね。

 会長と翼が合流し、再びうろうろする。今度は男物の服屋さんに入る事にした。このメンツだとこっちの方が違和感ないですね。けれど、キラキラしているイケメンばかりで、男の店員さんが恐れ戦いている。まるでモデルの撮影の為に来ている……みたいな感じですもんね、彼ら。はいはい、イケメンイケメン。

 しかしこの店、カッコいい服多いですね。ううん、まぁ、翼っぽくはないですけど。どちらかというと会長と晴翔の方が似合う感じの店だ。

 3人が店を回って服を見ているのを眺めてぼんやりする。晴翔が服を取り出して体にあてている。晴翔好みのシャツですね。でも買う気はないのか、元に戻している。

 ん……買わないんですか。


「透」

「はい?」


「どっちのほうが似合うと思う?」


 後ろに振り返ると、会長の手には白い上着と黒い上着が。


「ええと、そうですね。黒い方が会長の髪色とも合ってますし、ちょっと金色入ってますので、目の色とも合ってて似合うと思いますよ」

「そうか」


 満足そうに頷いて、白い上着を元の位置に戻しに行く。それで、黒い服をもってレジに向かう。

 それを見届けてから、私は足を動かして、先程晴翔が見ていた服を手にする。

 はぁ、これをお返しにしますか。適当過ぎる気もしますが、まぁいいでしょう。ネックレスとかプレゼントしないで欲しかったなぁ。もっと、翼みたいにお菓子とか、会長のように参考書でもいいですけど。なんでネックレスかな……嫌がらせなのだろうか。……まぁいっか、これお返しに渡したらもう忘れよう。

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