文化祭をしました。
「え?なんですか」
「だから、ミスコンだ」
私のクラスに王様コスプレで登場した会長。いえ、劇中だと確か王子役のはずですから、これは王子コスプレのはずなんですけれどね。
でも威厳というか、そういう雰囲気が漂っていて、王子には見えない。
「出場者が少ないから役員が困っているそうだ。俺は男の部の方に出る」
「えぇと、そんな事急に言われましても、ですね……」
確かに文化祭中には恰好良い男子を決めようコンテストと、好みの女の子はどの子?というコンテストがある。まとめてミスコンと呼んでいる。毎年微妙に呼び方が変わるらしい、まぁそこはどうでも良いですが。
どうやら、そのミスコンに出場して欲しいと依頼が来たらしい。ミスコンは明日の午前中にお披露目をして、午後までに集計してトップを決める。
会長は出る事を決めたらしい。もう、これはトップの座は彼で決まりですね。彼以外でトップになれる男などそうそういないだろう。いるとすれば他の攻略対象者くらいか……。
しかし、私にも出場依頼とは、随分と出る人が少ないのでしょうか?まぁ、男性の部に出てくれと言われなかっただけマシですけれど。私が出ても無残な結果が目に見えている。
「私にも、見回りとかありますからね……」
「その点については考慮してある」
そうなのですか、仕事がはやいですね。
ううん、あまり出たくはないのですけれどねぇ……。
「仕方ないですね、では出ましょう」
「助かる」
会長はホッとして少し微笑んだ。その微笑が、驚くほど目が瞑れそうになる。チラッと店内を見ると、皆ハッとしたように会長を見つめている。勿論、殆どの女の子の顔が赤い。
先程助けた佐伯さんのお友達も、楽しそうに会長を見つめている。めったに出会えませんものね、こんな彫刻のような人。
「では、その旨を役員に伝えれば良いですか?」
「ああ、頼む」
そう伝えて、私は教室に戻ろうとした。が、服の袖を掴まれた。振り返ると、会長がもの言いたげな顔でこちらを見ている。
……ん?まだ何か用件があるのでしょうか。
「その、あの……だな」
「……はい」
しばらく目を泳がせながら「あの、その」言っていたが、根気強く待つ。……というか、早くして下さい。結構混んでて忙しいのが見えませんかね?
ちょっといらぁっとしかけた時、会長が意を決して口を開く。
「その、衣装、似合ってる……綺麗だ」
「……は、はぁ……」
少し顔を赤らめて、目が合うと逸らされた。……それだけ、ですか?何か用件があった訳ではないのでしょうか……。会長も律儀な人ですね、そんなお世辞言わなくてもいいんですけど。
というか、それ言うのにこんなに時間かかったんですか?
照れるなら、言わなくてもいいんですけど……。
うん、最後の綺麗だ、は反応に困りますね。会長の方が余程綺麗ですからね。これは、私も何か返さないといけないでしょう。
「会長も、その衣装とても似合っていらっしゃいますよ?会長の良い所が引き出されていて、恰好良いと思います」
「かっ……!?」
私の返答で、会長の顔がさらに赤くなった。
……なんでしょう、その乙女のような反応は。そんな反応されると私も困っちゃいますよ。何か変な事言いましたっけ……?
会長は、赤い顔のまま私の腕を掴んで来た。
「……俺の事を、恰好良いと思ってくれているのか」
「……え?ええと、はい、誰が見ても会長は恰好良いと」
「そうじゃなくて、透がそう思っているのか?」
「……え、と……か、恰好良いと、思っています……よ?」
ええ、そう何度も聞かれると恥ずかしくなってくるじゃないですか。これはなんの拷問ですか。
私はちょっと照れて、頬が熱くなるのを感じた。
会長はすぐ近くで私の顔を見ていたので気付いただろう、私の反応に僅かに目を見開いている。
「とお……」
「会長、混んでいるんだから、さっさとそこをどけ」
「ああ……晴翔、おかえりなさい」
会長の言葉を遮るように、晴翔が帰って来た。顔を洗ったのか、前髪が僅かに濡れてて、色気を醸し出している。首に掛けてあるそのタオルでちゃんと拭いて下さい。目の毒ですよ、乙女たちの。
案の定、お客の女の子たちがノックアウトしている。しかも会長とセットだからな。
うわ、行列が伸びてます!これは急いで戻らないといけません。
「では会長、ミスコンの件は私から伝えておきますね」
「あ、ああ……」
そう言って、教室に戻る。
「ミスコンに出るのか?」
シフォンケーキを受け取っていると、晴翔がそう聞いてきた。
「ええ、そうです」
「なんで」
「人手不足だそうですよ」
「……そうか」
それだけ言って、注文した客の所へ向かう。
女の子は2人連れで、他校の生徒みたいだった。
「ふわあっ!執事様、執事様よ!」
「さっきの王様付きの執事様ね、分かります」
なにやら興奮しているようで、苦笑する。ああ、さっきの王様って……なるほど確かに、王様と執事だからお似合いと言えばお似合いかもしれませんね。自分の今の恰好を僅かに忘れる所でした。
「透ちゃん!来たわよ、うふふ!」
「透!父さんだぞ!愛する父さんだぞ!」
その呼びかけに、力が抜けそうになりました。入り口を見ると、両親が嬉しそうに手を振っている。
大声で叫んだので、物凄く注目されている。父さんと母さんは相変わらずのようですね……。
近寄ると、父さんと母さんが抱き付いてきて、キスしてくる。半眼で睨みつけつつ、教室へ案内する。親戚とか友達優先の席を設けているのです。他の客から見えない所にご案内。
「うふふ!素敵な執事ね!」
「おう、父さんなんて王様にでもなった気分だ」
飲み物とケーキを出しつつ、私も席に座る。
「どうぞ、美味しいよ」
「「いただきます」」
両親はとても美味しいとニコニコとしながら食べてくれている。そうでしょうともそうでしょうとも。まぁ、私が作った訳じゃありませんけれどね。
「うふふ、透ちゃん可愛い」
「さすが我が娘」
母さんと父さんがニヤニヤしながら言ってくる。身内贔屓ですよ、それ。可愛いと思われていたら執事の恰好なんてさせられません。
「学生のころを思い出しちゃうわね!」
「ああ、母さんは今でも可愛いが、昔も可愛かったな」
「もう、父さんったら!」
……よそでやってくださいませんか。
両親が来たという事で、時間を貰って文化祭の案内をした。
ある程度案内した後、生徒会の見回りをして、また教室に戻り執事ウェイトレス。とまぁ、忙しいながらも充実していた。見回りの最中、いちゃいちゃしているカップルを見て、羨んでなんていません。ええ、断じてないです爆発しろ。




