43 卵
忘れた人のために ↓
登場人物 今回
本田 翼:本作ヒロイン。侍っ娘。高校一年。
武藤 旭:不幸男。翼にアタック中。告白済み。
本田 大地:翼の弟。中学三年。生徒会長(腹黒)。姉の前では猫かぶり。
前回までのあらすじ
体育祭が終わる。
不幸男、勢いで翼に告白。
不幸男、返事がもらえないまま翼の家へ。
不幸男、翼の弟と風呂場でばったり。
不幸男、弟から変態認定。
翌朝、翼が時代劇好きだとわかり意気投合。
朝食を一緒にとろうではないか! ←ここ。
ってことで、武藤視点です。
武藤視点
ちらり。
そわそわ……。
もぐもぐ。
そわそわ……。
……ちら「(ギロッ)」っ!?
現在、オレの目の前には、綺麗な着物を着て朝食を食べている本田さん。
その隣には中学の制服を着た本田さんの弟の大地くん。
二人が出て行ったあと、本田さんが時代劇好きだと分かって手を合わせたことに悶絶していたのだが、朝食の膳を取りに行った二人の様子がどこかおかしい。
本田さんは何かを考えているように感じたし(無表情なので勘だが)、大地くんはオレをまるで憎い敵かのように睨みつけてくる。
会ったときからオレに対する態度はひどいが、今はさらにひどい。
お、オレ、何かしたか?
睨みつけてくる大地くんにビクビクしながらだし巻き卵を口に運び――。
「んんっ!?」
う、うまい!
何だこのだし巻き卵。
滅茶苦茶うまい!
口に入れた瞬間、ふわふわの食感が口の中で遊んでいるようで、だけど噛み締めるごとにだしがしみだしてきて、味覚を刺激する。――――ほっぺたが落ちるとはこのこと!
「めちゃうま~~」
本田さんと大地くんがオレを見る。
あ、思わず声が出ていたらしい。
本田さんはオレが食べただし巻き卵を見て、自分の分を口にする。
口に入れた瞬間の一瞬動きが止まったが、暫く咀嚼し飲みこんだ。
「大地……」
「何、姉さん」
「また腕を上げたな」
「ホントに!?」
「あぁ」
大地くんは本田さんに褒められてものすごく嬉しそうだ。
本当に俺と本田さんとでは態度違うな……。
っていうか――。
「もしかしてこのだし巻き卵、大地くんが作ったの!?」
「……そうですけど」
それが何か?と言いたげな目だ。
「いや、ものすごく美味しいよ!料亭の味みたいだ!」
「料亭の味を食べたことあるんですか?」
「うっ、な、ないけど……。こ、このぐらいの味かなって思ったの!」
大地くんの瞳は冷めている。
「と、とにかく!オレが食べただし巻き卵の中で一番美味しいってこと!すごいよ、大地くん!」
思わず力を入れて言うと、大地くんは目を丸くし、その後そっぽを向いた。
「大げさですね。このぐらい、大したことありません」
「いや、すごいよ!中学生でこの味はなかなか出せない。すごい努力したんだなぁ、って思う」
「…………」
大地くんは無言になり、声をかけようとすると立ち上がって部屋から出て行ってしまった。
「……怒らせちゃったかな」
「そんなことない」
本田さんはオレを真っ直ぐ見て言った。
「照れているだけ」
「照れるって……こんな美味しい料理を作れるんなら褒められまくりだろうに」
「家族以外は食べさせていないらしい」
「え、何でだろう。もったいない」
「それなりの信念があるのだろう。ごはんが炊けるようになるまでは外で作らないと言っていた」
「ごはん?」
ごはんって、この白いごはんのことだよね。
両親が海外で、オレは今一人暮らし状態だけど、ごはんを炊くのなんて、炊飯器のスイッチ一つだから、調理するとかないと思うけど……。
まぁ、時々水の入れすぎとか少なすぎとかはあるが……。
「じゃぁ、ごはんは誰が?」
「お米は母様が炊いている。お米を美味しく炊けるようになったら一人前らしい」
「へ~……」
…………あ、オレもしかして本田さんと自然に話せてる?
し、しまった。気づいたらドキドキしてきた。
な、何を話そう。
そ、そういえば告白の答えを貰っていない。
き、聞いてしまうか……。
「あ、あの――――」




