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番外編 ソラ 前編

翼の兄、空也視点の話。


まわりから翼はどのように見えているのか。


高校生の前の小休止。


長くなってしまったので、分けました。


では、どうぞ!







 俺の名前は本田空也ほんだくうや。現在十一歳。小学校五年生。

 本田家の嫡男だ。


 俺にはかわいい妹がいる。

 翼というかわいいかわいい家族の宝。



 産まれたときにも立ち会った。本当はいけなかったらしいけど、父さんが母さんについていたいがために無理やり押し入ったので、俺も中に入ってその瞬間を見た。


 産まれた赤ちゃんはすごいうるさい声で泣き叫んでいた。

 白いタオルに包まれて見た初めての赤ちゃんは、正直言うとしわくちゃで猿みたいだった。


 恐る恐る手を出してみると、人差し指をきゅっと握られた。



 すごく小さくて、すごく柔らかくて、力を入れたら簡単に壊れてしまいそうで、自分から手を外すことが出来なかった。




 前に母さんに聞いたことがある。


 他の動物の赤ちゃんは、生まれてすぐに立ち上がるけど、赤ちゃんは一人で立つのにすごい時間がかかる。誰かが守ってあげなくては死んじゃう生き物なんだって。




 「だから空也、この子を守ってあげてね。飛ぶ空があって初めて翼で飛ぶことができるのだから」




 母さんの言っていることはよく分からなかった。けど、守ってあげなくちゃとは思った。


 だから、父さんに強くなりたいってお願いしたけど、

 「駄目だ」

 と言われた。


 たしかに俺は、身体を動かすのが得意じゃない。

 ずっと本を読んで過ごしてたし、翼のように殺陣への興味や動き回るのが好きではないし、弟の大地のように、動き回る翼に追いつこうと木の上を伝って先回りすることもできない。

 だからって、理由も言わず「駄目だ」はないんじゃないだろうか。



 俺は悔しくて家を飛び出した。

 うしろから翼が呼ぶ声がするも、俺はがむしゃらに走った。




 気づいたら近くの公園に来ていた。もう夕方で人もおらず、俺一人だけだった。




 「そら兄様」


 そう呼ぶのはこの世で二人。弟の大地と、


 「翼」


 「はい」


 「何でついてきた」


 「……?」


 「わからないのか?」


 「(コクン)」


 「はあぁぁぁぁ」



 俺は小学生らしからぬ溜息を吐き、かわいらしく首を傾げる妹を見た。




 そう。翼は可愛い。


 真っ直ぐの黒髪が風に揺れるたびにマントみたいにはためくと、どこにも傷のない珠のような白い肌が際立って、とても幻想的な雰囲気になる。


 このように可愛いのだからクラスで人気になりそうだが、父親に似た鋭い瞳と無表情でみんな怖がって近づけない。それに、コミュニケーション不足で誰にも話しかけないため、未だに友達が一人もいない。また、一人で大体のことはできるもんだから、助けようとする人もいない。




 一時期(といっても一日だけだが)いじめにあったこともある。まぁ、その原因は俺にもあるのだが……。



 自分で言うのもなんなのだが、俺の容姿は結構いい。俗にいうイケメンだ。流石あの二人の子どもなだけある。あと成績も入学してから一度も一番を外したことがないので、周りからは天才と呼ばれている(ほんと、自分でいうのもなんだが)。


 その俺が、心配で休み時間すべてを妹に会いに来るのに使うので、それに嫉妬した雌ブ……女子たちが、翼に八つ当たりしたのだ。


 翼がスリッパをはいていることに気付いた俺はすぐに問いただすと、「突然なくなった」と教えてくれた。

 恐らく本人は本当に自分がなくしたと思っているようだったが(かわいいなぁ)、俺には誰かの仕業だとすぐにわかった。


 俺はすぐに聞き込みや学校の監視カメラを見て犯人を割り出し(どうやってカメラを見れたって?企業秘密です)、厳格な罰を与えて新しいものを買わせた。もちえろん、自分のお小遣いからださせた(親に頼ろうなんて楽させないぜ?)。


 そのことが生徒中に広まり、ますます翼の友達を減らしてしまうことになってしまった。






 ……話をもとに戻そう。



 翼は可愛い……――――もう少し前に戻そう。





 「……帰ろっか」


 「(コクン)」


 翼は、頷くとブランコに走って行った。


 「帰るんじゃないの?」


 「(コクン)」


 「……少しだけだぞ?」


 「(コクン、コクン)」



 瞳だけ嬉しそうに輝かせた翼はブランコをこぎだした。俺は翼の背中を押してやり、無表情で分からないが、楽しげなオーラをまき散らしている翼にあてらて、自然と笑みがこぼれた。



 「――さ、帰ろうか」


 「(コクン)」



 翼と手をつなぎ、薄暗くなった道を歩いた。

 こんな時間になってしまい、家に連絡しようと携帯を探すも、ポケットに入れたはずの携帯がなくなっていた。



 「もしかしてブランコのところに落としたかな」


 すると、翼が自分が行くと指さし、止める間もなく公園に向かって走り出した。


 「一人で行くと危ないよ……って速っ」


 あっという間に公園の入り口まで行った翼に驚きながら、慌てて俺も走った。


 公園の入り口に着くころ、翼は俺の携帯を見つけたらしく、ブランコのところで携帯を振って見せていた。


 俺はほっと安心し手を振りかえした。


 その時――――




 茂みから黒いマスクをかぶった男が現れ、翼を抱き上げた。


 「翼!?」


 男は俺と反対側の入り口に止めてある車に乗り込むと、そのままスピードを出して逃げて行った。


 大切な妹を連れて――――。




 「翼―――――――っ!!!!」











今日中に続きを更新したいです。


兄ちゃん黒いです。けど、一番黒いのは弟だったり……。

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