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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
続編②   新たな脅威と、ふたりの剣

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塔の中で

塔の中は暗かった。


黒い魔力が霧のように漂っていて、足元が見づらかった。空気が重く、息を吸うたびに胸が少し締まる感じがした。


レオンが私の手首をつかんだ。


「足元、気をつけろ」


「ありがとうございます」


「放さないぞ」


「……わかりました」


……手を引いてくれているのは、足元のためだけじゃないとわかっています。

ありがとうございます。本当に。

「……圧が強いですね」


「平気か」


「平気です。あなたは」


「少し重いが、動ける」


上層へ進むほど、魔力の圧が強くなった。エミリアが浄化で道を作り、レオンが魔物を処理し、私は進路を確保した。


途中、石段が崩れていた。レオンが先に渡って手を差し伸べた。


「渡れ」


「……ありがとうございます」


言いながら、手を借りて渡った。渡ったのに、手を離してもらえなかった。


……離さないままですね。

まあ、いいです。

最上階に、ヴォルドがいた。


見た目は老いた人間だった。でも目が、ひどく古い色をしていた。この世界の人間の目ではない、もっと遠い場所から来た目だった。


「……聖女が来たか」


声が低く、反響した。


「はい。止めに来ました」


「止める? 笑わせる。お前の力は私の糧になるだけだ」


ヴォルドが手を上げた。黒い魔力が渦を巻いた。


……吸収しようとしている。ガイウスの言った通りです。

力を七割に絞ったまま、動いた。正面からぶつかるのではなく、受け流しながら隙を作る。吸収されないよう、出力を細かく調整する。


横でレオンが剣を構えていた。魔術師相手に剣は意味がない——はずだったが、レオンが動くことでヴォルドの注意が分散した。


「……剣士風情が」


ヴォルドがレオンに魔力を向けた。私はその瞬間に割り込んだ。


「触れないでください」


「……邪魔をするか」


「するに決まっています」


……当たり前です。

この人に何かさせるつもりは、ありません。

エミリアが浄化の聖力を展開した。全力ではないが、ヴォルドの黒魔術を部分的に中和していた。


三人の動きが、また噛み合っていた。


……信頼、とはこういうものですね。

言葉がなくても、動ける。


好機が来た。


ヴォルドがエミリアの浄化に集中したとき、黒魔術の密度が一瞬下がった。


……今です。

指輪を外した。


全力で。


ガイウスの言った「最後の一撃」を、ヴォルドの核に向けて放った。


白い光が塔を満たした。


ヴォルドが声を上げた。抵抗しようとした。でも、今度は力を吸収させなかった。吸収しようとする瞬間に、方向を変えた。


光が、ヴォルドを包んだ。


黒い魔力が、一枚ずつ剥がれていった。


「……百年、か……」


ヴォルドが言った。声が、少し老人のものに戻っていた。怒りではなく、疲労の声だった。


「……終わりに、したかった……」


光の中で、ヴォルドが塵になって消えた。


静寂が、塔を満たした。


私は少し膝に力が入らなくなった。全力を出した後の反動だった。


レオンが支えてくれた。


「……立てるか」


「立てます。少し待ってください」


「急がなくていい」


……全力を出した後は、少し時間がかかります。

それをわかって待ってくれています。

「……終わりました」


「ああ」


「怪我はありますか」


「かすり傷程度だ」


「後でちゃんと手当てしますよ」


「頼む」


しばらく、二人でそのまま静かにしていた。塔の中に、白い光の残滓がまだ漂っていた。


「……怖かったですか」


「ああ」


「何が一番怖かったですか」


「お前が力を奪われそうになったとき」


……あのとき、ヴォルドが一瞬私の力を引き始めた瞬間のことですね。

私はすぐに対処しましたが、レオンには見えていたんですね。

「対処できました」


「知っている。それでも、怖かった」


また、さらっとこういうことを言う人だ。


……私も、怖かったです。

でも、あなたが隣にいてくれたから、動けました。

「……一緒に来てくれて、ありがとうございます」


「当然だ」


「当然じゃないですよ。一人で来ても、どうにかなったとは思います。でも、あなたがいたから、もっとうまくできた」


レオンが少し黙った。


「……俺も、お前がいたからだ。一人では、この中には入れなかった気がする」


……それは、私も同じです。

二人でいたから、ここまで来られました。

「行きましょう。外でエミリアさんたちが待っています」


「ああ」


立ち上がった。レオンがまた手を貸してくれた。今度は、放してもらえなかった。


「……もう少し待てますか、立てるようになるまで」


「いくらでも」


少しずつ、膝の力が戻ってきた。


「……ありがとうございます」


「気にするな」


「気にします。全力を出した後は毎回こうなるので、いつか慣れてください」


「……覚えておく」


……覚えておく、と言いました。

次もそばにいてくれるつもりで言っているんですね。

それが嬉しいです。

立てるようになったとき、窓の隙間から光が見えた。夜明けが近かった。


「外に出ましょう。ガイウスさんたちが心配しています」


「ああ」


二人で石段を降り始めた。まだ少しふらついたが、レオンが手を離さなかった。


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