第29話 殺戮の夜に
難産を超えた難産だった………次からしばらくバトルと百合に注力しよ。
最近ツイッタランドに入国したら滅茶苦茶WARHAMMERと百合が流れてきたんや………その数500億。
あっセンチュリオンウォースーツを着たカルガー閣下のキットバッシュがネットの海に消えるっぼうっ
単純計算で素体だけで3万円くらいかかってそうなんだよねパパ。
趣味人が怖すぎルと申します。
俺もなーモータリオン様とデスガードターミネーターとプレーグバーストクロウラー揃えたいんだけどなーお金がなー。
「………危うい、か」
まだ少し肌寒い夜風を浴びて、1人歩く。
冷たく澄んだ風を吸い込んで吐き出し、脳味噌に鈍く重いものが沈殿していく感覚。
我ながら単細胞な事に、エレジアさんに言われたことが効いているんだろう。
私が俺だった頃、8歳より前の記憶はあまり残っていないが、今思い返してみれば血の気の多い子供だったような気がする。
正確にはブレーキとオツムの足りない子供だったと言うべきか、とかく暴力的な人間だった。
だからこそ道場に放り込まれたわけだし。
………まぁ、義両親を除いて周りの人間には恵まれた方だったと自覚してはいるが、それで出来たのがコレでは話にならない。
人は育った環境が全て、なんてどこかで聞いた覚えがあるが、俺に言わせれば変えられない生まれついての性分というものがある。
ちょっと両手足の指じゃ足りない数の人間を殺して、人を文字通り食い物にして、それでも俺がとくだんの罪悪感を覚えていないのは、ひとえに俺が生まれつきの屑だったからだ。
20年生きて死んで生まれ変わって、性別すらも変わって、人間ですらなくなって、それでも変わらなかったものがいまさら変えられるとも思えない。
むしろ吸血鬼になってから、もっと酷く。
「………いや、もうやめておこう」
どうでもいいことを考えるのは、後からいくらでも出来る。
今やるべきは、
「殺す」
夜の森を抜けた先、眼下、隊列を組んで進んでいたキャラバンに襲い掛かる人間の群れ。
予定通りの光景に思わずつきかけた溜息を飲み込み、飛び降りた。
「てきしゅっ」
「このっ」
「遅い」
着地ざまに棒手裏剣を投擲して殺し、相手が動く前に首を折って殺す。
腰の刀を抜き放ち。
「撃ち殺っ」
腹狙いの弾丸を切り落し、返す一刀で逆袈裟に切り伏せる。
蹴りで胴体を破裂させて殺し、真っ向から叩き切って殺し、横一閃で首を刎ねて殺す。
「君っ、援軍か!?」
「そんなところです。敵の数は?」
「およそ20!しかし、君は」
「問題ありません」
指揮官らしき人にそう返事して、手裏剣を打ち放ってもう1人殺す。
今回の殺しは実験、遊びといってもいい。
多人数相手に今の私が銃器を使わずどれだけ殺せるかのゲームだ。
右手の指先で柄頭を握り、深く息を吸い込み。
「一つ、二つ、三つ」
パン!と空気の弾ける音がして、喉を掻っ捌かれた馬鹿どもが倒れ伏す。
唐竹割に切り込み、水の防壁ごと腹を切り、逃げようとした相手の足を踏み潰して脳天を刺し貫く。
短機関銃の掃射を翼を盾に防ぎ、そのまま翼爪で首を刎ねる。
そのまま流れで二人ほど切り伏せ、不利を悟ったのか残りの連中が逃げ始めた。
外套に手を突っ込み。
「死ね」
ヒョゥン、と奇妙な音を立てて飛翔したフンガムンガが、背中を向けて逃げてた連中を纏めて掻っ捌いた。
柄に括りつけたワイヤーを引っ張って回収し。
「いや~、どなたか存じませんが助けられました。よろしければ、お名前を伺っても?」
部隊長らしき太っちょさんに話しかけられた。
血がべったりこびりついたナイフを弄び。
「ジェーン。ジェーン・ドゥです。えっと………第334輜重部隊の皆様であってますか?」
「えぇ、その通りですが………」
「さようですか。バーナードさ………アルベリッヒ閣下の指示で援軍に来ました。よろしければ、このまま目的地点まで護衛しましょうか?」
「あ~………いえ、それには及びません。助けていただいた身で言うのもアレですが、貴女みたいな子供にそこまでして貰ったとなると軍人の名折れで」
「あっそ」
右腕を振るい、俺の後ろにいたバカの腕を切り落とす。
一拍遅れの絶叫と、噴水のように噴き出る鮮血。
キャッチした左腕には、寸鉄めいたナイフが握られていた。
刃から滴る薄緑色をした雫、匂いからして麻痺毒の類かな?
結構強烈な奴っぽいし、まともに喰らってたら危な………くはないな。
これくらいなら肝臓の付呪でどうにでもなる。
どうにでもなるけど。
「お前ら、ずいぶん好き勝手にやってたみたいだな。バーナードさんあそこまで怒らせるって相当だぞ」
今回バーナードさんに依頼されたのは2つ。
1つは、革命軍ゲリラの殲滅。
もう1つは、
「横領、強姦、恐喝、略奪、etc、多少のお楽しみならともかく、軍の物資に手を付けたのはマズかったな。………お前らみたいな屑のせいで前線に被害が出ることを、あの人は許容しない。悪いとも思わん、死に晒せ」
「このガキっ!?」
ポンポンっ、と軽快な音とともに喉仏を引っこ抜かれたオッサンが倒れこむ。
赤黒い肉塊を口に放り込んで咀嚼し。
「………まずい」
なんとなく食べてみたけど美味しくない。
食感はいいけど肉が臭い。
この前食べた軍人のおねぇさんの方が万倍旨かった。
………あれひょっとしてそういう事か?
鬼とか妖怪が若い女の子ばかり狙って攫ってるのロリコンだからじゃなくて、単純に男の肉がマズいだけなんじゃ?
なんというか、割とありそうで困る。
まぁいいや。
「っ、こいつ」
「おっそ」
いまさら銃を構えるバカ2人をばっさり切り捨て、投げ込まれたグレネードを刀の峰で打ち返す。
マヌケがドカンと爆死したのを尻目にナイフを投げて殺し、ライフル弾を受け流す。
そのまま首を刎ね、近場にいたもう1人の顔面を切っ先で掻っ捌く。
不利を悟ったかとっとこ逃げ出すバカども相手に、刃を突き付け。
「じゃあ死ね」
残りを解体すのに、30秒とかからなかった。
「ねぇ、あなた。ちょっといいかしら?」
「エレジアか、どうした?」
「あの子なに?」
書類を処理していた手を止めて、エレジアに向き直る。
両目を包帯で隠したままの、少し不満げな表情。
「タルコフスキーとリュドネラの娘だ。いい子だろう?」
「そういう事じゃないのはわかっているでしょう?」
「………吸血鬼、だそうだ。本人が言うにはな」
「きゅうけつき?」
「血を吸う鬼なんだとさ」
「………リュドネラの娘なのよね?」
「アイツは劣等髪だが、魔法が使えるんだ。創造魔法と呼んでいたな」
椅子から立ち上がり、戸棚から酒瓶と2人分のグラスを取ってきて。
「飲むか?」
「お仕事はもういいの?」
「ちょうど1区切りついたところだ、今日はもう終いにする」
「じゃあ、私も少しだけ」
グラスに、酒を注いで。
「………なぁ、エレジア」
「はい」
「………俺は、どうすればよかったんだろうな」
戦場で長く生き延びるという事は、まともじゃないものを見ることになるという事だ。
気が触れて敵味方構わず殺しまわるようなのはまだいい方、眼球蒐集者、ハチの巣、指しゃぶり、etc.
俺自身そういう連中を何度か殺したこともあるし、今でもたまに夢に見る。
あいつらは、決まって同じような目をしていた。
だが、
「アイツは、連中と同じ目をしていた。まだ11歳の子供がだぞ?」
PTSDを患った連中の死んで腐った魚のような濁り切った眼とはまた違う、煌めきを帯びた眼。
何かに取り憑かれた人間の眼だ。
「………正直な話、今からでもアイツを連れ戻して監視下に置くべきだと、そう思っている自分がいる」
アイツの原動力は、タルコフスキーとリュドネラを殺した連中への復讐だろう。
少なくとも今は、無差別殺戮には至っていない。
取り返しのつくうちに保護するべきだというのは、頭では理解している。
だが、
「あの子を利用すれば、上層部の屑どもを一掃できる。そう考えたのでしょう?」
「………わかるか」
「エンジェルフォール作戦からの付き合いだもの、それくらいは分かるわ」
「………また、懐かしい名前だな」
「思えば、アレが私たちの馴れ初めだったわね。………お互い入隊したばかりの新兵で、必死になって駆けずり回って。私たちならこの国をもっとまともにできる、なんて考えて」
「タルコフスキーに出会ったのも、あの戦場だったな」
「あれからもう25年かしら?同期も随分と減って、生き残りは私たちくらい。………ねぇ、バーナード。私はね、あの子に期待しているの」
「………期待だと?」
「えぇ。未知の魔法に加えてキュウケツキ?なんて特異性も持ち合わせてて、おまけにとても強い。私は、あの子は1つの変革の可能性だと思っているわ」
「………変革、か」
200年続いたこの国の内戦は、とうの昔に尋常の手段では停止しようがない状況に陥っている。
現状を打破するなら相当に激烈なカンフル剤が必要だろう。
ジュジュは、アイツは今の状況を完全に破壊しうるだけの実力と意思を秘めている。
十分な時間と資材と、あとは政府軍の内情に通じた協力者がいれば、この国を破壊することも出来るだろうし、アイツ自身が報復を望んでいる以上、俺が干渉せずともソレはいつか確実に成し遂げられる。
それでも、
「アイツはまだ子供だ。親の背中を見て、守られて育つべき子供だ。………正直、俺はあいつに、あまり戦わせたくない」
「けど、貴方が指示しなくても、あの子は自分から戦場に行くでしょうね。それならせめて、貴方が制御できる範囲で戦わせた方がいいのではなくて?」
「………制御可能な範囲で、か」
「あの子、それなりにお利口みたいだし、言って聞かせればきっと分かってくれるわ。使えるものは使うべきよ」
エレジアの言う事は間違っていない。
アイツは強いし、それ以上に頭が回る。
目的のためならなんでもする辛抱強さと意思を持ち合わせた人間だ。
けれど、ジュジュはまだ子供で、タルコフスキーは最後の最後で俺にあの子を託した。
………まったく、
「タルコフスキーめ、厄介なものを残して逝ってくれたな」
「でも貴方、少し嬉しそうよ?」
「困難な状況にこそ燃えるのがアルスシール軍人というものだろう?」
「それもそうね」
ぐいと、コップの中身を飲み干し。
「………ありがとう、エレジア。ようやく腹が据わった。………ジュジュを利用して、この国をひっくり返すぞ。考えてみれば、タルコフスキーにはまだまだ貸しがあった。奴の娘に返してもらうのが筋だ」
「悪い顔になってるわよ、貴方」
「悪い大人だからな、そりゃ悪い顔もするさ」
「まぁ、私見えてないけどね」
「………エレジア。前から思ってたんだがそのネタは笑えん、やめてくれ」
「………ジュジュちゃんにも言われたけど、そんなに面白くないのかしら。かなり大爆笑って感じだったんだけど………」
「頼むからやめてくれ」
「そう?なら仕方ないわね、やめてあげる」
ケラケラと愉快そうに笑うエレジアは、光を失う前と全く同じに見えた。
………嚙み締めた奥歯が、ぎりと軋む。
………あぁ、そうだ。
俺はエレジアに、もう1度イリノイの空を見せてやらねばならない。
そのためならなんだってする、悪魔に魂を売ろうと構わない。
だから、
「………すまん、タルコフスキー」
吐き出した言葉に、返す声はなかった。




