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柳瀬千紗都のプロデュース  作者: 青山竜祐
第三話 大変身!
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大変身! 1

 新しい教室に慣れ、新しい友人もできてこれからの楽しみと気怠さが湧いてきた頃、なにが面白くて残ったのか俺は教室にいた。

 掃除当番がきれいにしてくれた教室に舞い戻っては問題を解いていた。というか、英語の翻訳だ。

 朝の小テストで赤点を取ったため、放課後に居残りをしていた。補習内容は追加の課題。テストの結果をよくするには勉強せねばならず、悪くてもまた勉強。してもしなくても同じなら、俺は今やりたい方に専念する。

 その結果がこれなわけだが。

 最後の解答欄を埋め、大きく腕を伸ばす。

「その様子やと終わったようやな」

「安寿香も終わったのか」

「とっくのとうや」

 踏ん反り返りそうな様子だったのでイラッとする。

「同じ赤点がなにを威張ってるんだよ」

「威張ってへんわ。それよか早よ行こ。蒼介のこと待っとったんやで」

早く部室へとでも言いたいのだろう。勝手に行けばいいものを、この間の「仁菜ちゃんの初めての万代」以来、つきまとわれる回数が増えた気がする。

 目的地も同じだから嫌というわけでもない。

「遅くなって悪かった」

「かまへん」

 安寿香が俺に気を遣ってくれるのとかは別にいいのだが、なんだかここ数日は母親みたいなウザさがある。弁当を食い終わったときに口元に汚れがあるのを指摘され、あまつさえ安寿香自ら拭おうとするわ、そのあとに「歯、磨いたろか?」と言いやがる。おかげでクラスのみんなから息子と呼ばれる始末。

 そんでもって尿意を催したとき「ついていこか?」と二度と言わなくていいからな。

 担当教師にプリントを渡して教務室を出ると、見知った顔に出会う。

「よう、仁菜ちゃん」

「こ、こんにちは阿久津先輩」

 プリントを抱えた仁菜ちゃんは小さく首を垂れる。

「仁菜ちゃんも補習?」

「いえ、わたしは先生に頼まれてプリントの回収を……」

 仲間意識を芽生えさせようとしたのに、俺は自ら小テストで赤点を取ったことを打ち明けてしまった。

 ついでに隣の安寿香も同様であることがばれただろう。

「余計なこと言うなや」

「うるさいな。そうかもしれないと思うだろ?」

「だったらプリント一枚や」

「みんなの分を回収するパターンかもしれないだろ」

 それよりも馬鹿話のせいで仁菜ちゃんを止めてしまったことを悔いる。仁菜ちゃんの俺に対する好感度と尊敬度がやや下降しただろう。

 立ち去ろうと足を踏み出すが、隣にいる人物を無視するのも気が引ける。

 仁菜ちゃんと同様にプリントを胸に抱えた女子生徒。

 背丈は仁菜ちゃんよりずっと高いがショートヘアの髪型といい、丸い目元といい共通する箇所が多い。

「仁菜ちゃんの友だち?」

「えっと……」

「太刀川さんのクラスメートの井上優愛ゆあって言います。こんにちは先輩」

 性格はあまりに似ていないようだった。井上優愛と名乗る彼女は前に出てきてにっこりと挨拶をする。

「俺たちは仁菜ちゃんと同じ郷土研究部二年の阿久津蒼介。こっちが住吉安寿香」

「よろしくお願いします、阿久津先輩、住吉先輩」

 さっそく名前を呼んでくれたので俺も返さないわけにはいかない。

「よろしく井上さん」

「よろしゅうな」

 安寿香と二人で挨拶を終えると彼女たちは一礼して教務室へと入っていった。

「結構大きい子やったな」

「女子にしては確かに。あれで一年生だもんな」

 仁菜ちゃんと姉妹でも通りそうだっだ。教務室の中を覗くとなにやら教師と話を始めている。

「クラスの子と話すこともあるかもしれないし、先に部室に行くか」

「そやな」

 俺たちは部室へと向かった。

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