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柳瀬千紗都のプロデュース  作者: 青山竜祐
第三話 大変身!
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大変身! 3

 新潟駅南口のバス乗り場に行くと、全員揃っていた。

「遅いわよ蒼介」

「時間には間に合ったろ」

 予定のバスが発車するまであと五分ある。もし乗り遅れても次のバスで大丈夫だろう。

「結局、なんの交流会なんだ?」

 俺が千紗都に尋ねると、わからないと言われる。

「そういや、肝心のナギちゃんがいないけど、遅刻か?」

「ナギちゃんは交流会の準備があるから先に現地に行くって言ってたわ」

「張り切ってたし、むしろ好きなことには一番乗りって感じだもんな」

 俺はナギちゃんが過去に好きになったものを思い浮かべる。

「あのさ、千紗都。ナギちゃんが楽しみにするのってアニメとかゲームとかばっかだよな」

「そうね。新潟のサブカル文化の情報を収集してもらうためにNDD所属してもらっているくらいよ」

「となるとその交流会とやらも、それ関係なんじゃないかと疑い始めているんだが」

 千紗都は顎に手をやって考え込む。

「確かに、ありえるわね」

「結局文化とか関係なく趣味全開になるんじゃねーか」

 後ろに立っていた仁菜ちゃんが唇を震わせる。

「だ、大丈夫でしょうか。わたしなんてアニメとかあんまり詳しくないのに。交流会になんて行ったら……」

「ウチもあんま知らんで」

 たぶん亘希さんもあまり知らないだろう。俺も有名どころを観ているくらいでナギちゃんほどではない。

「みんなの気持ちはわかるわ。でも聞いて」

 千紗都が真面目に言うので俺たちは耳を傾ける。

「新潟におけるアニメ、漫画文化はキテるのよ。「がたふぇす」なんて巨人の観戦客数よりも多いわよ。そもそも日本海側最大規模の同人誌即売会「ガタケット」――」

 千紗都の演説を横流しに、俺たちは丁度来たバスに乗り込む。

 バスが出発したあとも、千紗都の話は続いていた。

「アニソンバーやメイド喫茶だってあるのよ」

「新潟にメイド喫茶があんのか?」

 俺の反応に千紗都は満足そうに笑みを浮かべた。

「ちゃんとあるのよ」

「ちいはなんだかんだ言ってオタクやもんな」

 安寿香は呆れたように鼻息を漏らす。

「オタクって……新潟オタクではあるけど、アニメとかはナギちゃんに比べたら全然よ」

「でも、ナギちゃんと同じゲームやってたやろ。あの国民総生産みたいなやつ」

「GPNよ、オクトパス。あれはナギちゃんから勧められて始めたの」

 ナギちゃんから勧められたってのは本当のようだが、俺には千紗都自身がはまっているように思える。

「安寿香に負けず劣らず夢見がちだしな」

 千紗都と安寿香は一斉に振り向く。

「誰が夢見がちや」

「安寿香ほどじゃないわよ」

 いや、お前らは夢を見る方だと思うぞ。

 千紗都だってナギちゃんみたいに、お気に入りのキャラと恋愛したいわけだからプレイをしているのだろう。

「千紗都もミカエルが好きなのか?」

「あたしは……び、ビシャ様が好きだけど」

 千紗都は新潟以外に対して「好き」という感情を出すのを恥じらう傾向にある。それが彼女の面白いところだ。

 それにしても変な名前の神様を好むもんだ。地元愛偏屈の千紗都らしい。

「ビシャ様? なんの神様?」

「戦の」

「戦の? 戦でビシャ様って――毘沙門天のことか?」

「そうよ」

 ほとほとこいつは……。

「お前、それ上杉謙信が崇めていたからって理由だけだろ?」

「よく知ってるわね」

「そりゃ、お前の性格考えれば簡単すぎるだろ」

 こいつがなにかを好きになったとき、原点に新潟が絡む率が高い。そうでないものは、千紗都が心から好きなものだという証明になるので、俺は本気で他人にオススメする。

「そうじゃなくて、上杉謙信が崇めていたって」

「さすがに、新潟に住んでればそれくらい知ってるって」

「そ、そうね」

 こいつ、俺だって上杉謙信くらいは知っているし、それなりのエピソードも知っている。いくらなんでも俺が無知だと思い過ぎじゃないか。

 千紗都は俺を馬鹿にしたのを恥じたのか、顔を真っ赤にしている。たまには反省してくれるのもいい。

 と思ったが、急にニヤニヤとし出す。

「どうしたんだよ」

「別に、なんでもないわよ」

 突いても答えてもらえそうにない。俺は黙って目的地に到着するのを待った。

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