その22 論評
人には向き不向きがあります。
男からの告白はかくあるべし。
その理想形の一つを見せつけられた女子は、あの光景を和井田と高橋に置き換えたとき、ちょっと違う、と違和感を感じたという。
「和井田くん、背低いしね」
「てことは、壁ドンはともかく、顎クイはちょっと無理じゃないかと」
それにノリも違う。宇賀神は天性の盛り上げ役であり、ドンッと行ってズバッと決めるところがあるが、和井田は精神的に落ち着いており、沈思黙考の芸術家タイプである。
「その和井田くんが壁ドンは……ちょっと想像しづらい」
いちいち納得のいく意見である。ほとんどの人がほぼ同じ理由で赤票を上げた。
百聞は一見に如かず。
まさに至言である。
「でも、由紀はけっこう臆病だよ。由紀に告白なんてできないって」
高橋のことをよく知るからこそ、親友・平山は青票を上げた。他人のためにならホイホイと苦労を買って出るというのに、自分のこととなるとてんでダメ、何度平山が助けてきたことかと思う。
「そ、それは……えと、みんなで応援しましょう!」
平山の言葉に、橘が叫んだ。
「大丈夫です、高橋さんは、すっごくいい人です。和井田くんだって絶対に高橋さんのことが好きなはずです。だから、私たちで高橋さんを勇気付けて、それで、がんばって告白してもらいましょう!」
「そうよね。橘だって告白できたんだし」
生徒会副会長・陶山がうんうんとうなずくと、橘がたちまち顔を赤くした。
「いやー、見ていてほんと、初々しいというか可愛いというか。魂持ってかれそうになっちゃったわ」
「あ、あれは、だって……あうう〜」
「もー、陶山ちゃん、橘ちゃんをいじめちゃダメよ」
真っ赤になった橘を見て、木葉が笑いながら口を挟んだ。
「だって、あんなの見せつけられたら、からかいたくなるし」
「んじゃあ、陶山ちゃんの告白話も聞こっか♪」
「な、なんのことっ!?」
「……すごいねー、バレてない、て思ってるあたりが」
うんうん、とクラスメイトがうなずくのを見て、陶山はたちまち顔を赤くした。
「じゃあ、相手にまずはスタンダップしてもらおうか。かっ……」
「やめて、お願いやめて木葉。謝るから!」
「木葉、それ以上するなら、お前も公開告白してもらうぞ?」
「うげっ、ちょっと来賀ちゃん、勘弁して!」
謝りまーす、と両手を合わせて頭を下げた木葉を見て、来賀はふうとため息をついた。
「では……もう六時になるし、結論が出たということでいいか?」
「いやでも、具体的にどう高橋さんに告白させるの?」
「そこ決めないと終わらなくない?」
「えー、でももう六時だよ、これ以上は……」
結論は出た。
だがなんだか中途半端な感じがする。
クラスメイトの誰もがそう考え、ざわざわとした、そんな時。
「まあ、ここから先は当人も交えないと話にならんだろうな」
「うん、そうだよねー……え?」
教室の後ろから聞こえてきたその言葉に、誰もがぎょっとして振り向いた。
……誰?




