その21 採決
いよいよ決着
「では、決を採る!」
祝福ムードを一掃する来賀の凛々しい声が、弛緩していた教室の空気を引き締めた。
「様々な意見が出た……と思っていたが、要するに、告白は高橋からするか、和井田からするか、つまりはそれだけだ! 桜田!」
「うむ」
来賀が声をかけると、どこに持っていたのか新聞部・桜田は大きな紙袋を取り出し、中から厚紙でできたA4サイズの紙を配り始めた。
紙は、一面が赤、反対側が青になっており、YES/NOをはっきりと示せるようになっていた。
「……お前、ほんっとに準備いいな」
「え、わかってて声かけたんじゃないのか?」
「いや、知らんかった。何か準備してるかな、て思っただけだ」
そんな会話が来賀と桜田の間で繰り広げられていたが、どうでもいいことなので脇に置く。
「高橋が告白すべきと思う者は赤面を、和井田が告白すべきと思う者は青面をこちらに向けてあげるように」
「議長、質問」
「なんだ、藤原」
「棄権したい場合は?」
「許さん」
最弱ヤンキー・藤原の質問に、来賀は鋭い眼光で答えた。
「ここまできて棄権する軟弱者には、ここで公開告白をしてもらい、性根を叩き直させてもらう」
「ちなみに藤原が好きな人だが……」
「わーっ、言うな、言うな桜田! わかった、棄権なんかしないから!」
「他のやつもいいな?」
コクコクコクッ、とクラスメイト全員が慌ててうなずいた。焦っていないのはすでに公開告白を終えた四名のみ。冷静に考えて、あれがさらし者以外の何者でもないことは明白だ。
ちなみにこの時、誰か一人でも冷静な者がいれば突っ込んでいただろう。
議長ゆえに採決に参加しない来賀は、安全地帯じゃないか、と。
「では、いくぞ」
ガンッ、ガンッ、ガンッ、とガベルの音が響き渡り、教室の中に緊張した空気が満ちる。
赤か、青か。
それぞれがこれまでの議論と、目の当たりにした告白の破壊力を参考に、己の魂をかけてどちらをあげるかを考え、そして、決断した。
「全員、意見表明!」
ババッ、と一糸乱れぬ揃った行動で意見が表明された。
「こ、これは……」
来賀が息を呑む。
さすがの来賀もこの結果は予想外で、おいおいほんとかよ、と言いたくなった。
「赤二十六、青五! よって本件は、高橋からの告白とすることで決定した!」
うぉぉぉっ、とクラスメイトがどよめいた。まさかの大差である。
「え、なんで、議論してる時は和井田から、て雰囲気じゃなかった?」
「おいおい、加賀も赤かよ」
「青を上げたのは……宇賀神、佐藤、綾小路、橘、平山か」
「公開告白組と、親友の平山のみって……マジか」
どういうことだ、なぜこうなった。
ざわめくクラスメイトたちの中、コホン、と咳払いをして、加賀が立ち上がった。
「先ほど、あそこまで男性からの告白を押していた私が、意見を変えた理由をお話ししておきます。あ、これはあくまで私の行動の矛盾を説明するのみ、他の方に説明する義務はないと心得ております」
「了解した」
来賀が言葉を挟み、釈明は加賀のみ、他の者には求めないことを暗に表明した。
「えー、その、先ほどの宇賀神くんから佐藤さんへの告白ですが」
そこで加賀が言葉を切り、フルフルと体を震わせる。
「あ、あれは……わ、私、ドストライクです! 最高です! もうあの光景を思い出すだけで、ご飯が何杯も食べられます! 佐藤さんがうらやましいです!」
「同意!」
すかさず海老澤が叫び、二人して半トリップ状態で悶えた。うなずく女子が他にも何人もいて、宇賀神の告白はかなり好評だったことがわかる。
「あの決然とした歩み寄りと、そこからの流れるような、壁ドォン、顎クイッ! ああ、佐藤さんがどのように感じたか、後で根掘り葉掘り、微に入り細に入り、聞き出してやりたいと思います!」
やめてー、と悲鳴が上がったが、それはスルーされた。
「じゃ、なんで赤なの?」
「実に簡単です」
コホン、と加賀が咳払いをした。
「あれ、和井田くんには無理です」
理想と現実




