黒うさぎちゃん〜このもふもふ、やばい〜
「もふもふだ……私が求めていたのはこのもふもふだ……!」
「うっわー!かわいいね!」
なんかリリィが悟りの境地にたどり着いた人みたいなことを言ってるけど大丈夫だろうか。
でもこの子は本当に可愛い。
まず、ちょこんとしたそのサイズ感。手のひらにちょうど乗るくらいでとてもいい。
次に、背中からぴょこんと生えたちっちゃな羽と角。悪魔の羽と角って感じなんだけど、こんなもふもふボディから生えてるから全く怖くない。むしろ可愛さをアップさせてる。
次に、くりっくりの目。黒いのにキラキラの宝石みたいで可愛すぎる……!
そしてなんと言ってもそのもふもふ!触らなくてもわかる、もふもふとした真っ黒で綺麗な毛並み。
あぁ、触ってみたい……!
「みゅうー?みゅみゅ?」
黒うさぎちゃん(仮称)は不思議そうにあたりを見回している。あぁ、その一つ一つの動作さえも尊い!
「かわいい……もふもふ……うへへ…」
「みゅみゅ!?みー!」
黒うさぎちゃんがもはや変態みたいな顔になっているリリィから逃げてこっちに来た。
「わわっ。こっちに来てっ!?」
「あ!お姉ちゃんずるい!」
そのもふもふが私の体に触れた瞬間、私はこのためだけにこのゲームを始めたのではないかと感じてしまった。
「もふもふ、最高だ……!」
「もー!ずるい!私も……ふわっ!?」
私の膝から黒うさぎちゃんを抱き上げたリリィが私と同じように放心する。
「もふもふもふもふもふもふもふもふ……!」
「やめてちょっと目が怖いから。」
一心不乱に黒うさぎちゃんをもふっているリリィはちょっと怖かった。
「そ、そうだ。リリィ、この子を従魔にしなくていいの?」
「もふもふもふもふ……あっそうだね。それじゃあ
まずは……ほれ!餌だよー!」
リリィが黒うさぎちゃんにどこからか取り出した魔獣用の餌をあげる。
魔獣使はテイマーと違ってどんな魔物でもLVが自分より低かったら従属させることができる。
でも無理矢理従魔にすると反抗したりいざというときに戦わなかったりと、とても困ることになる。
だから基本的に魔獣使でも無理矢理従魔にすることはせず、なるべく従魔と仲良くなってから従属させることが多い。
まぁ、リリィは普通に黒うさぎちゃんと仲良くなりたいって気持ちの方が強いと思うけど。
「みゅみゅう……み?みみっ?みゅー!」
黒うさぎちゃんは最初は怪しがっていたけど、それが普通の餌だとわかるとぱくっと飛びついた。
「「うぅっ!可愛い……!」」
といちいち反応してしまうのは仕方がないと思う。
「はぁ……可愛いなぁ。よしよし。」
「みみゅー……」
リリィが撫でると気持ちいいのか目を細めて鳴く黒うさぎちゃん。天使かな?いや悪魔か。
「さて。じゃあ黒うさぎちゃん。私の従魔になってくれる?」
「みー?みみゅー!」
その声を了承ととっていいかはわからないが、後ろに後光が見えるようなスマイルを浮かべているからいいのだろう。たぶん。
「じゃあいくよ!【従属】!」
「みー!」
黒うさぎちゃんの足元に魔法陣が現れ、紫色の光が黒うさぎちゃんをつつむ。そして光が収まり、現れたのは、鈴のついた首輪をつけた黒うさぎちゃんだった。
「……リリィ?あの首輪は?」
「んー、なんか従魔の証なんだって。形はたくさん選べたけど、可愛いからこれにしたー。」
「たしかに似合ってるけど……」
「でしょー!ちなみに他には強制的に動きを拘束する魔法をかけたりすることもできたけど……」
「それでいいわ。首輪だけで絶対大丈夫。そんな魔法かけなくて正解。」
「だよねー!」
「それにリリィに懐いてるっぽいし。」
「みゅ?みー!」
自分のことが話題に出たからか、リリィの足に顔を擦り付ける黒うさぎちゃん。めっちゃ羨ましい。
と、突然リリィの目の前にウィンドウが出てきた。
「ん?なんか出てきた。えーっと、従魔の名前を考えてください?……あっ、そうだよね!君の名前も考えないと!いつまでも黒うさぎちゃんじゃだめでしょ。」
「みゅう!みゅみゅー!」
可愛いのでね!と言うように鳴く黒うさぎちゃん。
「んー、そうだな。黒うさぎちゃんだからクロでいいかな!」
「いやだめだって!黒いワンちゃんの手抜きネームみたいになってるから!」「みゅー!(訳:やめてー!)」
「じゃあくろこ」
「余計にダメになってる!?」「みみー!(訳:いやー!)」
「えー。じゃあプリ・デ・モラービ」
「それプリンセスデーモンラビットをふざけてもじっただけよね?」「みゅみゅー?(訳:本気で考えてる?)」
「ひどいなー、私は真剣だよ?」
そういえばリリィはネーミングセンスが壊滅的で、今うちで飼っているセキセイインコのメロンちゃん(命名私、由来は丸くて緑色で、メロンが好きだから)に、性別が女だと知っていたはずなのに、「ぽちゃっとしてるからぽちゃのすけにしよう!」って言い出すほどだったんだった。
ちなみに学校でリリィが世話をしている亀は「緑山亀乃子(♂)」だ。
「はぁ。真剣でそれを思いつく方が怖いわ。」
「むむっ!じゃあお姉ちゃんも考えてみてよ!」
いきなり私に振ってくるリリィ。そんなこと言われてもなぁ。
「うーん、じゃあ黒くて羽が生えてるから、クロハちゃんはどう?」
「あ、それいいね!よし、君の名前はクロハちゃんで決まりだ!」
「みー!」
そしてリリィが目の前のウィンドウに『kuroha』と入力する。すると……
「うん?なんかクロハ、ちょっとおっきくなった?もふもふ感が増したというか、ころんとしたというか……」
「あと、背中の羽とおでこの角もおっきくなってる?」
どういうことかと思って【赤の魔眼】で鑑定してみると……
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プリンセス・デーモンラビット[クロハ]
《ネームド》
HP 80/80
MP 100/100
STR 85
VIT 60
AGI 160
DEX 30
INT 40
種族スキル
【不可視化】
【飛翔】
【魔性のもふもふ】
【全ステータス上昇】
ユニークスキル
【王女の命令】
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「「・・・は?」」
いや、全ステータス10上昇してるんですけど。ねえ、間違いなく私より強いんですけど。このもふもふした毛玉みたいなのが。ねえ!
そしてなに!【魔性のもふもふ】って!いやわかるけど!えーっと、なになに……
《魔性のもふもふ・・・毛がたくさん生えている魔獣の中でも特にもふもふした毛を持つ魔獣に与えられるスキル。このスキルの所有者をを見た敵は、5秒間所有者から目が離せなくなる。》
わぁ、ふざけた名前の割にとってもいいスキル。
「みゅみゅ?みー!」
いつのまにか【飛翔】でリリィの頭の上に登ったクロハが、すごいだろ!と言わんばかりの表情でふんぞりかえっている。
横を向くと同じくクロハのことを鑑定していたであろうリリィと目があった。そして私たちは同時に言った。
「「何このもふもふめちゃめちゃ強い!」」
気がついたらこんなにポイントが……!この作品を読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
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