41 二つの吉報
41 二つの吉報
桃太郎は生家の門前にたどり着いた。そこまで来てようやく、
(生きて帰ることができた)
という気持ちがしみじみと胸に湧いた。
お爺さんとお婆さんは玄関まで出迎えてくれた。桃太郎は手をついて、帰宅のあいさつを述べた。
「長らくご心配をおかけしておりました。桃太郎はただいま戻りました。見事、鬼の首領を討ち取って参りました」
桃太郎は手短に鬼退治の顛末を伝えた。
その間中ずっと、お爺さんとお婆さんは顔中を笑顔にして、ニコニコと聞いていた。
「実に喜ばしい。よくぞやった、桃太郎。一門の名誉じゃ。それでこそ我々の息子と言える」
お爺さんは口を極めて賞賛した。
「お褒めいただき、光栄です」
桃太郎は再び頭を下げた。
「で、桃太郎よ」
「はい」
「それはそれで、非常にめでたいことではある。もちろん、その通りじゃ。その話は後でゆっくり聞かせてもらうことする」
とお爺さんは言った。
「はぁ」
と桃太郎は相槌を打ったが、内心では、(お爺さんは、なぜ話を変えるのだろうか)と思って、不審な気持ちになった。
「実はだな、桃太郎。私たちの方からも、お前に喜ばしい知らせがあるのだよ」
とお爺さんは気になることを言った。
「ほう。さようございましたか。私が家を空けている間に、何か良いことがありましたか」
「ああ、あったのじゃよ」
「ぜひ、お聞かせください」
と桃太郎は身を乗り出した。
「それはだな」
「ええ」
「うむ」
「何でしょうか」
「それは……。おや、こう言っている間に、ちょうど、その本人が来たようだな」
とお爺さんは言って、庭先に視線をやった。
「誰が来たのです?」
桃太郎もそちらの方を振り返りながら、訊いた。
「花江さんじゃよ」
「えっ!?」
桃太郎の家の周りには、たくさんの祝い客やら野次馬やらが取り囲んでいたが、その中に混じって、皆に囲まれるようにして、花江の姿があった。
「花江さん、ちょうど良い時に来たな。お入りなさい」
とお爺さんは外へ声を掛けた。
「おじゃまします」
と花江は玄関に入った。
「そんなところで、何をしている。遠慮せず中へ。さあさあ」
とお爺さんとお婆さんは、腕を引っ張るようにして、花江を部屋に上がらせて、さらに桃太郎のすぐ隣に座らせた。
「失礼します」
花江はしとやかに正座すると、まずは正面のお爺さんとお婆さんに、そして、横の桃太郎にお辞儀した。
桃太郎も一礼を返した。二人の目が合うと、花江は頬をポッと赤く染めて、恥ずかしそうにうつむいてしまった。
(はて?花江さんの様子がいつもと違うようだが。なぜそんなに他人行儀なのだろうか……)
と桃太郎は怪訝な気がした。




