39 砂浜での出迎え
39 砂浜での出迎え
翌朝、浜辺をザクザクと歩く足音がして、桃太郎は目を覚ました。起き上がって、船縁越しに見ると、二人の若者がこちらに近付いていた。彼らは桃太郎と顔見知りの隣村の者たちだった。
(出迎えにきてくれのか)
鬼ヶ島の砦が焼け落ちる火煙を見て、村人たちはもっと様子を探るために、その若者たちを海辺まで出向かせたらしかった。
彼らは船上から顔をのぞかせた桃太郎を見て、
「や、そこにいるのは桃太郎。生きて戻ってきたのか」
と驚きの声を上げた。
「この通り、五体満足で戻ってきた。実は昨日すでに戻っていたのだが、疲れてもいたし、暗くなっていたので、、船の中で一夜を明かしたのだよ」
「そうか」
若者たちは船内に所狭しと積み上げられている荷物を見て、訝し気な表情を浮かべた。
「その品々は?」
「村から奪われた物を、鬼共から取り返して来たのだ。すごい量だろう」
「ほほう」
「もっといい物を見せてやる。これは何だと思う?」
と桃太郎は、帆柱にぶら下っている布袋を指差した。
「それは、中に何が入っているのだ?」
「鬼の首だ」
「ほほう」
と若者たちはまた言った。彼らはあまりの出来事に、驚きを通り越して、茫然としていた。(もしかして、この情景は夢ではないか)とでも疑っているようでもあった。
桃太郎は苦笑して、彼らの目を覚ますように、大きな声で指示を出した。
「とりあえず、我々で運べるだけでも持って帰ろう。残りの荷物は、後から村人たちにここまで来てもらって、手伝ってもらおう」
「よし、そうだな」
三人は全員、いくつかの荷物を肩に担いだ。
桃太郎は、鬼の首の入った布袋をしっかりと腰に結び付けていた。若者たちは不気味そうな視線をチラチラとそこに向けた。
村への道中、桃太郎は二人の若者にせがまれるままに、鬼退治の話をした。特に誇張したわけでもなく、事実をありのままに伝えたのだが、内容が内容だけに、彼らは目を丸くして驚嘆するばかりだった。
彼らだけに限ったことではく、これまで、村々の若者たちは全般に、桃太郎の脱俗的な気質を揶揄する気配が無いではなかった。
事実、今も道を歩きながら、若者の一人が桃太郎に、
「今だから言うが、桃太郎が鬼ヶ島に鬼退治に行くと聞いた時、馬鹿なことをする奴だと思った。どうせ無駄死にするに決まっていると思った」
と正直な心情を吐露した。ひどい言われようではあるが、当人に悪気は無いらしいので、桃太郎は苦笑して受け流した。
しかし、今回の鬼退治の成功によって、彼らの桃太郎を見る目はガラリと変わった。もはやそれは畏敬の眼差しと呼んでよかった。桃太郎本人も、機敏にその変化を感じ取って、面映ゆい気持ちになった。
「なんだ、お前たち。さっきから私を変な目付きで見て。そんなのはよしてくれ。私は元の桃太郎だぞ」
と言って、その若者の背中をどやしつけてやったりした。




