22 村人たちの反応
22 村人たちの反応
桃太郎は、鬼の討伐について、一応は計画らしきものを練ってはいた。しかし、それは計画とも呼べない程に大胆不敵だった。たった一人、小舟で密かに鬼ヶ島に上陸し、例の岩切りの太刀を引っ提げ、一直線に鬼の棲む砦に切り込むという予定だった。
村人の中にも桃太郎に賛同する有志はいるにはいたが、加勢を連れて行っても、逆に足手まといになる可能性の方が高かった。
いずれにせよ、こちらは数では劣るので、桃太郎が単騎、奇襲を掛けて、火の玉のように大暴れして、電光石火の勝利を得ようという算段だった。鬼からすれば、まさか自分たちが攻撃を仕掛けられるとは夢にも思っていないはずだったので、その油断がつけ目だった。
また、討伐計画を大っぴらにできない事情として、鬼共を油断させたままにしておくという狙いの他に、それと同じぐらい重要な理由があった。桃太郎が敗北する可能性は否定できなかった。その場合、鬼共からの報復を避けなければならなかった。討伐が村の総意ではなく、桃太郎の単独行動によるものだという体にしておく必要があったのだった。
もっとも、桃太郎自身は、周囲の人々には、失敗する可能性など、毛ほども感じさせないような明るい様子で振る舞っていたが。
それはそれとして、桃太郎の鬼退治の話は、すでに近隣の村々にまで広まっていた。
桃太郎はお爺さんとお婆さんに、
「鬼退治の話は、どうか内密に」
と頼んではいた。しかし、少なくとも小舟の準備や、食料の調達など、最低限の村人の援助が必要だったので、彼らの口を通じて、噂は駆け巡ったのだった。
村人は表立っての協力はできなかったが、多くの人が桃太郎に支援を申し出た。それも、桃太郎が驚くほどの人数で、遠くの村から、夜陰、闇に紛れて、密かに桃太郎の家を訪れる男たちもいた。
桃太郎は彼らからの加勢の申し出には、
「ご協力の申し出、真にかたじけのう存じます」
と言って、彼らの手を押し抱くように取って、感謝の意を表した。しかし、
「私には私の腹案がございますから……」
と多くを語らず、丁重に断った。
(鬼退治は自分一人で成し遂げられる)
と桃太郎は確信していた。しかし、万が一失敗した場合、村人に迷惑が及ぶのを恐れていた。その時、犠牲になるのは自分一人だけで十分だと思っていた。
もっとも、桃太郎の意気を褒め讃える村人も、どこか空々しい様子があった。彼らは表面上は楽観的でも、内心では、その成否は五分五分だろうと見ていた。むしろ、数としてはそれが大勢を占めていたようだったし、それ以上に、
「鬼退治したいなど、若気の至りというものだ」
とか、あるいは、
「一時の激情で、若い命を粗末にすべきではない」
などという非難の声を露骨に上げる者もいた。
桃太郎の鬼ヶ島行きの日が近付くにつれて、村には緊張が高まると共に、何とはなく、重苦しい雰囲気も漂ってきた。
その中でも、桃太郎は一人、意気揚々としていた。村のあぜ道などで、村人からそのような誹りを受けても、桃太郎は何も反論せず、おだやかな微笑を浮かべるだけだった。




