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小説・桃から生まれた桃太郎  作者: 江戸山乱理
三章 青春の情熱
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13 花江との結婚の計画

13 花江との結婚の計画

 そのようなやや複雑な事情が背景にあったので、木刀の素振りに励む桃太郎を見ているうちに、お婆さんが、

(桃太郎に嫁を持たそう)

 と突然、思い立ったのも、決して突飛な発想ではなかった。

(嫁を持って、子を成せば、桃太郎も才能に任せて危うい橋を渡るようなまねはしないだろう)

 この世に長く生きているお婆さんの知恵はそのように働いた。

 今、桃太郎は十五歳である。その年齢で嫁を貰うのは少し早いようでもあるが、早すぎるというわけではない。また、嫁の候補に困るということもなかった。桃太郎に好意を寄せている娘は、近隣の村にはたくさんいるはずだった。それに、桃太郎を婿に迎えたいという申し出も、内々の話を含めれば、しかるべき富農や名家から多数受けていた。

(さて、嫁取りか、あるいは婿入りか……)

 お婆さんはあれこれ考えていると、頭の中に一人の娘の顔が思い浮かんできた。それは隣村に住む花江という少女だった。

 花江は桃太郎の一つ年下の十四歳で、器量も気立ても良く、また、桃太郎も憎からず思っているようだった。桃太郎自身ではそんな態度など見せていないつもりだったようだが、お婆さんは桃太郎の心情を一目で見抜いていた。

 今から一ヶ月ばかり前、花江が竹籠一杯の自然薯を届けに来てくれたことがあった。それを受け取ったのが、ちょうど庭に出ていた桃太郎だった。二人はしばらく立ち話をしていたが、やがて別れた。桃太郎は家の中に戻って、お婆さんに、

「花江さんから、この自然薯を頂きました」

 と伝えた。お婆さんはその自然薯を受け取りながら、ふと思い立って、

「桃太郎よ、お前は花江さんとは仲が良いのかね?」

 と訊いてみた。その時、桃太郎は特に慌てるでもなく、

「いえ、特にそういうわけでは……」

 とさりげなく答えた。しかし、お婆さんは桃太郎のわずかな動揺を見逃さなかった。お婆さんはさらに、

「別に誰というわけではないが、もうそろそろ身を固めるつもりはないかの?」

 と踏み込んで訊いた。しかし、桃太郎は、

「私はまだ、剣術も学問も修行中の未熟者ですから」

 と言ってはぐらかしてしまった。しかし、お婆さんとしては、その短いやり取りの中で、(どうやら、桃太郎は、花江さんのことを好いているようだ)ということを確認できたのは大きな収穫だった。

 花江は村では中程度の家の長女だった。お婆さんは嫁に特段の家柄や富貴を望まなかったので、結婚相手としては、性格が良ければ、それで十分だった。

(桃太郎の相手は花江さんが良かろう。先方にも文句はないはずじゃ)

 とお婆さんは思った。花江の実家にとっても、この話は願ったり叶ったりの大歓迎であろう。後は、あまり積極的ではない桃太郎をどう説得するかだけだった。

(善は急げというからの。お爺さんとも相談した上で、近日中に、桃太郎の気持ちを問うてみるとしましょうか)

 この場でお婆さんはそこまで考えた。

 桃太郎は、お婆さんがそんなこと企てているとはつゆ知らず、一心不乱に木刀の素振りを続けていた。


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