今様平家物語-キャンセルカルチャーの巻-
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
驕れる者も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者も遂には滅びぬ。
偏に風の前の塵に同じ。
されば今様の世、アカデミアの都・東京に、四つの星が輝けり。
すでに語りし本田由紀、隠岐さや香、呉座勇一、石埼学。
かれらが織りなせし物語は、未だ終わらず。
オープンレターの火は消えず、むしろ新たな風を得て、さらに燃え広がりぬ。
本田由紀は「弱者を踏みにじる政治は許さじ」と叫びし舌先を、今は己の足元に向けられたり。「遺伝的要因のおそろしさ」と皇族を評せし言葉は、ネットの海に波を立て、彼女を囲みし同志たちすらも、静かに距離を置き始めぬ。
かつて「そこをどけ!」と国会前に立ちし女王は、今や自らが「どけ」と囁かるる身となり、炎上の渦中にて「曲解なり」と抗うも、風は止まず。
されど彼女に同調する人々の声は、なおも高らかに響けり。「多くの者は、本田由紀先生というリベラルな女性教授の発言を撤回させるという“ゲーム”に興じたいだけ」と。
これを「認知の歪み」と評する者あれど、見る目ある者はさらに深く嘆く。
「認知の歪みどころの話にあらず。道理を弁えず、因果の関係観も何もかもが狂えるなり。彼女に同調する人々のエコチェンバーは、狭小的なる異世界の観を呈す。最高学府の評価が、その不気味さを一層募らせる」と。
東京大学という煌めく名が、彼女の言葉を「学術の権威」として包み、かえってその異様さを際立たせぬ。象牙の塔の内なる狭い円環は、外の現実を拒み、自らを正義の守護者と信じつつ、因果をねじ曲げ、道理を忘れ、ただ同調の響きのみを増幅す。その響きは、都の外にまで不気味な残響を残し、人々の心に冷ややかな戦慄を走らせる。
隠岐さや香は、知の深淵を探る者として、潮目を測り続けり。
呉座の事件に署名を企図しながら距離を置きし慎重さは、今も彼女を守る鎧なり。
されど鎧もまた、重く、動きを縛るもの。
「自由と正義の狭間」に立ちし彼女の筆は、ますます細く、静かに、しかし鋭く、時代の風を記録す。
エコチェンバーの異世界を傍らに眺めつつ、彼女はただ黙して潮の流れを読む。
呉座勇一は、かつて矢に射られし傷跡を抱えつつ、筆を執り続けり。
訴訟にて和解を得て息を吹き返せしも、アカデミアの庭は彼を完全には迎え入れず。
「キャンセルの刃」を最も深く味わいし者として、彼は語る。
「正義の名のもとに放たれし矢は、放ちし者の手にも返り来るものなり。ましてや、道理を失い、因果を狂わせし矢は、一層深く己を刺す」と。
その言葉は、静かな響きにて、次なる嵐を予告す。
石埼学は「キャンセルの悪循環を断つべし」と声を上げしが、人々の囁きは止まず。「オープンレターの嵐が吹き荒れしとき、汝はどこにありしや?」
過去の沈黙は、現在の正義を冷ややかに映し、皮肉の矢となって彼を刺す。
守れし東大の教授も、やがて別の風にさらされ、石埼の戒めは虚しく響くのみ。
最高学府の名が不気味さを募らせるとき、彼の戒めすらも、異世界の外に届かぬ。
かくて四つの星は、それぞれに輝きを失い、あるいは新たな影を帯びて、アカデミアの夜空に散りゆく。
正義の旗を掲げし者たちも、やがて同じ刃に傷つき、あるいは傷つける。
オープンレターの火は消えず、新たな炎として次の舌先に移り、次の戒めを冷ややかに見つむ。
エコチェンバーの狭き異世界は、ますます閉じ、その内なる狂いは、外なる世に不気味な影を落とす。
盛者必衰。
キャンセルの嵐は、誰を守り、誰を滅ぼすかを問わず、ただ吹きすさぶ。
アカデミアの庭に咲きし花も、風前の灯のごとく。
されば人々よ、驕るなかれ。
言葉の刃は、己をも斬るものなり。
道理を忘れ、因果を狂わせしとき、その刃は一層鋭く、己の喉元に迫る。
火の鳥は蘇らず。ただ灰の中に、次の種が静かに眠るのみ。
諸行無常の鐘は、今もなお、東京の空に響き渡りぬ。
そしてその鐘の音に、狭小なる異世界の住人たちは、なおも耳を塞ぐ。




