71話:溶岩炎竜
熱い! 空気が薄い! 汗が気持ち悪い!
グレミーと会った翌日、俺たちはベルアナ魔帝都から見えていた山に登って来ていた。
活火山だったらしく、溶岩湖の中央からは常にボコボコとマグマが吹き出し、波打ちながら岩壁に当たっている。
もしも、今居る場所から足を滑らせてしまえば、溶岩のプールへとダイブすることになるだろう。
「こんな所に頭が本当にあるのか?」
「うーん。見た感じ無さそうだよね」
俺とアザレアは二人して落ちないように地面に這いつくばり、溶岩湖を眺めていた。
その光景を後ろから眺めている人物が二人。
「アザレア様。お召し物が汚れますので、立っては頂けませんか?」
「陛下! 危ないですのでお下がりを! そんな事はタスクに任せてしまえばいいのです!」
ロザリーとジェラだ。
何故この二人が居るのかと言うと、昨日俺とアザレアが一度ギュレーンに戻った時の事だ。
客間を借りて、ゆっくりベッド休んでいると勢いよく客間の扉が開かれ、ロザリーとジェラが入って来た。
何事かと話を聞いてみると、一緒に連れて行けとの事だった。
最初はアザレアに頼んでいたらしいが、転移スクロールを持っている俺に頼めと言ったらしい。
俺としては火竜と二人で戦うのは心許なかったので許可はしたが、この二人のステータスを俺は知らない。
まあ、あのアザレアの妹と魔帝国騎士団長様だ。
問題はないだろう……多分。
「ねえ、タスク君。火竜ってどういうところに居るの?」
「崖に開けた穴に巣を造ったり、種類によっては溶岩の中に住んでたりします。グレミーの頭が死んでない以上、溶岩の中ってのはないと思いますけど」
「そだね。さすがに溶岩の中だとグレミーの頭も溶けちゃうしね」
「とりあえず噴火口を一周してみましょうか。もしかしたら俺たちの真下に巣穴があるかもしれませんからね」
俺とアザレアは立ち上がり、噴火口を一周するように四人で歩き出す。
半周し終わった所で一度止まり、先ほど這いつくばっていた所の下を見てみると横穴が空いていた。
その横穴の空いた場所は岩壁の丁度中腹辺りで、降りられるような場所はない。
「あそこまでどうやって降りましょうか?」
「ロザリー様。タスクを紐で吊るしてはいかがでしょうか?」
「殺す気か?」
などと話していると、アザレアが口を開く。
「グレミーの所のメイドが被害が増える一方って言ってたけど、どうやったら被害が増えるのかな?」
それは俺も思った。
岩壁の中腹まで降りる手段は紐で吊るす以外に方法はない。
空を飛べる者なら可能だろうが、まずないと考えていいだろう。
自由に飛び回れるほど翼が発達している種族なんて聞いた事もないからな。
そんな状況下でどうやって被害を出したのか。
飛び下りるのは角度的にまず不可能だ。
やはり、紐で人を吊るすしか考えられない。
そして巣内での戦闘の末、被害が出たと――。
『バサッ、バサッ、バサッ、……』
考えていた時期が俺にもあった。
そりゃ、被害も出るわな。
よりによって“コイツ”かよ……。
溶岩の中から一匹の火竜が姿を現した。
翼を大きく羽ばたかせながら飛んでおり、熱気を辺りに舞き散らす。
紅い鱗からは未だに溶岩がポタポタと垂れており、口からは真っ赤な炎が漏れ出している。
その竜はギロリと縦長の瞳孔で俺たちの姿を捉えると、雄叫びの様な咆哮を上げた。
『フィールドボス』、『溶岩炎竜』だ。
『フィールドボス』とはダンジョンボスとは違い、魔素の塊という訳ではなく肉体を持った生きている魔物である。
そして、生きている魔物には総じてレベルや経験値の概念が存在する。
そのレベル上限に達することで特定の進化を遂げることが出来るのだが、レベルや経験値の概念は俺たちと一緒で雑魚をいくら狩っても上がることはない。
故に、フィールド上で進化することは殆どあり得ない。
だが、稀に居る。
それが『フィールドボス』と言われる個体。
溶岩炎竜の進化前は、ただの火竜。
気性はそこまで荒くなく、基本的に巣穴で寝ているだけの穏やかな竜種。
だが、進化してしまうと何故か気性は荒くなり、縄張り意識の強い竜種へと変貌を遂げる。
控えめに言って、最悪だ。
溶岩炎竜は上空まで飛び上がると、翼を畳み滑空してくる。
咄嗟に『チャレンジハウル』を発動したが既に遅く、俺たち四人全員の立っていた場所に物凄い勢いで着地した。
土煙を巻き上げながら溶岩炎竜は俺を睨むと鋭く尖った鉤爪を振り下ろしてくる。
それを『シールドバッシュ』でパリィしながら叫ぶ。
「全員無事か!?」
辺りは土煙で視界は悪く、誰一人返事がない。
ロザリーとジェラはステータスを知らないのでどうなったかわからないが、アザレアはまずい。
IDO時代のままの魔法職なら<VIT>と<RES>的に先ほどの衝撃だけで、下手すれば死んでる。
「アザレア!」
溶岩炎竜の振り下ろしてくる鉤爪を防ぎながら呼ぶ。
大盾を持つ腕がジンジンと痛み、それと共に痺れてくる。
さすがフィールドボスと言うべきか。
何度か防いだところで溶岩炎竜は大きく息を吸い込む。
それを見た俺は、持っていた大盾を溶岩炎竜の足元にぶん投げた。
『シールドアトラクト』発動。
同時に溶岩炎竜は真っ赤に燃え上がる炎を吐き出し、辺り一面を焼く。
吐き出された炎の熱風と共に土煙が晴れると、三人の姿が見えた。
幸いブレスは当たっていなかったが、アザレアとロザリーは吹っ飛ばされ気絶しており、ジェラは顔を真っ青にして座り込み戦意喪失していた。
衝撃と魔素にやられたか。
難易度六等級以上のダンジョンボスが放つ黒い靄、殺気を可視化した魔素はフィールドボスも同じように放ってくる事がある。
何故、魔素の塊ではないフィールドボスが放てるのかと言えば、魔素とは元より空気中にある粒子だ。
それを多く取り込み、体内に蓄積したものがMPであり魔力。
要するに、こいつは漏れ出すほど蓄積された魔力が多いって事だ。
「ジェラ! アザレアとロザリー起こして下がれ!」
大声で叫ぶと視界の端に見えていたジェラが動き出したのがわかった。
よし、来いデカブツ。
お前の相手は俺だよ。
『チャレンジハウル』発動。
何度か爪や尻尾を振り回した後、溶岩炎竜は飛び上がると大きく息を吸い込む。
『グランドプロテクシールド』、『オーバーガード』、『イージス』……発動、今。
タイミングを合わせ、最大防御で迎え撃つ。
口から吐き出された真っ赤な炎は一直線に俺が居る場所を焼いた。
「タスク君!!」
その時、目を覚ましたのかアザレアの叫び声が聞こえた。
ブレスを吐き終えた、溶岩炎竜はアザレアたち三人方を向く。
俺が立っていた地面は焼け焦げ、周りが熱気で真夏の陽炎の様に揺らいでいる。
三人は勿論、溶岩炎竜ですら死んだと思っていた……俺が口を開く。
「おいコラ。トカゲ。どこ向いてんだ? あ?」
溶岩炎竜は勢いよくこちらを振り返る。
その目には明らかに怒りが見える。
知性や知能の無いダンジョン生まれの魔物では見られない表情。
『フォース・オブ・オーバーデス』発動。
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