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インフィニット・ダンジョン・オンライン《Infinite Dungeon Online》  作者: 筋肉式卓一同+α
第二章:《終戦行動編》
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70話:ベルアナ魔帝都

 


 あー、海がきれいだなあ……。


 船が数隻停泊している港を高台から眺めながら、俺は途方に暮れていた。

 俺が今居る場所は、魔帝都ギュレーンから東に数日間馬で進んだ場所に位置しているベルアナ魔帝都。

 フェイの生まれ育った町であり、海底にある『魚交の巣』という難易度七等級ダンジョンが見えている都だ。

 ふざけたダンジョン名の割に、綺麗な景色だからこそ余計記憶に残っている。


「本当に一瞬で来ちゃった。タスク君はすごいんだね」


 ニコニコとしながらアザレアが、隣を歩いている。

 何故アザレアと二人でベルアナ魔帝都に来ているかと言えば、皇帝を説得する手伝いをするためである。

 こんな事になるとは思っていなかった。

 正直、今すぐにでも帰りたい。

 魔人種の住む南大陸の説得は全て目を覚ましたアザレアに丸投げするつもりでいたのだが。

 まあ、これもヘススのためだ。


「それじゃあ、早速お城に行こっか」

「急に押しかけてはご迷惑ではありませんか?」

「うーん、大丈夫なんじゃないかな」


 アザレアは軽い足取りでお城に向かう。

 俺はその後を、重たい足で付いて行く。

 街中を歩いている俺は、相変わらず冷たい視線を向けられている。

 だが、アザレアの事を知っている者も多いのか、敵意の目より奇異の目を向けられる方が多かった。


「どうもー! アザレア・ツー・リレイドアでーす! グレミー居ますか?」


 どう見ても幼女にしか見えないアザレアは、門の前に立っていた門番に片手を挙げながら話しかける。

 眉を顰めた門番がアザレアを見た瞬間、ギョッとした表情に変わり地面に膝を付く。


「ハ、ハッ! アザレア様、今確認を取ってま……あっ」


 はい。

 察したわ。

 もうやだ、帰りたい。


「ん? どうしたの? もしかして、()()なのかな?」

「も、申し訳ございません! 一応、確認を取って参りますので中でお待ちください!」


 門番はアザレアを中へと案内しようとする。


「俺は帰っても宜しいでしょうか?」

「だめだよ。付いて来てくれないと手貸さないからね?」


 アザレアは俺の腕を掴み、引っ張られながら城内へと入った。


 案内されたのは豪華な客間。

 広々とした部屋の中央に立派な絨毯が敷かれ、その上にはガラスのローテーブルが置かれている。

 ローテーブルを挟むようにふかふかの長ソファが設置されており、その片側に俺とアザレアが座る。

 メイドが淹れた紅茶とお菓子を飲食しながら待っていると、数十分後に扉がノックされる。


 扉が開かれ、中に入ってきたのはメイド二人と両腕を組んだ状態の人物? だった。

 俺たちの目の前に座った人物? には顔が無く、首からはユラユラ揺れる青い炎が出ている。


 そう、この人物? こそがベルアナ魔帝都の女皇帝グレミー・ツー・マルグロア。


 魔人種の首無族(デュラハン)だ。


 グレミーが座った所で、後ろに控えたメイドの一人が頭を下げながら口を開く。


「アザレア様とそのお連れの御方、ベルアナまで御足労頂き誠にありがとうございます。本日はグレミー様に代わり、私がお話をお伺いさせていただきます」

「うーん。その前にいいかな?」

「如何なさいましたか?」


 アザレアがグレミーを見ると、頭を上げたメイドの視線も釣られてグレミーへと移る。

 メイドは少し悩んだ素振りを見せると、アザレアに向き直り答える。


()()、持ち去られてしまいました」


 うん、まぁ、知ってた。

 ()()()に話が通じないとは、こういう事だ。

 IDO時代、この女がいつも渡してくるクエストは顔を無くした、もしくは持ち去られたから捜索してくれというものばかりだった。


 どうやったら、ここまで自分の頭をしょっちゅう無くせるのか本当にわからない。

 鎖で繋いどけ。


 しかし、今は頭を無くす以上の問題点がある。

 だからこそ、俺は何が何でも関わりたくなかったのだ。


 IDO時代、クエストを受けるとグレミーの頭のある位置がフィールドマップ上に表示されていた。

 だが、この世界に来てからはフィールドマップどころかMPバーや現在時刻など、視界に表示されていたもの全てが消えている。

 そんな状態で何処にあるかもわからない頭一つを探してくれ、なんて不可能にも程がある。


 頭がない以上、耳がないから話が聞けない。

 よって、説得云々の話では無いのだ。


「誰に持ち去られたの? 場合によっては力になれると思うけど?」


 そう言いながら横目で俺を見てくる。


 ……こいつ。

 ニコニコしているのが余計腹立つ。

 恐らく察しがついていて、もしくは知ってて俺を連れてきやがったな。


「小型の飛竜が持ち去ったとの目撃情報が入っています」

「小型の飛竜? 頭だけを放置していたの?」

「はい。人種との交戦時でしたので、高い所に頭を置いて敵を見渡していたらしいのですが……」


 控えめに言って、馬鹿なんじゃない? 頭を置くって。

 物じゃないんだから。

 

 ベルアナ魔帝都はフェイの故郷だ。

 少しでも力になってやりたい気持ちはある。

 だが、小型の飛竜って事は翼竜(ワイバーン)種だろう。

 持ち去った犯人が翼竜(ワイバーン)種なら十中八九、森の中だ。


「俺からもいいか?」

「何でしょうか?」

「捜索にはどのくらいの人数が動員されているんだ?」

「周知されている事ではありませんので、少数で捜しております。恐らく多くても三十人程度でしょう」

「どのくらい日数経っている?」

「持ち去られてからになりますので、一か月は経っております」


 首無族(デュラハン)ってすげえな。

 一か月、飲み食いしてないって事だろ? それにしてはピンピンしてんな。


 は?


 目の前に座っているグレミーは首から出ている炎の中に紅茶を注いでいた。

 それも、自らの手で器用にティーカップを傾けている。

 

「頭、探す必要ないんじゃないか?」


 俺がグレミーを指さしながら言う。

 すると、メイドは俺を見ながら声を荒げる。


「なんて事を言うんですか! グレミー様の頭が死んでしまうとグレミー様の体も死んでしまうんですよ!?」

 

 それにしては、頭無くした本人が能天気すぎるぞ。

 IDO時代はもっと焦っていたのに。

 もしかして演技だったのか? それなら策士だわ。

 ドジっ子巨乳として一部から人気があったんだがなあ。


「悪かった。それで、一か月捜した成果はあったのか?」

「それが、……の………にある………です」


 俯きながらメイドがボソボソと言う。

 

「ん? 何て?」

「火山の噴火口にあるみたいです」


 へぇー。

 翼竜(ワイバーン)種じゃないかも。

 火山って……火竜じゃね?


「持ち帰れそうなのか?」


 俺の言葉にメイドは首を横に振る。

 

「一週間ほど前から、どうにかして取り返そうと試みてはいるのですが被害が増える一方で……」


 やっぱ、火竜じゃね? 翼竜(ワイバーン)種程度なら下位職でも十数人集まれば狩れるはずだ。

 火竜相手だと俺一人じゃ、まず無理だな。


「ねえ。タスク君!」


 ニコニコ笑顔でアザレアが話しかけてくる。


「僕たちでグレミーの頭を取り返しに行こうよ!」

「俺とアザレア様の二人でですか? ご冗談でしょう?」


 アザレアは俺の耳に吐息が掛かるほど顔を近付けて耳打ちをする。


「グレミーが僕に付いてくれると、他国の説得も楽になるよ?」


 グレミーがアザレアに付けば終戦は早まる。

 何故なら人種の住む東大陸に向かうには、ベルアナ魔帝国の港を使わなければかなり遠い。

 それに、船上で魔物に襲われた場合、船の規模と襲ってきた魔物にもよるが高確率で沈む。

 そのため、魔人種の王達はこのベルアナを経由して大陸外へと出兵するからだ。

 

 アザレアの方を見ると、耳元から顔を離した後にニコッと無邪気に笑う。


 

 でも、相手は火竜だぞ? わかってんのか?



読んで頂き誠にありがとうございますorz


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毎日一話ずつですが更新します!

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