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48 Side.ヘスティア 2



 意識が浮上し、目が覚める…。

 窓から陽の光が室内に差し込んでいる…。

 まだ少し眠いけれど、ベッドから起き上がり、身嗜みを整える…。


──ここ(オリジン)に来てから驚くことばかりです…。


 柔らかな布団に美味しい食事…、温かいお風呂に質のいい化粧品…。

 元の世界よりもずっと贅沢で、充実した生活が出来ていると実感する日々…。


 身嗜みを整え、元の世界では礼拝だった時間は、主様への念話による朝の挨拶に代わった…。


(おはようございます、主様……)


《おはよう…、ヘスティア……》


 思念を飛ばして主様に挨拶をすると、いつも主様から返事が返ってくる…。

 あの頃と違って、今は身近に尊き方を感じることができる…。

 主様との会話による多幸感を、全身を抱きしめて反芻する…。


──あの御方に奉仕することが出来るこの幸福感は、元の世界で聖女だった頃とは比べ物になりません…。


 まず私に与えられたお仕事は、この世界樹内部の生活区域を把握すること…。

 眷属達の生活区域は、今いる階層を含む計十階層分あります。

 世界樹内部だけでもそれだけあるのですが、空中要塞や海底都市の他にもあるため、実際に全部を把握するのはほぼ不可能とのこと…。


 せめて自分が暮らしている階層の何処にどの部屋があるかを把握しておかなければ、これからの仕事も覚束ないそうです…。

 ここ七日程で大体覚えられたと思うけれど、それでも一階層分だけ…。

 元の世界で暮らしてた街と比べても、途方も無く広い…。


──無数に存在する眷属達を全員収容できると考えれば、仕方のないことと言えるのでしょうけど…。


 身嗜みを整えたら食堂へ向かい、朝のご飯を頂きます。

 様々な種類があり、食べたいものを言えばほぼ何でも作ってくれます。

 注文を受けてから作っているそうですが…、元の世界の飲食店と比べても出てくるのが早いです。

 厨房には専用の機械人形(オートマタ)が配置されているらしく、余程変な物でない限りは素早く作ってくれるそうです。


──今日はスクランブルエッグとサラダ、それにトーストにしましょう。


 新鮮な野菜が沢山盛られたサラダに、赤いもの(トマトケチャップ)がかかったスクランブルエッグ、そしてサクサクフワフワのトースト…。

 簡素な食事ではありますが、これだけでもたまらなく美味しいです…!


 ゆっくりと味わうように食べ進める…。

 そうしていると新しく食堂に入ってくる人が…。


「おや? これはヘスティア嬢…、おはよう、早いですね」


「おはようございます、アグニルさん」


 アグニルさんの挨拶に、私も挨拶を返す。


「アグニルさんも今日は珍しく早いじゃないですか」


「今日は早くに目が覚めてしまってな…。 折角だから起きてきたのだ」


 と、身体を軽く伸ばして欠伸をしながら答えてくる。


「蕎麦と緑茶を頼む」


「畏まりました。こちらでございます」


 カウンターへ向かい、機械人形(オートマタ)に注文を告げるアグニルさん。

 すると、待っていたかのように蕎麦と緑茶が出てくる…。


──予め知っていたかのような対応ですね…。


 そのまま受け取ったアグニルさんは、こちらにきて向かいの席へと座る。


「前日から頼んでいたのですか?」


「長く暮らしてると、機械人形(オートマタ)達も個々の眷属達の嗜好を把握して、それぞれ対応してくれるんだ」


──それでですか…。


 つまりアグニルさんが何を頼むのか、あの子(オートマタ)達は予測していたわけですね…。


「ところでヘスティア嬢…」


「ヘスティアでいいですよ…?」


「じゃあヘスティア…、この後予定はあるか?」


「食べ終わったら下の階層を見て回るつもりです。 まだ完全には把握できていないので…」


──成るべく早く把握して、主様のお役に立てるようにならないと…!


「それならば、私も同行しよう」


「よろしいのですか…?」


「我が(しゅ)を信奉する者同士としての誼だ。 私としてもヘスティア嬢には早く慣れてもらいたいからな…」


 薄く微笑みながら蕎麦を啜るアグニルさん…。

 アグニルさんも私と同じく、主様を崇拝しているそうです…。

 力に振り回されるだけだった自分を、人並みにしてくれたのだ…、と。

 そんな方の申し出だからこそ、お言葉に甘えてしまうのでしょう…。


「よろしくお願いしますね…」


「任せろ」




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