99 Side.王国軍の斥候
急いで戻らなくてはならない…!
早くこのことを…、本国に伝えなくては…!
一緒にいた仲間二人ともはぐれてしまった…。
無事だといいが……。
今のところ、敵の気配は離れた位置にしか存在しない…。
このまま距離を保ちながら、砦まで戻らねば…!
急ぎ伝えねば大変な事態に……!!
「……があっ!!」
突如足に激痛が走り、バランスを崩して転倒する…。
一体何が…。
「…こ、これは…!」
影が…、足を貫いて…。
……ま、まさか……!
…!!
「がああぁ!!!」
思考の隙間を狙ったかのように、影が全身を貫く…。
間違いない……、この技は…。
急いで……伝えなけれ…ば……、や…、奴が……来る…!
せめて…、敵が来ていることだけでも……、砦…に…!
「"煙よ、立ち昇れ"」
意識を保ちつつ何とか詠唱し、上空に黒煙を飛ばす…。
これで…、砦に伝わってくれれば……。
…!?
「け、煙が…。」
掻き消された…!
奴がそこまで…!
「ゴボッ!」
ぐっ……の、喉を……。
こ…、ここ…まで…か……。
薄れゆく意識の中…、視界に黒い影が映る…。
奴が…、魔王軍四天王の一人…。
「…影……憑…き……──────」
最後まで言葉を溢す前に…、私の意識は闇に没した…。