第八話 講義(知るもの)
第八話 講義
教授が逃亡したため・・・名前なんて覚える気はありません・・皆が横になれるよう椅子と机を並べ替えます。
まあ一回目の下の世話(嫌な言い方だね)とともに下っ端一に手伝ってもらい簡易ベットを作りました。別に座ったままで講義を受けないといけないわけでは無いことに気付きました、彼女が。
ナナの無詠唱に気付いたのはこの子だけでした。結構この子優秀かも。
その間ナナさんが教授の代理で講義をしていました。プラントのおかげで楽な姿勢で固定されているし、代わりに動いてくれるので特に苦痛は無かったようです。
題目は因数分解と代数。確かに知らなければ難しいですが、ナナさんに教えてもらっていました。村で。その説明が無ければ何を言ってるか解らなかったでしょう。
その一に聞いてみるといつもこの様子で殆どの人が意味が解らず暗記しているようでした。なるほど、こんな数式まで暗記させられていて魔法の呪文までとなるととてもじゃなく憶えきれないでしょう。
講義中、私とナナが意訳してアスカとエミリーに教え、周りの者が感心する中、私語がうるさいと怒鳴られる。
まさかこのおっちゃん私達が何を言っているか理解できてないんじゃあ?
案の定私にこの問題を解けと言ってきた。
面倒だけど解ります。証明問題でいささか時間は掛かりましたがこたえられましたが、教授の理解を超えていたようです。こうでは無くもっとめんどくさくて複雑な方法で証明してきました。問題は証明できてない項目を混ぜて台無しにしているところです。指摘すると訳の分からない数式を提示し、さらに不確定要素を追加します。
なにやらナナさんのツボにはまったらしく、逐一迎撃していき最後には教授の理解が足りていなかったことが露呈して逃げ出してしまいました。
このままでは講義を受けに来た子たちが気の毒なので、軽く講義をしてわかりやすかったと賞賛を浴びた。
ここの子たちはナナたちの外見はそれほど気にしてない様子で、どうやらアスカさん目当てでここに来た人たちもいるようです。
いつの間にかシルビーさんが初見の保健委員を連れて来てシーツの天幕を作ってくれました。ありがとうございます。
しかた無くですが頭を貸してあげてます。しかたなくですよ!
今日は昼までこの部屋の講義を受けます。
どういうわけか貢ぎ物と称していろいろな物を持ってきます。中には自分の体毛や体液を混ぜた物まで持ってきますが全てナナさんが見切って突き返します。こんないじめがあるなんてびっくりです。そう言うとアスカさんはひどくいらだってましたしナナさんは無言でした。何故かエミリ-とその一は引き攣った笑いを浮かべていました。まさかこれも大人になると解るって言う何かですか?
次の教授はなんかまともでした。社会経済の講義で、資産の運用や経済効果その他諸々について誰か前に出て発表しろといわれました。
正面の惚けがお(にへら)はスルーされて皆が顔を背ける中、目が合ってしまいました。
村おこしを目の前で見てきた私はちゃんと自信がありましたのであえて逃げませんでした。
教授の方は私の年齢にちょっと引き気味でしたがとりあえずやってみろと言われ、教壇の方に移動した。
塔の村を例にとり実際の村おこしと現状将来像を交え思いつく限りの話をしました。ある意味私の村のプレゼンです。
最初は半信半疑で聞いていた教授もいつの間にか興奮し将来の展望に至っては何か自分も協力できないかとの支持をいただきました。今度村に見学に行かせてもらうとのお言葉をもらいました。傍聴者の人たちは嘘くさいと感じたのか半信半疑でした。にへらは、にへらと分かっているのやらいないのやら。
教授はそのあと裏で糸を引いていたナナさんとこそこそ話をしていました。これも村のため、これも村のため・・・エミリーさんが止めるまで殺気を込めたものすごい顔でにらんでいました。やはりここに居るとみんな良い見世物です。
しばらく自習状態になりました。にへらこと下っ端一がこそこそとよってきて、
「シンディ-さんて結構お金持ちの村に住んでいたんですね。」
「いえまだ借金だらけですよ。」
「またまたそんな。ところでまえは診療所にいらしたとか、そこでちょっと聞きたいことがありまして・・・」
「何か?」
「『精霊の奇跡と命の価値』という書物に心当たりは無いですか?」
「・・・知らない名前ですね。どんな内容ですか?」
「知り合いの子に聞いたんですが、ユニコン族の賢者が記した精霊様が使ったって言う奇跡のちからを魔法で構成するにはどうすれば良いかという研究の本だそうです。治療系魔法の名手ユニコン族が記したのと実際に載ってる魔法を試した術者がいずれも亡くなってるので禁書扱いになってる本です。」
「そんな危ない本、私が知っているわけないでしょ?!」
「でも魔法はいずれも成功してるんだよ?もしその本があれば研究次第では犠牲もなくせるしどんな奇病やけがだっ、うぐ。」
「それ以上は黙っててね。」口を塞ぎ耳元で囁く。
「貴方がそれを求めるのは止めませんが、自身の命を賭ける人はいくらでも居ます。本来諦められる人まで犠牲になるような術は広めるべきではないのです。なかには知らない人をだまして生け贄とした人も居ました。もともと精霊様が禁じている術なんですから、許可の下りた巫女以外が使用するからそういう作用がでるのです。」
おとなしくなった下っ端一を解放する。あれ、私今何を?
「あなた、精霊真教の信者だったの?」
「へ?何それ、何のこと?」
「あなた精霊の巫女のこと言ってたじゃない。真教では選ばれた巫女が今も精霊様の代理人として世界を守っているって言うのよ。」
「そんなこと言ってた?・・・憶えてないんだけど。」
怪訝な顔で見つめ合う二人。




