幕間 東愛麗の恋事情(1)
一章終わったので幕間でございます。
愛麗ちゃんの深堀り回ですわ。
やばさ可愛さアクセル全開が表現できるように頑張りますわぁ
リリリ……リリリ……。
……バキッ!
「んぎゃっ!?」
朝の静かな部屋に、硬い物がぶつかる音、それと短い悲鳴が響いた。
「いったぁ……愛麗っ!またやったなっ!?」
「あと……ごふん……むにゃ……」
「……愛麗さぁ、毎朝毎朝目覚まし時計叩きつけられるお姉ちゃんの身にもなってくれたりしないか?」
「えへ……もう……たべれな……にへへ……」
「……いい加減……起きろっ! うりゃ!」
全身に強い衝撃が走る。仕方なく目を開けると、じとーっとした目のお姉ちゃんと目が合った。
どうやらベッドから叩き落されたようだ。
去年の暮れに無理を言って買ってもらった可愛い二段ベッド。その二段目から……それも無防備に背中を下にして落ちたようで、流石に背中が痛い。
「んっく……あたしでも流石に痛いよお姉ちゃん……」
「しるか。私の横っ腹に目覚まし時計叩きつけた罪を償え」
腰をさすりながら体を起こす。あまりにも朝が弱いあたしの為に導入された丸くて小さい目覚まし時計は、毎朝のように姉を強襲する凶器と化していた。
軽く体を伸ばしながらお姉ちゃんに向き直る。
「おはよ! おねえちゃん!」
「はいおはよう。頼むから毎朝目覚まし時計を私目掛けて放り投げてくるのやめてくれない? 小さいとはいえ結構痛いのよ、あれ」
「はい……いやもうごめんなさいほんと……」
深々と頭を下げる。といっても、夜は早く寝るようにしているし、時計を手の届かない所に置こう物なら遅刻ギリギリまで眠りこける自信がある。
音量は調整して、こう……ギリギリ起きられるくらい? にしてるし、殴っても壊さないように小さくて頑丈な物を選んだ。
対策はしてるつもりなんだけどなぁ……一応。
ちらりとお姉ちゃんの顔色を窺うと、頭を抱えながら「まぁ前みたいに毎朝叩き壊されるよりはマシか……」とぼやいていた。当然、深いため息もセットだ。
「愛麗も明日から二年生でしょ? せめてもうちょっと大人しく」
「そうだったぁ! 明日! 明日だったね!」
あたしとしたことがすっかり忘れてた!
明日から新学期!
春!
待ちに待った後輩が収穫できる季節だ!
楽しみだなぁ。
どんな子がいるかなぁ。
あたしの好きな子がいるといいなぁ。
お姉ちゃんの物言いたげな視線を華麗に躱し、身支度をする。
髪をきつめのヘアゴムで纏め、パジャマを脱ぎ捨ててお気に入りのランニングウェアに着替える。
「よーし! 今日はちょっと長めに走ろ! 後輩記念日!」
「明日でしょそれ」
「細かいことはいいの!」
部屋に散らばっていた服(勿論あたしが脱ぎ捨てたやつ)をまとめ、洗濯機に放り込む。
ぱしゃと冷水で顔を洗い、歯ブラシを口に突っ込む。
洗面所に、ゴウンゴウンという洗濯機が回る音と、しゃこしゃこというあたしが歯を磨く音だけが響く。
その原始的なリズムに合わせて、体が左右にふよふよと揺れる。
完全に無意識だったが、こうしてなんでもないリズムに乗るのも楽しいかも、と少し思う。
前髪を整え、見栄えを良くする。
化粧もあんまり知らないし、お洒落も分からない。
よく「素材はいいのに」とか「そのツラで着飾らないのは冒涜」とか言われる(殆どひめちゃんだけど)が、あたしはあんまり気にしていない。
鏡のあたしの顔を見つめる。
「よし! 今日も可愛いぜ! あたし!」
ぱちんと頬を叩いて気合を入れ、洗面所を後にする。
食卓に置いてあったパンを齧りながら、ランニングシューズに足を通し、靴紐をきゅっと締めた。
「いってきますっ!」
気だるげな「事故起こすなよー」というお姉ちゃんの声を背に受けて、家を飛び出した。
今日は何か良い事がある気がする。
きゅっと結んだ長い髪が、春風にはためいてはららと揺れた。
明日はこれの続き更新です!
そんで明後日からは二章。
八時半イメージで投稿してたんだけど、ちょっと厳しいから九時に変更しますわ。
仕事終わりに書くのちょっとしんどい……。
ではでは続きもどうぞお楽しみに!




