はじまりのまえ(前編)
プロローグが長かったから半分にしました。
よかったら楽しんでいってくださいな。
春。
一年の始まりだとか出会いだとか、なにかと『何かが始まる可能性』に胸を躍らせる希望に満ちた道化が増える季節だ。もっとも、軽度の季節性アレルギー性鼻炎を患っている僕にとっては花粉に胸を詰まらせる季節でしかないのだが。
今向かっている城峯高校は、所謂『部活動の殿堂』というやつらしく、全国的にみても有数の部活動数を誇るらしい。生徒の自主性を重んじるって理念を掲げてるらしいけれど、僕にとってはただの面倒くさい新生活の始まりにしか思えない。
野球部やサッカー部とかのメジャーどころは勿論、家庭料理研究会に占い部、果てには菓子箱アート研究会なんてのもあるとか……一体何を研究するのか皆目見当もつかないが、まぁ色々あるのだろうと思う。
学校へと続く坂を下りながらぼんやりそんな事を考えていると、いつの間にか校門が見え始めた。校門には、新入生を捕まえて部活動に放り込まんとする先輩方が熱気マシマシで待機しているのが見える。まだ朝も早いというのにご苦労なことだ。
方々から次々と呼び声がかかる。
「き、君も一緒に天体観測しようよ! う、うちなら学校の天文台使い放題だよ!……少しだけ古いけど……」
「家庭料理研究会でーす、ここからちょっと行ったとこで実演してまーす。部長のだし巻きうまいっすよー」
「号外だよー! 新聞部! 新聞部の号外だよー! あ、入部希望さんは放課後に放送室らっしゃいなー!」
頬に押し付けられた新聞を適当にいなしながら昇降口をくぐる。
困った。教室の場所が分からない。一応先週事前のガイダンスはあったらしいが、丁度体調を崩していて参加できなかったのだ。一応概要について纏めた資料は受け取ったのだが、困ったことに僕はざっくりとしか目を通していない。長い文章を読むのは昔から苦手なのだ。
仕方が無いので、壁際の目立たない所で休憩しているらしい金髪の先輩に声をかけることにした。
「あのー」
「ん? あら新入生君どうした? あ! 君もしかしてオカルト興味ある? いやぁウチってばちょっと怪しめだし競合も多いしで人集まんなくてさぁ」
眠そうに目を擦っていたはずなのに、声をかけた瞬間手に持ったプラカードを指さしながら凄い勢いで喋りだした。圧倒されそうだ。
というかどうして今この人は僕が新入生な事を一瞬で見抜いたのだろうか?
「新入生なの一目で分かるんですか? ここってそれなりに生徒多いですよね?」
「あーそっかもしかして知らない? ほらみてここ、学校支給のソックスに赤い線入ってるでしょ? これ学年によって色が違うのよ、今の一年は緑だね」
彼女はズボンの裾を少しめくって足首を見せてくれた。濃い赤色のラインがしっかりと入っている。自分の足元にも目を落としてみると、分かりやすくライトグリーンのラインが入っているのが見えた。なるほどこれはわかりやすい。
「そんで? 我がオカルト研究会に興味ある感じ?」
「いや、すみません道が聞きたいだけで部活とかは特に」
「んえぇ、そりゃ残念」
先輩はあまり残念とも思っていなそうな顔で、んべっと舌を出した。もしかしたら新入生にあしらわれすぎて慣れてきているのかもしれない。
「んんで? どこ行きたい感じ? この頼れる先輩が答えてあげよう」
「教室です」
「あー今ちょーっと分かり難いかもねぇ一年のフロアは。多分人でごった返してるし……あーほら、あっちの団子みたいになってるとこ抜けたとこ階段だから、一番上まで登ってから道なりでいけるよ」
ありがとうございます、と頭を下げて階段を目指す。うちも検討してみてねーと後ろの方で声が聞こえたので振り返ると、先輩がひらひらと手を振りながら見送ってくれていた。軽く手を振り返してその場を去った。
その後人ごみにもまれながら教室につき、座席表に従って窓際の一番奥に座る。周りを見渡すと、教室の各地では手鏡を片手に髪やネクタイを直している生徒がちらほらいた。この後あるらしい服装検査に備えているのだろうと思う。
まぁ特に興味もないので、黙って外に目線を向けた。
ここからはとても綺麗に校庭の桜の木が見える。特に景色を眺めて悦に浸るような趣味があるわけではないが、人の顔ばかり見えるよりかは幾分かマシだと思った。
つまりはこの席がとても気に入っているということだ。
このまま隅の方で静かに過ごしていきたい。が、どうやらそうもいかないらしい。外を眺めている僕の背後から低めで緩い声が投げかけられた。
「へい、そこの話しかけんなオーラバッリバリの君? よかったらインタビュー答えてくれたりしない?」
振り返ると、だぼっとしたカーディガンを羽織った小柄な女子生徒がメモ帳を片手に立っていた。ふわふわとした白色コーデはどことなく小動物……というか小鳥を連想させる。緩やかに左右に揺れる体に合わせてアホ毛がゆらゆらと揺れている。
そんなゆるふわな空気感を纏っている彼女は、その雰囲気に似合わないカチッとした一眼レフを首から下げていた。
永洞と名乗った彼女は、これまた雰囲気に似合わない、どこか探るような仄暗い瞳でまっすぐに僕を見つめていた。
こんにちは!小説家になろう初投稿の暮威もあです!
プロローグ前半いかがでしたでしょうか!って言ってもほとんど何が起きたわけでもありませんが……。
後半は本日中に、その後についてはできるだけ毎日投稿してきたいと思いますので、よければ読んでいってもらえると暮威がとっても喜びます。
長期連載予定でのんびり続けていくつもりなので、どうぞ楽しんでいってください!




