選択肢の増加
「……次はこれだな」
職業神殿で、エクスペリエンスは迷わず選択した。
――盗賊。
戦闘能力は低い。
だが、索敵と回避に優れる職。
「経験だしな」
転職が完了する。
目を開いた瞬間、違和感が走った。
「……軽いな、また」
神官剣士のときと同じ。
いや、それ以上。
身体が“滑る”ように動く。
「とりあえず……行くか」
再び迷宮へ。
「……見える」
入ってすぐ、気づいた。
敵の気配が、やけに分かる。
位置だけじゃない。
距離。
数。
動き。
「こんなに分かるもんか……?」
索敵スキル。
だが、以前とは精度が違う。
まるで、
――“理解している”みたいだ。
物陰からゴブリンが飛び出す。
だが、
「遅い」
身体が自然に動いた。
最小限の動きで回避。
「……当たらない?」
自分でも驚く。
攻撃が、見えている。
いや、
――“分かっている”。
どこから来るか。
どのタイミングか。
どこにいれば当たらないか。
全部。
「これ……」
一歩踏み込み、短剣を振る。
浅い。
だが、それでいい。
距離を取る。
また来る。
避ける。
削る。
繰り返す。
「……倒せるな」
時間はかかる。
だが、危険はない。
「安全すぎるだろ……」
呟きながら、最後の一撃を入れた。
その後も探索を続ける。
「……なんだこれ」
違和感は、戦闘だけじゃなかった。
「ここ、さっきより敵多くないか?」
進むルートによって、敵の密度が変わる。
「いや……違うな」
立ち止まり、考える。
「“集めてる”のか……?」
誘導。
配置。
まるで――
「選ばせてる……?」
どのルートを通るかで、難易度が変わる。
そして、
「パーティ前提の動きだと……詰むな、これ」
気づく。
連携を前提とすると、 逆に隙が生まれる構造。
「ソロの方が楽って……どういう迷宮だよ」
苦笑する。
だが同時に、
「……面白いな」
そう思った。
「攻撃もできる」
剣士の経験。
「回復もできる」
神官剣士の経験。
「索敵と回避もある」
盗賊の経験。
全部、自分の中にある。
「これ……選べるのか」
どう戦うか。
どう進むか。
どう生き残るか。
全部。
「……やばいな」
選択肢が多すぎる。
だが、
「悪くない」
むしろ――
「楽しい」




